10/04/17 13:50:37 6kXs6AuFO
本当はもっと頑張れるはずだった。
慣れない環境も、重すぎる期待も、全部跳ね返せるだけの素質がお前にはあるんだよ、とあのコーチは言ってくれた。
(……五輪にでたかっただけなんだ)
キスクラでいつも誉めてくれるコーチの笑顔が思い出された。
ウザイくらいにはしゃいで、点数が聞こえなくてしーってしちゃったこともあった。
ぬいぐるみを落としたことに気付かないで忘れちゃったこともあった。
(あのとき、ユーロの失敗さえ無ければ)
ぐるぐると後悔がヴォロ狼の内側を侵食した。
起き上がりたくない、なにも考えたくない。
サンクトペテルブルクの空にも結局馴染めないままだ。
だが、KVDPの暖かく大きな手の感触が、その溜まった暗いものを溶かしてくれるようだった。
「くうぅぅぅん…」
寂しげな鳴き声がバスルームに響く。
(まだ…やめたくないよ…)