10/04/16 20:42:18 kl4oleLY0
深夜。ADSLは一人、手洗い場の鏡の前に立っていた。
「変身」のコツをより深く掴むために…というよりは、もはや好奇心の方が強かった。
「大体トマシュさんの言い方分かりにくいんだよ…ああとかこうとか…もっと具体的に…」
と、目を瞑って開けた瞬間。
「あ」
数秒、時が止まった。男子トイレに女性がいる!…じゃなくて、自分が女性の姿をしているのだ。
それも、キーラそっくりの姿に。ADSLの言葉を借りて言えば、ADSLはキーラに「なった」のだ。
「…やっちまった」
体が震えたが、それはついになすべきことを成し遂げたから、というわけではなく、
何か自分がいけないことをしてしまったような気がしたからだった。
しかしADSLはもはや自分を止められなかった。それじゃあ人種も、と思った矢先に、
彼は高橋大輔に「なって」いた。
―先述の誓いのことは忘れてしまっているADSLだが、
先輩に見つかったら叱られるどころではすまないことは分かっていた。
(トマシュさんにだけ見せたら、すぐやめよう。
多分ウイルスの変身の延長線上のことだ、誰かに言わなくたって大したことない)
そう思いながらもADSLの顔からは冷たい汗が流れ続け、
その心臓は奇妙なリズムで鼓動を打ち続けていた…