08/05/25 20:43:23
>>484
以下、ボリス・グロイス「全体芸術様式スターリン」より。
「社会主義リアリズム絵画は、まず第一に、伝統的リアリズムのように視覚効果や「自然の美」を
伝達することを目標としていたわけではなかった。社会主義リアリズム絵画のなかには、
そこに描かれた人物たちの声が耳に聞こえないかたちで響いているかのようであり、
彼らの運命をそこに読みとることができ、なにが善でありなにが悪であるか等は示されているのだ。
(中略)
だから社会主義リアリズム絵画というものは現実をなんらかのかたちで「反映」したものというよりもむしろ、
象形文字のテクスト、解読されるイコン、規約条項に近い。
(中略)
その結果、リアリズム芸術の伝統的な基準からみれば、社会主義リアリズム絵画は必然的に
「質の低い」「悪い」絵画ということになるのだが、目の肥えた者からみればその内容の豊かさは
日本の能に劣るものではなく、スターリン時代の鑑賞者にとっては
─この絵画の意味内容を不適切に暗号化したり解読したりしようものなら、
それが時として死につながった以上は─
真に美的な、恐怖の体験をはらむものだったのである。」