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特定秘密保護法に基づく「特定秘密」が記された公文書が、秘密指定期間中であっても廃棄される-。
現在の法体系の下で、こんな事態が起きる可能性があることが、衆院の情報監視審査会が先月末に
公表した年次報告書で分かった。
時の政権が意図的に重要情報を非開示のまま廃棄することも可能。
非開示のまま廃棄されると、将来の検証ができなくなる。
秘密保護法は、漏れたら日本の安全保障に著しい支障を与える情報を、期間を定めて秘匿することを
定める。秘密指定期間は五年単位で延長でき、永久に指定することも事実上可能だ。
一方、特定秘密が記された文書の保存・廃棄については、基本的に同法ではなく公文書管理法という
別の法律で運用される。
各省庁は同法に基づき、文書の種類別に保存期間を一年未満~三十年を基準に設定。
期間が終われば廃棄や延長などを決める仕組み。
秘密保護法の下では、秘密指定が通算三十年を超えた特定秘密が書かれた文書は、こうした公文書
管理法上の保存期間終了後も、保存が義務づけられる。
問題は、秘密指定が三十年以下の文書。
内閣情報調査室の担当者は
「秘密指定期間より、公文書管理法で定めた文書の保存期間が短い場合、保存期間が終了すれば、
首相との協議と独立公文書管理監の検証を経て、廃棄できる」
と説明。
例えば秘密指定が通算三十年で保存期間が二十年の文書の場合、秘密指定されたまま二十年で廃棄
される可能性が出てくる。
審査会の報告書によると、海上保安庁が指定した特定秘密を含む文書約一万一千件(二〇一五年末
時点)の大半が、保存期間が秘密指定期間より短かった。
廃棄された例はなく、同庁は「可能な限り期間を一致させるよう検討する」としているが、法律上は、
保存期間が過ぎた特定秘密文書はすべて廃棄できてしまう。
報告書は「外部のチェックがないと、不適切な廃棄が行われる可能性がある」と警告。
公文書制度に詳しい長野県短大の瀬畑源(せばたはじめ)助教は
「大きな問題。
特定秘密が書かれた公文書の重要性は明白で、歴史の検証ができるよう保存することがあるべき姿だ」
と話す。
◆検証の機会奪われる
衆院情報監視審査会の報告書で明らかになった、特定秘密保護法を巡る公文書管理の「抜け穴」。
政府がこれを悪用した場合、不都合な情報を、どんな情報なのかも国民に知られないままいくらでも
葬り去ることができるため、極めて重大な問題だ。
特定秘密保護法は、国民の「知る権利」を脅かす法律として世論の大きな反対の中で成立した。
当時、特定秘密の指定期間に例外が七項目あることから「永久に指定される」という懸念が伝えられた。
判明した抜け穴は、永久指定どころか、特定秘密が書かれた文書そのものを開示せずに捨てられると
いうもの。
政府の政策判断に過ちがなかったか、国民が検証する機会は永遠に奪われてしまう。
まして、特定秘密は防衛や外交など、平和を左右する情報が中心。
国民が政府の情報を正確に把握し、国の針路を自ら選択していくという民主主義の根幹が崩壊しかね
ない。
URLリンク(www.tokyo-np.co.jp)