07/06/18 21:04:03 439I/Yti0
―自分が何をしたいのか迷う若者の「自分探し」ブームに違和感をお持ちですね。
「若い人達の自分探しはいつどこにでもあったでしょうが、今の日本では社会現象になっている。
そもそも、自分はよく分からないというのが人生の基本なのに、探せば石ころみたいに見つかる
んですか。自分がモノのようにどこかにあると考えるのは極めて幼稚で、知的に鍛錬されていな
いにおいがします」
―「自分とは何か」を若者が考えるのは当然では。
「もちろん自分探しがゼロの人は困る。しかし、何でも自分自分自分、自分探しを人生のメーン
テーマにしてしまっていいのか。残念ながら世の中はあなたのためにあるわけではない。まず職
探しをして、飯を食えるようになってからじっくり取り組めばいい。人間は社会的存在である、と
いうことから逃れられません。社会と自分のかかわり合いをつくるのが人生にとって最大の
テーマのはずです」
―どうしてこうした傾向が出てきたのでしょう。
「自分探しをしていれば生きていけるというのはぜいたくです。豊かさの結果でしょう。我々が若
かったころの、ニンジンをぶら下げられて働くというメカニズムはもう効かず、ニンジンは嫌だと
いった話になる。世の中には動かし難い現実があるんだという学習も不足しています」
―好ましい自分探しの姿をどう考えますか。
「社会との間でらせんを描いていくような感じでしょうか。社会との出入りを何度も繰り返しながら
自分のストックを増やし、社会との関係を組み替えていく。社会のネットワークに入らずに、気に
入らない、幸せになりたい、というのは違います」「必要なのは自分を突き放すこと、露骨に言え
ば自分の価格、評価をよく見ることです。自分を相対化する道具として職業をとらえる。その上で
自分探しより自分生かしを考えるべきでしょう」 (>>2-5に続く)
※佐々木毅氏は現在は学習院大学教授です。
日経新聞07.06.18朝刊5面『インタビュー・領空侵犯』より
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