青嶋ひろのat SKATE
青嶋ひろの - 暇つぶし2ch500:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/03/28 16:54:15 I40zjJv/0
■「完成されたスケーター」になるために

しかし、表彰式での浅田の表情は、それほど晴れやかなものではなかった。
 自身では納得のいく演技ができても、トリプルアクセルを2度認定されず、得点にはつながらなかったこと。
さらにはミスの少なくなかったキム・ヨナに、「ノーミス」の演技をしてもフリーで勝てなかったこと。
優勝することはできたが、やはり五輪で直面した問題が解決していないことは、浅田もよく分かっている。そんな表情だった。
「来シーズンは、まだまだジャンプの種類をたくさん増やせると思うし、まだまだやらなきゃいけないエレメンツもたくさんあると思います。
そのために、技術面をしっかり見てくれる先生につくことも考えています」
 おそらく大技へのトライだけでなく、ひとつひとつの技の精度を高めていく、その対策を来シーズンはしっかり練ってくるだろう。
 だが、果たして浅田は、それだけでいいのだろうか?

 浅田はフィギュアスケーターとして必要な資質のすべてを持っている選手だ。
しかし今シーズンはトリプルアクセルを作戦の中心に置き、超人的な努力を重ね、五輪では3度成功。
キム・ヨナがいなければトリプルアクセルですべてをねじ伏せる形で五輪チャンピオンになっていただろう。
 しかしやはり今の浅田のスケートには、フィギュアスケートとしてまだ足りないものがある。
ジャンプもそのほかのエレメンツも「技術」としては完ぺきに近いが、「氷の上で自分を表現する、何かを表現する」というフィギュアスケートのもうひとつの大切な部分が、まだ少し足りない。
いや足りないのではなく、それができる力を持っているのに、必要であることに気づいていないのだ。
 浅田真央は素晴らしいスケーターだ。しかし「完成されたスケーター」ではない。
すべての資質を持つ彼女が、フィギュアスケートに対する「意識」を目覚めさせ、本当の魅力に開花するとき、いったいどんなスケートを見せてくれるのか―考えただけでわくわくする。
■「ノーミス」「パーフェクト」以外の目標を

今シーズンは五輪でトリプルアクセルを3回成功させたにもかかわらず、勝てなかった。
また世界選手権でも優勝はしたが、フリーでは2位に終わった。
彼女が完全な勝利を手にしなかったのは、「君の本当の力はこんなものではない」「トリプルアクセルばかりにこだわる真央でいてほしくない」、そんなメッセージがスケートの神様から送られているような気もする。
 技術は完ぺきに近く、滑りにもスピードがあり、音楽もよくとらえている。
しかし上位の女子選手たちすべてが抱いている「素敵なスケートをしたい、自分を素敵に見せたい!」という思い。人前で何かを見せる者が持つ、ごく自然な思い。
浅田に必要なのは、そんな気持ちを自然に抱くこと、そんなごく簡単なことだけのような気がする。

 しかしともかく今回の優勝は、素晴らしかった。
これほど難しい状況で、これだけすべてのジャンプを跳んでしまう彼女を見て、昨年のロシア杯で見た、エフゲニー・プルシェンコ(ロシア)の復活を思い出しもした。
スポーツとしてひたすら圧倒されたし、ミスのないエレメンツはプログラムの流れを途切れさせず、「滑り」がひとつの世界観を生む、そんな種類のプログラムだった。
想像を絶する疲労の中で自身の肉体と精神を立ち上げてくる強さ―シーズン最後の試合でこれだけのものが見せられたことは、やはりひとつの達成であったと思う。ここからがまた、新しい浅田真央のスタートなのだろう。

 だからこれから、ほんの少し、見る人と向き合う気持ちを持つことができれば。
ほんの少し、自分に足りないものに気づくことができれば。それだけで、来シーズンは完ぺきなスケーターが誕生するはずだ。
「ショートとフリー、両方をパーフェクトに滑ること。それを五輪でも世界選手権でも目標にして練習してきました」
 世界選手権期間中だけでも、何度繰り返して言ったか知れないこの言葉。
来シーズン、浅田からは「ノーミス」「パーフェクト」以外の目標を聞ければいいな、と思う。フィギュアスケーターとして大事な何かに気づくこと、それを目標として語れるようになること―そこからすべては、始まるはずだ。

<了>


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