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「ヘイト対策法の趣旨」踏まえ男起訴 地検が異例の明言
張守男、鈴木峻
2016年7月23日12時32分
在日コリアンを中傷する内容のビラを貼るために商業施設に侵入したとして、福岡地検は22日、福岡市南区の無職越智和年容疑者(64)を建造物侵入罪で起訴し、発表した。地検は「(6月施行の)ヘイトスピーチ対策法の趣旨にも照らした」としている。
同法は国や自治体にヘイトスピーチをなくす責務があることなどを定めたが、罰則はない。起訴に際し、同法の理念を踏まえたと検察が明言するのは異例。
起訴状などによると、越智容疑者は6月29~30日、正当な理由がないのに、福岡市中央区の商業施設「福岡パルコ」などのトイレ6カ所に侵入したとされる。6月30日に建造物侵入容疑で現行犯逮捕されていた。
捜査関係者によると、トイレには「在日コリアンの社会迷惑」「日本人を差別・排除するコリアン企業」などと書いたビラが貼られ、越智容疑者は逮捕後の調べに「用を足すついでにビラを貼っただけで、容疑には納得がいかない」と供述したという。
地検の長谷透・次席検事は「ヘイトスピーチ対策法ができた社会情勢などに照らして犯情が悪質と判断した」と述べた。
立教大の砂川浩慶教授(メディア論)は「検察が対策法の趣旨に照らしたと自ら表明したことは評価したい。定義は十分か、罰則を設けるべきかといった議論が進むことになる」と指摘。
一方で、「恣意(しい)的な運用がされないよう、メディアが監視していく必要がある」としている。(張守男、鈴木峻)