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昨年、国会前デモを社会現象に発展させたSEALDs(シールズ・自由と民主主義のための学生緊急行動)が、大きな話題を呼んだ。しかし、今、それに対抗するように「安倍政権賛成」を謳う大学生集団が現れた。その正体にジャーナリストの鈴木エイトが迫った。
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参院選公示日の6月22日午後、JR郡山駅前(福島県郡山市)で街頭演説を行った安倍晋三首相の声に、もっとも力がこもったのは共産党に話題が及んだときだった。
「共産党は日米同盟廃止ですよ。自衛隊を憲法違反だとはっきり言っているじゃないですか! いったいどうやって日本を守っていくんですか!」
その前日午後6時─。東京・高田馬場駅前には、ラッパー風のSEALDsとは雰囲気が違う、就活学生のようなリクルートスーツに身を包み街頭演説を行う大学生集団が現れた。
「安倍政権を支えよう!」「日本共産党にだまされるな」「憲法改正賛成!」「安保関連法制賛成!」と声高に叫ぶ若者たち。
スマホ片手に熱弁を振るうスタイルこそ今どきの若者だが、その主張内容はSEALDsとは真逆。この謎めいた大学生集団はこの日、全国26カ所で同様の街宣活動を行ったという。彼らは何者なのか。その名は「UNITE(ユナイト)」─。
4人の東大生によって今年1月に結成された。
UNITEは瞬く間に全国各地へ派生し、5月末には東京・渋谷で首都圏の学生230人を動員しデモ行進を行うまでにその規模は膨らんだ。
プラカードを掲げ、「安倍政権を支えよう!」と叫ぶデモ隊の様子は、テレビ東京のニュースで「改憲支持 大学生が渋谷でデモ」と報じられた。
この報道を受けて、自民党IT戦略特命委員長の平井卓也衆院議員がフェイスブックに6月1日、「このようなデモはあまり報道されませんが、学生はシールズというイメージは間違いです」と書き込んだ。
精力的に街宣活動を展開するUNITEは6月12日にも全国21カ所の都市で一斉演説を行うなど、安倍政権を支持する大学生たちの街頭活動が一大ムーブメントとなっているようにも見える。
しかしながら、このUNITEを追うと、陰で支援している、とある団体の存在が浮かび上がってきた。演説する学生らがかけているタスキ、掲げる横断幕には「国際勝共連合」という文字が見える。
「国際勝共連合」といえば、1968年に旧統一教会(昨年8月、「世界平和統一家庭連合」に改称)の文鮮明教祖(2012年死去)が設立した反共産主義を掲げる右翼系政治組織だ。
UNITEの街宣演説では国際勝共連合のスタッフやトップガンと呼ばれるエリート研修を受けた旧統一教会の地区教会幹部らが同行していた。
現場を仕切る姿を記者は何度も目撃している。
UNITEに参加している学生について調べてみると、合同結婚式などでマッチングされた旧統一教会信者の両親から生まれた2世信者が多いこともわかった。
遊説を行っていたUNITEメンバーに「UNITEは全員統一教会の2世?」と聞いたところ、女性メンバーは「全員じゃないけど、ほとんどがそうです」と回答している。
さらにUNITEの結成メンバー2人を含む男性5人にも確認すると、全員が同教団の2世と認めた。
選挙権の年齢が18歳以上に引き下げられることを意識してか、UNITEは現職の議員を招き、高校生50人と「“若者の政治”を考える救国塾」なるイベントを6月18日、都内で開催した。関係者によると、参加した高校生の中にも2世信者が複数いたという。
あまり知られていないが、国際勝共連合は今、注目されている日本会議に負けず劣らず、安倍政権を熱心に支援している団体だ。
国際勝共連合の設立に際しては、安倍首相の祖父・岸信介元首相が支援したことも周知の事実だ。
国際勝共連合はこれまで一貫して「自主憲法制定」「新憲法に家族条項」「夫婦別姓反対」「安保法制への賛成」などを主張し、安倍政権と思想的に極めて近い関係にある。
国政選挙では、旧統一教会、国際勝共連合などが自民党議員に対し、秘書の提供、運動員の派遣など選挙協力をしてきたとされる。
本誌で既報したが、衆院選の2カ月前の14年10月には都内で開かれた旧日本統一教会・徳野英治会長の特別講演で、安倍首相の懐刀の萩生田光一官房副長官、中川雅治参院議員らが来賓として挨拶。
旧統一教会が同年9月に開催したイベントに祝電を打った自民党大物議員はこう話していた。
「統一教会は支援をいただいている団体。統一教会というより、勝共連合の人たちという認識。お付き合いは古い。安倍政権を支持していただいています」