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マレンコフが所長を勤めていた火力発電所のあるエキバストスという地名に
なぜか覚えがあるので調べてみたところ、ソルジェニーツィンが1950年から
1953年までぶちこまれていた政治犯特別収容所の所在地だった。
私たちは後方を見て、黙って、自分たちがいま運ばれようとしている、
ロシア語でない難かしい名前の収容所のことを考えていた。それは
エキバストゥーズという名前だった。私たちはそれをストルイピン車輌の
上段から、私たちの調書に逆さまに書いているのをのぞき見したのだった。
それが地図のどの辺にあるかは誰も想像がつかなかった。ただ、中佐の
オレーグ・イワーノフだけが、それは石炭の産地であることを知っていた。
それが中国との国境から近いところにあると考えた人もいた(そして、
中国はわが国よりはるかにひどい国であることをまだ納得していない
一部の人々は喜んでいた)。
(「収容所群島」5巻 新潮文庫 木村浩訳)