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「一億総中流」という意識は、どこへ消え去ってしまったのか―。
「低所得層」「経済格差」「教育格差」といった言葉が喧伝されるようになって久しい。
それはフレーズ先行の印象論ではなく、実態を裏付けるさまざまなデータからも明らかになっている。
4月22日、東京都足立区は、区立小学校(全69校)の1年生5355人の保護者を対象に行なった
『子どもの健康・生活実態調査』の結果を公表(有効回答4291人)。これは無記名のアンケート形式で、
区が学校を通じて配布・回収し、国立成育資料研究センターが集計・分析したものだ。
その狙いは、子どもの健康と家庭の経済環境・生活習慣との関連を解明するというもの。17項目の質問は、
朝食や読書習慣、虫歯の有無、さらには公共料金の支払い状況にまで踏み込んだ。
また、分析に際しては、「①世帯年収300万円未満」「②子どもの生活に必要な物品や5万円以上の貯金がない」
「③経済的理由でライフラインの支払いができない経験がある」の3点のいずれかに該当する層を「生活困難」世帯と
定義し、他の世帯との比較を行なっている。
胸中でドキッとされた方も少なくないのではなかろうか。諸般の事情から貯蓄はゼロ、水道・光熱費や通信料の
支払いは督促状持参でコンビニ決済になることも多いという家庭は、いまや珍しくはないだろうから……。
事実、調査結果では「生活困難」が1047世帯を数えた。
「生活困難世帯」の子の虫歯は2倍も多い
そして、アンケートの結果、驚くべき結果が明らかになった―。
「生活困難世帯」の児童は、「虫歯5本以上」が19.7%(その他の世帯10.1%)、「麻疹・風疹の予防接種を受けなかった」のは
13.4%(同7.4%)、「朝食を毎日食べる習慣がない」のは11.4%(同3.5%)など、多くの項目で芳しくない数値になった。
つまり、「生活困難世帯」と「その他の世帯」では、虫歯や予防接種で約2倍、朝食の習慣では約3倍、明らかな「格差」が
浮き彫りになったのだ。
奇しくも足立区の公表に先立つ14日、国連児童基金(ユニセフ)は『子どもたちのための公平性:先進諸国における
子どもたちの幸福度の格差に関する順位表』という報告書を発表した。
この国際通信簿は、EU(欧州連合)ないしはOECD(経済協力開発機構)加盟の41カ国を比較対象したもの。
所得分布で下から10%に属する世帯層(底辺)の子どもたちが、標準的(中央値)な子どもたちからどれくらい
取り残されているのか? その「底辺の格差」を小さい順から順位づけている。
その結果、日本は先進41カ国中34位。「格差の小さい順」で下から8番目……。日本が分析・国際比較されるのは
今回が初めてのことらしいが、その「格差の大きさ」には、正直、驚愕を禁じえない。
首位のノルウェーなど上位に並ぶ北欧諸国の場合、底辺層の所得が標準的世帯(中央値)の6割前後はある。
一方、日本の世帯間比較では、標準所得の4割にも満たない「経済格差」が読み取れたのだ。