07/11/01 22:50:29 It2LckR/
「ハハッ!馬鹿かオメェ、こいつのどこが異音も無くて快調なんだよ!ガラクタ掴まされたんだよ!」
「オイ!俺ぁUCCだって言っただろう。もう一回買いなおして来い!この馬鹿!」
無表情になっていく僕と反比例するように、アナゴ君は良く笑うようになった。
夜の保土ヶ谷で、年端も行かない免許取立てのような数人の少年たちの輪の中心にアナゴ君は居て、
いつもご機嫌で彼らと話をしていた。
少年たちは不良とも暴走族とも見えなかったが、ほとんどそれらと紙一重のようにも見えた。彼らは
憧れの1100カタナで誰にも負けない速さで第三京浜を駆け抜ける大学生の兄貴の噂を人づてで
聞きつけて集まってきたようだった。
そこでアナゴ君は少年達をからかったり、時に缶コーヒーを買いに行かせたりしてほとんどの場合、
良く笑っていた。
少なくとも僕は気がついていた。
周囲のみんながどう思っていたのかは解らないが、あのアナゴ君の笑いは嘘の香りがした。
ここではあんなに笑っているのに、クルマを蹴飛ばしたりケンカをしたりするのも、僕以上に多かったのも
知っている。
感情と表情を失っていく僕と、不自然な笑顔と饒舌さを兼ね備えていくアナゴ君。
その正反対にも見える変化は、根っこではほとんど種類を同じくした変化であるに違いなかった。