08/03/04 01:01:02 N4paOxbB0
さりげなく投下。
ミニミステリだったかで読んだ話。タイトル失念。
主人公は仕事の都合で異国を訪れた紳士。
言葉も通じない事に辟易としながらも何とか責務を果たし、後は帰国を待つのみだ
った。
それまでは緊張感で目にも入らなかった異国の地を、折角だからと観光気分でブラ
リと散策してみた。
仕事が上手く運んだのに気が緩み、警戒心が薄れていたのだろう。彼は手にしてい
たバッグをひったくられてしまう。
バッグの中には全財産は勿論、帰国用の旅券や身分証明書、パスポートも入ってい
た。
警察に駆け込もうにも言葉が解らない。どう訴えれば良いのか。
電話だ! 電話さえかける事が出来れば本国の家族や友人、会社に事情を話して送
金して貰える!
しかし文無しの彼にはそれすら叶わない。
「すみませんが小銭を貸して下さい」その一言すら解らない。
すでにチェックアウトしてしまったホテルは会社が用意したものだったから、滞在
中には会話も必要なかった。
今戻ったところで自分には何も出来ないだろう。
ひょっとしたら小銭でも落ちていないだろうか。目を皿の様にして街中を放浪した
が、それはただ徒労に終わった。
夜の帳が下り、人通りもなくなった通りをうなだれながら歩む。
こうなったら誰かに全力で訴えるしかない、そう思った。
困っているという事実を全身全霊で、身振り手振りで訴えればきっと分かって貰え
る筈だ。
国は違えど、同じ文化人同士なのだから。