もし勇者シリーズがC.E.or00世界に来たら4at SHAR
もし勇者シリーズがC.E.or00世界に来たら4 - 暇つぶし2ch2:通常の名無しさんの3倍
09/07/09 14:30:28
三十路過ぎて同人誌買ってる奴ってどれぐらいいる?


3:まことに勝手ながらテンプレもどき作ってみました
09/07/09 14:44:51
スレ立てしたはいいけど、前スレに告知できないorz
重複した場合、揉めたりするのも迷惑なので、こちらのスレを削除して結構です。
ただし、誘導だけはしておいてください。
とりあえず今はageときました。
こちらは、勝手ながら>>1に書かなかった内容。

Q,他のガンダム作品とのクロスは大丈夫?
A,一応大丈夫だそうですが・・・前例がないので執筆の際にはこのスレの住人にご相談ください。

Q,この作品嫌い!!
A,作品に対する「批判」は結構ですが、作品そのものを「否定」するなら読まないでください。荒れます。
また、批判も作者や他の読者が傷ついたり、怒るような書き方は絶対に止めてください。荒れます

勇者達の活躍を描いてくれる作者には敬意と感謝を持って接してください。
このスレの一住人として、何より一読者として切実なる願いです。

あと、>>1の小話 ◆9NrLsQ6LEU氏の“氏”の敬称を付け忘れてしまいました。
ご無礼お許しください。


4:通常の名無しさんの3倍
09/07/09 14:55:19
     、z=ニ三三ニヽ、
    ,,{{彡ニ三ニ三ニミヽ..
   }仆ソ'`´''ーー'''""`ヾミi
 . lミ{   ニ == 二   lミ|     衆院選の目玉は、東国原知事の出馬だ!
  {ミ| , =、、 ,.=-、 ljハ
  .{t!./・\ ./・\ !3l.    民主党終わったな!
   `!、 ⌒ イ_ _ヘ⌒ .l‐
    Y { トェェェァ` j ハ─
  .ノ~)へ、`ニニ´ .イ /ヽ  ビシッ!
  へ'ン  `ー‐´‐rく  |ヽ
〈 ヽ \〉、_\_ト、」ヽ!  東国原氏、古賀氏と午後会談=衆院選出馬めぐり協議へ(7/7)
〈 \ \ノ つ | \ | \| URLリンク(headlines.yahoo.co.jp)



5:一尉
09/07/09 18:21:00
そうえば、海自衛隊にもあったよ。

6:通常の名無しさんの3倍
09/07/10 15:07:13
>>1乙

7:一尉
09/07/10 19:42:16
支援

8:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/10 19:55:17
 勇者王ガオガイガー DESTINY
第11話 『世界の闇』 
ディオキアに滞在中のプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルの下へやって来た獅子王凱は話したいことがあると面会を申し込んだ。
議長の部屋へと迎え入れられ、凱は自分の仲間と連絡がついた事、仲間と合流する事、最後に木星に人類に敵対する存在があり、今はまだ活動を開始していないが間違いなく近く動き出して地球へと向かってくるだろう事を知らせた。
「それは本当の事なのだね」
いささか懐疑的に聞きなおすデュランダルに対して、凱は真剣な面持ちのままで肯定の言葉を返す。
「本当です、地球は嘗て無い危機に陥るでしょう」
それまでに人類が一丸となって対抗するように出来ないかということを付け足す凱。
デュランダルは凱の言葉は疑ってはいない。なぜなら彼の気性は短い付き合いだが良く解っているし、第一に自分に嘘を吐く理由も思いつかない。
しかも彼にとってザフトに在籍していた大きな理由である、仲間の安否が確認されたにも関わらずに情報を持ってきてくれたのだ、信頼には応えたい。
「しかし、現在の状況では難しい。君も解ると思うが戦争は始めるよりも終わらせるほうがずっと難しいのだ」
もし共通の目に見える敵がいれば可能だろうが現在はただの話に過ぎず、この話をもって連合と交渉しても終戦どころか停戦にも応じないだろう。
むろん、自分としては最大限協力する。SDDSを始めとした各機関や友好国に連絡を取りできる限りの協力体制を作るように働きかけると約束してから凱に尋ねる。
「君はこれから如何するかね、仲間が見つかったのだから直ぐにザフトを離れても構わんよ」
むろんガオガイガーも返却すると続けるが、それを聞いた凱は少し考え込んだ後で答えを出した。
「よければもう少しミネルバに置いて欲しい」
ミネルバと行動を共にすれば再びJに会える気がする。今度こそあの尖がり頭を打ん殴って元に戻してやる。そう決意する凱であった。

ダーダネルスで少なからず損傷を負ったミネルバはポートタルキウスの港に停泊し、修理と補給を行なっていた。
先の戦闘で亡くなったミネルバのクルーがボディバッグに収められて収容されていく、連合との戦いで犠牲になった人間よりもタンホイザーの誘爆に巻き込まれた人間の方が多いのが皮肉である。
個人の遺品を載せた車が走り去るのを見送って、アスラン・ザラは艦長室へと向かった。
艦長室でタリア・グラディスと向き合ったアスランは、艦長も知っての通り自分とアークエンジェルはヤキン攻防戦で共に戦った仲であり、恐らく今乗っているのも当時の仲間であると思う。
ならば彼らの真意を取り正さればならない、ついてはその為に一時的に艦を降りたいと申し出る。
「この事態が理解できない、というより納得できません」
彼らの目的は連合に与したオーブ軍の戦闘停止及び撤退である、それはカガリの勧告からも明らかだ。
もっともなぜあんなやり方ではなく、犠牲の出ないやり方を選択しなかったのか。
どんな言い分があるにせよ彼らの行動でザフトが被害を受けたのは事実だ。ならば当然プラント本国や司令部も動くだろう。
しかも場合によっては敵と認定される最悪の事態も予想される、ならその前に彼らとの解決の道を探すのは自分の仕事であるとアスランは考える。
この申し出にタリアは考えを巡らせる。アスランはフェイスである以上、自らの判断で行動する資格が与えられている、いかに同じフェイスのタリアにも止める権限は無い。
「それはフェイスとしての判断かしら」
先のアークエンジェルとの戦闘は無駄な戦いであり犠牲だ、連合とあのまま戦っていれば、どっちが勝ったかは分からない。
もしかすればミネルバは沈められ全滅もありえた事は判る、しかしあのように横から出てきた訳の判らない連中に訳の判らないまま蹂躙されるなど許容できるものではない。
少なくともアスランが彼らに接触できれば敵か味方の判断は付くかもしれない、そう考えたタリアは許可を出す事にした。
アスランが退出したあとで昨日凱から聞かされた話に思考が飛ぶ、戦争だけでも頭が痛いと言うのに宇宙からの脅威が迫っているときた。
子供が好きなコミックを思い出すが凱が言う以上は現実だろう。
「まったく、この世界は呪われているのかしら」
この時代宗教は廃れているが、もし神様がいれば悪態の一つも吐きたいところだと溜息を吐いた。

9:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/10 19:56:05
ミネルバを発ったアスランはギリシャの町に来ていた、何の手がかりも無い以上取りあえず大きな町で情報収集を行なおうと考えただけなのだが、ここで偶然にもミリアリア・ハウを見つける。
ミリアリアに声をかけてオープンカフェに誘い、まずは近況報告からする。確かにアスランとミリアリアはアークエンジェルに乗っていたが短い期間だったしそれ程話した事も無い。
どちらかというとディアッカが親しかった感じだったので、話を振ると露骨にいやな顔をされた、どうやら地雷だったらしい。
これ以上気分を損ねると不味いと思い、自分がザフトに戻った事、マルマラ海でアークエンジェルが戦闘に介入したおかげで大分混乱した等の事情を説明するアスラン。
「君はたしかジャーナリストだったろう、何か知らないか」
どんな事でも構わないというアスランにミリアリアは会って如何したいのかと問いかけた、それには兎に角会って話がしたいとうアスラン。
「いいわ、伝が無いわけじゃないからアスラン個人になら繋いで上げる」
ミリアリアはアスランの必死な様子に何とか連絡をつけてみると請合った。

一方カガリ・ユラ・アスハとラクス・クラインはアークエンジェル内に作られた天使湯と名前の岩風呂風に設えた大浴場に浸かっていた。
まあ壮絶に無駄な設備である事は想像に難くないがとりあえずいまは関係がない。
考え込むカガリに向かってラクスが何を考えているのかと問いかける、カガリの口から出てきたのは自分の決断に対する迷いであった。
「これで良かったのかなって」
国家元首である自分が一言言えば戦闘は終わると思っていた、でも実際はどうだ、自分は何も出来ずに只うろたえていただけではないか。
いや、あそこでユウナの所に行っていればオーブには戻れた、それなら代表として派兵を取り下げる事も出来たのではないのか。そんな事ばかり頭の中をグルグルと回る。
「まず決める、そしてやり遂げる。それが何かをなす時の唯一の方法ですわ。きっと」
途端にラクスがそんな事を言い出した、見ればこちらを慈しむような表情で見ていた。
その顔を見ていると心が軽くなってくる。そうだ、自分で決めた事を最後までやり遂げる事が出来ればいいだけだ、その為にアークエンジェルの仲間も力を貸してくれている。
そんな会話を隣の男湯でキラ・ヤマトが聞いていた。

風呂から上がったラクス、カガリ、ついでにキラがブリッジに来るとターミナルからミリがキラ達に会いたいとの連絡を貰ったと報告があった。
ターミナルとはクライン派の組織にあって情報を司る部署である。その構成員は近所の井戸端会議から国家の中枢にまで及び、プラントのみならず地球にも浸透している。
特にプラントには多く、石を投げればクライン派に当たるとまで揶揄される程である。
この連絡もこの地中海沿岸で活動しているターミナルの一つからもたらされたものである。
「ダーダネルスで天使を見ました、赤のナイトも一緒です。連絡願います」
赤のナイトとは誰のことかと話し合うとカガリがアスランだと言い出す、なるほど彼が乗っていたMSはイージスもジャスティスも赤かった。
相談の結果キラとカガリが会いに行くことに決まった。


10:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/10 19:57:31
ギリシャ湾沖にある小さな岩場にてキラとカガリ、ミリアリアが揃って待っているとセイバーに乗ったアスランが現れた。
久々の再開となったがアスランがザフトに戻ったと聞くと途端に大声で問い詰め始めるカガリ。
「どういうことだお前、ずっと心配していたんだぞ。あんなことになって連絡も取れなかったけど、でもなんでザフトに戻ったりなんかしたんだ!」
あんな事というのは自分がオーブから連れ出されたことを指している、またこの問いかけに対してアスランの返答は自分もまた色々と考えた結果だと告げる。
「そのほうが良いと思ったからだ。自分の為にもオーブの為にも」
「そんな、なにがオーブの!」
更に言い募ろうとするカガリを制止するキラ、傍らに鎮座するセイバーを見上げ見た事がある機体だと思いながら静かに口を開く。
「あれは君の機体? じゃあこの間の戦闘も」
「ああ、俺も居た。今はミネルバに乗っているからな。お前を見て話そうとしたが通じなくて、だが何であんなことをした? あんな馬鹿なことを、おかげで戦場は混乱し要らぬ犠牲も出た」
強い語調でキラの採った行動を非難するアスランだが、それに反応したのはカガリの方だった。
「馬鹿なことだと! ザフトが戦っていたのはオーブ軍だったんだぞ。私達はそれを止めようと」
「あそこで君が出て行って、素直にオーブが撤退するとでも思ったか! 君がしなけりゃいけなかったのはそんな事じゃ無いだろう。戦場に出てあんな事を言う前にオーブを同盟になんか参加させるべきじゃ無かったんだ」
感情のままに叫ぶカガリについ怒鳴り返してしまうアスランに向かってキラは感情を交えずに語りかける。
「でもそれで今は君がザフト軍だって言うならこれから如何するの、僕達を探していたのは何で?」
この質問に対してアスランは、あんな馬鹿な真似は止めさせたいと思ったから話に来た、お前達のやっている事はただ状況を混乱させているだけだ。
この戦争は確かにユニウス7の事件が切欠だが、その後の混乱はどう見たって連合が悪い。
それでもプラントはこんな戦争を一日でも早く終結させようと頑張っていると続ける。
「本当にそう? プラントは本当にそう思っているの。あのデュランダル議長って人は本当に戦争を早く終わらせて平和にしたいって」
「お前だって議長のしている事は見てるだろ、言葉だって聞いたろ。議長は本当に」
世界の事を考えて行動していると続けようとしたがキラの言葉に声が詰まる。
「じゃあ、あのラクス・クラインは? いまプラントに居るあのラクスはなんなの。それでなんで本物の彼女はコーディネイターに殺されそうになるの」
なんだ、それはそんな事は初めて聞いた。いやミーアの事は知っている、行方が分からないラクスの代わりに平和の歌姫という看板を使用する為に議長が用意した影武者だ。
しかしディオキアで議長は本物のラクスにプラントに戻って欲しいと言っていたではないか、それが何でラクスが襲われる事態になる。
混乱するアスランに更にキラから声が掛けられる。
「オーブで僕はコーディネイターの特殊部隊とMSに襲撃された。狙いはラクスだった、だから僕はまたフリーダムに乗ったんだ。
彼女も皆も、もう誰も死なせたくなかったから。彼女は誰で、なんで狙われなくちゃならないんだ。それがハッキリしないうちは、僕はプラントも信じられない」
もっとも特殊部隊を撃退したのはバルドフェルドとマリューであり、MSを破壊したのはジェイダーである、実際のところこの事件ではキラは何もしていない。
しかも襲ってきたのは何処の所属か判別していないし、思い込みは危険だとJに言われたのだが、キラはプラントの仕業だと思っていた。
アスランはキラの言葉を聞きながらも先日夕食を供にした時のミーアの姿を思い出す。
「今だけで良いんです。今いらっしゃらないラクス様の代わりに議長や皆さんのお手伝いが出来たらそれだけで嬉しい。アスランと会えて本当に嬉しい」
自分が偽者であっても、求められているのはミーア・キャンベルでは無くラクス・クラインだとしても自分に出来る事がある事が嬉しいと、そう言った彼女の顔は本当に嬉しそうだった。

11:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/10 19:58:28
「戦いを終わらせる。戦わない道を選ぶということは戦うと決めるより遥かに難しい事さ」
また議長が言っていた言葉も脳裏に蘇る。その言葉の通りに彼は行動しているではないか、
たしかにラクスが狙われたというなら大変な事だ、だがその一事を持って議長やプラントが信じられないと言うのは早計過ぎるのではないか。
プラントにも色々な考えの人間達がいる、ユニウス7の犯人達がいい例だ。その襲撃だって議長の知らない連中が勝手にやった事ではないのか。
「そんな事くらい分からないお前じゃないだろ、その件は俺も艦に戻ったら調べてみるから、だからお前達は今はオーブに戻れ。
戦闘を止めたい、オーブを戦わせたくないというなら、まず連合との条約から何とかしろ。
戦場に出てからじゃ遅いんだ」
「それは、解ってはいるけど」
キラとカガリに向かって自分の考えを話すアスランに対して、キラの態度は理解しているけど認められないという感じだ。
「じゃあお前は戻らないのかアークエンジェルにもオーブにも」
言葉を濁すキラに代わってカガリがアスランに対してこれから如何するつもりなのかを尋ねる。
「オーブが今までどおりの国であれば行く道は同じはずだ。俺は複隊したんだ、いまさら戻れない」
「でもそれじゃ、君はザフトでこれからも連合と戦っていくと言うの。じゃあこの間みたいにオーブとも」
アスランの答えにキラが更に同じ質問を重ねるが答えは変わらない。
今は戦争中で戦争が終わるまでは仕方ない。自分としても出来れば討ちたくは無い、でも連合と共に攻めて来るのでは戦うしかない。
連合が今この西ユーラシアで何をしているのかキラ達だって解っている筈だ、それは止めなくてはならない。
だから連合との条約を何とかしてオーブを戦闘に参加させるなと言っているのが分からないのかと繰り返して続ける。
「それも分かっているけど、それでも僕達はオーブを討たせたくないんだ。本当はオーブだけじゃない、戦って討たれて失ったものはもう二度と戻らないから」
この言い分にアスランは自分の中で何かがキレた気がした。気が付けばキラに対して怒鳴っている。
「自分だけわかったような奇麗事を言うな! お前の手だって既に何人もの命を奪っているんだぞ!」
「知ってる。だからもう本当に嫌なんだ、こんな事は討ちたくない、討たせないで」
自ら勝手に戦闘に介入しておいて自分達はそんな積もりでは無かった、こんな事はしたくないのだと言っている。
「なら尚のことだ、あんな事はもう止めてオーブに戻れ。俺にだって理解は出来ても、納得出来ないこともある」
そう言ってその場を立ち去るアスランだが、彼は大きな間違いを犯してしまった。本当にキラ達を戦わせたくないと思うならカガリを連れて帰るべきであった。
これは彼個人があまりにもキラ達に近すぎた事が原因であろう、これだけ言葉を尽くせば納得して帰ってくれると思ってしまった。
またカガリに対して自分の知らないところで結婚を決めたりした事など、その場に自分が居られなかった事等があり、一緒の時間を過ごすのが気まずかったのも災いした。
それが最後の言葉に表れてしまったのであろう、なぜならその一瞬カガリが嵌めていた自分が送った指輪に視線が向かっていたのだから。

その頃シン達はミネルバが停泊中のポートタルキウスから北に行ったロドニアという場所にある連合が使用していた施設の探索任務を命じられていた。
もっともザフトが此処に駐留するようになってから、廃棄されたらしく今は誰も居ないということだ。
「なんでそんな場所を調査に行くんですか」
副長のアーサー・トラインから伝えられた命令に不満を覚えるシン、嗜めるレイ。
「武装勢力が立て篭もっていたりしたら大変だろ、それに施設事態の調査も兼ねてるんだよ」
連合が撤退してもゲリラや傭兵崩れの盗賊などがいた場合、治安上の問題だけでなくプラントの評判にも係わるから大切な仕事だと言われて了解を返す。
「私は行かなくても良いんですか?」
ルナマリアがアーサーに尋ねると、今は凱とアスランが別件で出かけているから残るようにとの事だ。


12:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/10 19:59:29
明朝、シンとレイは若干名の陸戦隊を伴って調査に向かった、其処は事前に聞いていた通り何らかの研究施設のようであった。
施設内の調査は基本的に陸戦隊が行なう、シン達は万が一MSが居た場合の保険としてこの調査に加わったのだ。
敵のMSがいないのでは周辺警戒しかやる事が無い、確かに重要な任務ではあるがシンはこういった忍耐が必要な事は苦手だった。
「なあレイ、ちょっと中見に行かない」
案の定暫くするとシンがそんな事を言い出した。当然レイはバカな事言ってないで仕事しろと嗜めるのだが、今回はやけにしつこい。
凱もアスランも居ない状況で気持ちが緩んでいるのだろう、戦果も出しているが16歳の少年である、好奇心に負けてしまっても仕方が無いだろう。
このままでは仕事に支障が出るかもしれないと判断したレイは、ベースにいる兵に外の空気を吸ってくると言い訳して二人で中を覗く事にした。
そこは確かに何かの研究所であった、薄れてはいるが様々な薬品が混じった独特の臭い、何に使うか分からない器具。
その一つ一つがレイに幼い頃の記憶を思い出させる、白い研究所でデュランダルと金髪の男が話している、自分はその男の顔を見て聞かされた言葉は自分の……
「うおえっぇぇぇぇっ」
「レイ! どうした大丈夫か。すぐに外に連れて行くからしっかりしろレーイ!」
研究施設内で突然苦しみ吐き出すレイを見て、シンは大声で助けを呼んだ。

大西洋連合軍黒海派遣艦隊は先のマルマラ海で破壊されたMSの修理と補給を行なっていたネオ・ロアノークは頭を捻っていた。
なぜなら多くのMSの破壊箇所がどういう訳か手足に集中していたからだ、特にフリーダムと謎のMSに撃墜された機体はほぼ全てがそうである為にニコイチ、サンコイチにすることで比較的簡単に戦力を整える事が出来た。
これはオーブ軍のほうも同じであるらしい、もっともオーブはその前にザフトと戦っているので撃墜された機体も多く消耗度は此方よりも激しいと言っていた。
そんな状況で次の攻勢について思案しているネオに一つの報告が届く、なんでもロドニアにあったエクステンデッドの研究施設にザフトの調査が入ったという事だ。
証拠の隠滅はしなかったのか尋ねるネオに対して、残された被検体と共に基地施設を爆破しようとしたのだが失敗したとの事ですと続ける。
「そりゃ面白くないな、ロドニアのラボにゃ色々と表ざたに出来んもんがあるでしょ」
ついては施設を破壊する為に戦力を回して欲しいと言う事だが、今回の出撃では海上戦闘を想定していたので、対基地用のナパームやバンカーバスターのような武器が無いと話すのをステラ・ルーシェが聞いていた。

凱が議長と話し合いを終えて翌日、昼過ぎにミネルバに戻ってくると随分と慌しい雰囲気に包まれていた。
走り回っているヨウラン・ケントを捕まえて話を聞くとなんでも廃棄された連合の研究施設に向かうという事だと知らされた。
何事かあったのか急いでブリッジに向かい艦長のタリアに詳しい事情を聞く、なんでも調査の為に向かったシン達だが、レイが調査中に突然倒れてしまったという。
「失敗しました、廃棄された研究施設に残党か武装勢力が居てはいけないと調査に出したんですが、BC兵器や細菌の可能性も視野に入れるべきでした」
副長のアーサーがそう言って悔やむが今は一刻も早く現地に向かい適切な処理を行なうべきだ。
「ミネルバ発艦」
タリアの声を共にミネルバがロドニアに向かって発進した。


13:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/10 20:00:43
パイロット控え室へ歩いていたステラは前を歩いていたスティング・オークレーとアウル・ニーダに向かって先程聞いた事を尋ねてみることにした。
「ロドニアのラボってなに?」
尋ねられた二人が顔を見合わせる、ロドニアのラボといえば三人が育てられた場所である。
「俺達が前に居たとこじゃん」
「なんだ、行き成り?」
「悪い事にザフトがってネオが」
たどたどしくもネオが話していていた事を二人に説明するステラ、話を聞いたスティングとアウルが驚愕する。
咄嗟に走り出そうとするアウルをスティングが止める。
「落ち着けアウル」
「なんで落ちついていられんだよ。ラボには母さんが、母さんが死んじゃうじゃないか!」
母親が危険だと取り乱すアウルだが、実際はラボに母親などは居ない。アウルが母親だと思っているのはそう刷り込まれた研究員の女性職員だ。
不安定になり暴れまわるアウルを落ち着かせようとするスティングをしり目に、ステラはふらふらと歩き出す。
「死んじゃう? 死んじゃうはダメ、怖い」
ステラは当ても無く歩きながら、ブツブツと呟いている。その時脳裏にディオキアで溺れた時の光景が蘇る。
自分を助けてくれたシンの顔を思い出すステラ、あの男の子は何か言っていた。なんと言っていたのだろう?
「君は死なない、俺がちゃんと守るから! ああ、大丈夫。君は俺が守るよ」
そうだ、そう言っていた、怖い物から守るって。
「守る、守る!」
だからアウルの怖い物から私が守る。そう決めて走り出してガイアに乗り込むとステラは機体を起動させて叫ぶ。
「ハッチ開けて、開けないなら吹き飛ばす!」
空母のハッチから飛び出して四足獣形体に変形し、北を目指して走り出すガイアの中でステラは繰り返していた。
「ロドニア、ラボ、母さん、守る!」

ロドニアに着いたミネルバは研究施設内の本格的な調査を開始していた。敷地にテントが張られ、専門の調査員も導入されている。
先行したシン達の身体検査も行なわれ異常無しとの検査結果が出た、レイの体調不良は精神的な問題であり、少し休めば大丈夫だということだ。
現在凱はタリア、アーサーと一緒に施設内部に入っていた。そこかしこに折り重なる死体の様子は銃創や切創などが目立つ。
明らかに対人戦闘が行われた後だが、職員と子供達の死体しか見受けられない。その惨状からタリアはこれが外敵の仕業では無いと判断する。
「内乱と言うことでしょうね、自爆しようとして恐らくは」
反対する人間たちと交戦状態に陥ったという事だろう、しかも叛乱を起こしたのは子供達に違いない。
先に進むとシリンダーの中に飾られる子供の死体が浮かんでいた。その光景を見たアーサーが叫ぶ。
「これは一体、何なんですか一体此処は!?」
その声に応える者はいなかったが唇を噛み締めるシン、帽子を目深に下げるタリア、目は冷静に辺りを見回すが握った拳が震えている凱。
更に奥へ進むと人間の脳が収められたケースが並んでいる部屋へと辿り着いた、そこで電気が復旧したのかコンピューターの端末に光が点る、凱が手を触れて起動させデータを呼び出す。
「CE64年7月11廃棄処分3入所、8月7廃棄処分5入所…」
淡々と読み上げる凱にそれは何の事か尋ねるアーサーにタリアが推量を交えて説明する。
「被研体、つまり子供の入出記録ってことかしらね、連合のエクステンデッド、あなただって聞いているでしょ」
エクステンデッドとは遺伝子操作を忌み嫌う連合やブルーコスモスが、薬やその他の手段を使って作り上げている生きた兵器、戦う為だけの人間である。
ここはその実験、製造施設と言うことだろう、コーディネイターに対抗出来る様に薬や何かで強化され、ただ只管に戦闘訓練だけを施される。
そして適応出来ない、また付いて来られない者は容赦無く淘汰され、次の子供が送り込まれて来る、此処はそういう場所なのだ。
先程のシリンダー内の死体やここにある脳髄はその残滓であり、連合が廃棄を決定した時に残っていたエクステンデッドと研究所職員の間で起こった戦闘が施設内の惨状だと結論づけた。

14:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/10 20:01:38
施設内から戻ると既に夜の帳が降りていた、あの光景を見た者は多分に消耗していたがやらなければならない事は多い。
タリアは基地に連絡を入れて専門の調査団の派遣を要請し、アーサーはレーダー手へ周辺警戒を厳重にするよう通達を出した。
凱達はテントで小休止を取っていた、この後はMSで警戒に付く予定である。施設内へは立ち入らなかったルナマリアも話を聞いて憤慨している。
「本当にもう信じられませんよ、コーディネイターは自然に逆らった間違った存在とか言っておきながら、自分達は何をしているんだか」
それを受けたシンも同じように、いや現場を見たぶん余計に憤っている。
コーディネイターを散々に化け物扱いしておいて、自分達のやっている事はもっと非人道的な、ただ戦う為だけの生きた機械を生み出す事ではないか。
「遺伝子いじるのは間違っていて、これは有りなんですか良いんですか! 一体何なんですブルーコスモスってのは!?」
凱も大声こそ上げないが怒っているのは明白だ、あの所業は詰るところバイオネットのハイブリットヒューマンやメタルサイボーグを生み出すのとなんら変わりが無い。
無論、生まれる前に遺伝子を操作するコーディネイターは正しいのかと問われれば、凱も即答は出来ないだろう。
だが少なくともコーディネイターは自分で自分の生き方を決められる、しかし連合のエクステンデッドは戦いの為だけに生み出され、消耗されるだけの存在だ。
「こんな事は許せない、いや許してはいけない」
凱が持っていたスチール缶を握りつぶした丁度その時、辺りにサイレンが鳴り響いた。
連絡によると1機のMSが此方に向かって来ているようだ、タリアはシンに出撃命令を出す。
凱も出撃すると言うが、1機だけで来るのはおかしい、陽動の可能性もあるので残るように言われた。

その頃アスランはロドニアへ向かって飛行中であった、本来なら暫くの間キラ達を追いかけるつもりだったのだが、思いがけずに接触が早かった為ミネルバに合流しようと考えたのだ。
その途上で同様にロドニア方面へ向かう反応を発見したため、そちら側へ機首を向けると前方に疾走するガイアの姿が見えてきた。
「ガイア、なぜこんな所に?」
取りあえず足を止めようとマウントしてあるビームライフルを放つ、その一撃はガイアの足元に着弾するがガイアは一跳びするとこちらに向きを変えて迎撃態勢をとった。
「おまえー、邪魔するなぁー!」
背中のMA-81R≪ビーム突撃銃≫砲を撃ちまくり、アスランのセイバーを落とそうとするガイアに、その攻撃をガイアの周囲を高速で飛びかわすセイバー。
其処へシンの操るフォースインパルスが参戦する。
「隊長、どうして此処に? それにあれはガイアか」
「シンか、合流途中にガイアと遭遇して戦闘状態になった。手を貸せ」
「っ了解!」
2対1になり余裕の出たアスランは事の次第をシンに尋ねると、この先には連合の研究施設が存在すると返答があった。
この機体1機で来た場合、何らかの大規模殲滅兵器が搭載されている可能性もある。
「気をつけろ、施設の破壊が目的なら特殊な装備を持っているかもしれない。爆散させずに倒すんだ」
「ええー!?」
行き成りそんな事を言われたシンが悲鳴を上げる、その一瞬の隙にガイアの体当たりを食らって吹き飛ぶインパルス。
地面に叩きつけられる直前スラスターを吹かせ背面飛行しながら態勢を立て直して着地するインパルス。
そこへ翼のMR-Q17X≪グリフォン2ビームブレイド≫で突進してくるガイア、シンはそれを見てかわすのでは無く、逆に前へ出た。
間合いを潰してガイアの頭を膝蹴りでカチ上げるとすかさずビームサーベルでコクピットを薙ぎにかかる。
吹き飛ばした勢いが付きすぎていたのかこの一撃はガイアのコクピットカバーを破壊するに留まった。
ガイアはそのまま仰向けに倒れると活動を停止させる、どうやらパイロットが今の衝撃で気を失ったようだ。
カバーが破壊された為にコクピットの内部が露出している。パイロットの様子を見るシンの目に驚きの光景が飛び込んできた。
「あの子、ステラ?」
ガイアのコクピットに乗っていたのはディオキアで会った不思議な少女ステラ・ルーシェであった。

15:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/10 20:04:03
アスランと分かれたキラはアークエンジェルの展望室でラクスと語り合っていた。
「なにが本当か彼の言うことも分かるから、また良く分からなくて」
「そうですわね」
「プラントが本当にアスランの言う通りなら僕達は、オーブにも問題は在るけど、じゃあ僕達は如何するのが一番いいのか」
「分かりませんわね。ですから私見てまいりますわ。プラントの様子を、道を探すにも手掛かりは必要ですわ」
「それはダメだ、君はプラントには」
「大丈夫ですキラ、行くべき時なのです。行かせて下さいなキラ」
プラントへ向かうと言うラクスをキラは止めるが彼女の意思は固かった、こうしてラクスは宇宙へ上がる事になる。

翌日、ニュースでミーアがプラントに帰るのをみたバルドフェルドがやはり宇宙に向かうと言い出したラクスに対して提案した。
「それならラクス・クラインの為に用意されたシャトルを僕達が使わせてもらおうじゃないか」
ターミナルの情報網を駆使してミーアのスケジュールを調べ上げると、彼女が到着する少し前に基地へ乗り込み、即席のサイン会を行なった後でシャトルへ搭乗した。
ようやく到着したミーアは、今にも発進しようとするシャトルを見て声を上げそうになる。
あの中に本物のラクス様がいらっしゃる、なら自分の役目は終わりなのだろうか。アスランにはラクスの代わりで良いとも言った、それが本心だったはずだ。
しかし、いざ本物が現れると途端に怖くなってくる。また昔と同じ誰からも注目されない只のミーア・キャンベルに戻ってしまう。
「あれは私の偽者です、逃がしてはなりません!」
知らずミーアは大声で叫んでいた。
ミーアの護衛として一緒に行動していたハイネ・ヴェステンフルスの行動は素早かった、すぐさま自分のグフ・イグナイテッドに乗り込むとシャトルの発進を止めるように指示を出す。
「シャトルを止めろ、発進停止!」
フェイスであるハイネの言葉で一斉に動き出すザフト兵、ハンガーから次々とAMA-953バビとTFA-4DEガズウートがシャトルの追撃に出る。
飛行能力を有するバビが飛び立ちシャトルを追撃する、しかし大気圏内飛行が可能なバビと大気圏離脱を仕様とするシャトルでは推力に大きな開きがある。
徐々に離れて行くシャトルを見たハイネは撃墜を決める。
「かまわん、撃ち落せ!」
地上のガズウートと空中のバビからミサイルがシャトル目掛けて発射される。
シャトルにミサイルが命中しようとした瞬間、横から光が延びて一瞬で全てのミサイルが落とされた。
「なにいっ!?」
驚愕するハイネの目に翼を広げたフリーダムの姿が飛び込んできた。
フリーダムはそのままハイマットフルバーストを連発し、近くにいる機体にはラケルタビームサーベルで斬りかかると面白いようにバビの両手両足が無くなり地上に向かって落ちてゆく。
「ええいっ、フリーダムは化け物か」
悪態を吐いてフリーダムへと吶喊するハイネのグフ、流石にフェイスのハイネ相手では一撃で仕留めることは出来ない様で位置取りを変えながら相対する両機。
「ザクとは違うんだよっ、ザクとはっ!」

16:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/10 20:04:54
右手に内蔵されたスレイヤーウィップをフリーダムのビームライフルに絡みつけ叫ぶハイネ。
電撃をウィップに流しビームライフルを破壊する事に成功するが、油断したハイネはライフルの爆発に隠れて突っ込んできたフリーダムにグフの両手を切り飛ばしされてしまう。
これで攻撃手段を失ったハイネは距離を取る。するとフリーダムは地上に向けて背中にあるバラエーナビーム砲を構えた。
その先にあるのは燃料タンクである、恐らく追撃が掛からないように基地機能を麻痺させるつもりだろう。
「なに考えていやがるっ!?」
燃料タンクなど吹き飛ばしたら、下手をすれば誘爆を起こし基地そのものが吹き飛びかねない。
咄嗟にグフを射線上に滑り込ませるハイネ、自分に迫って来るビームの光が最後に見た光景となった。
キラは困惑していた、最後の一撃は基地のタンクを壊して撹乱する積もりだったのだが、なぜか先程戦闘能力を奪った機体が割り込んできた。
そのお陰で殺したくないのに殺してしまったではないか、しかし充分時間は稼げたようで既に追撃は無い。
これで一安心だと胸を撫で下ろすキラにバルドフェルドから通信が入る。
「助かったよキラ、これで一安心かな」
今回は大丈夫だがプラントに行けば何が起こるか判らない、心配したキラがラクスに話しかける。
「やっぱり心配だラクス、僕も一緒に」
「いえ、それはいけませんキラ、彼方がアークエンジェルに居なければマリューさんやカガリさんはどうなりますか」
「でも、いまならJさんも居るし」
やっぱり僕は君と一緒に行くと言うキラにラクスは幼子を安心させるように語り掛ける。
「私なら大丈夫ですわ、必ず帰ってきます彼方の下へ」
「心配するなお前の代わりに俺が守る」
「バルドフェルドさん、お願いします。本当に気をつけてラクス」
バルドフェルドに念を押すとキラはラクスを見送ってアークエンジェルに帰艦した。
宇宙に出たラクス達は飛行を続けていた、追跡も無く航行は順調だ。操縦するバルドフェルドにラクスは目的地を訪ねる。
「それでバルドフェルドさん、これから真っ直ぐにプラントへ向かうのですか?」
このラクスの質問には、流石に真っ直ぐプラントに向かってはすぐに捕捉されてしまう、まずはファクトリーに向かうと答えた。
それに今ファクトリーにはあの御方がいる、ラクスが来るのを心待ちにしているだろう。
「総統がお待ちですよ」
「そうですか、お会いするのも久しぶりですわね」
ラクスは久方ぶりに会う人の事を思い出して顔を綻ばせた。

君達に最新情報を公開しよう
ロドニアでの衝撃も覚めやらぬなか
クレタ島沖で再び連合、オーブと戦う事になったミネルバ隊
そこに現れるアークエンジェルとジェイダー
次回 勇者王ガオガイガー DESTINY
第12話 激突 GとJ にFINAL FUSION承認
これが勝利の鍵だ ≪ルネ・カーディフ・獅子王≫


17:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/10 20:12:52
ども小話です
新スレ乙
ちなみに本編と違いルナは凸の尾行はしていません
ではまた

18:通常の名無しさんの3倍
09/07/11 00:16:41
小話氏gjっす!!
だけど・・ハイネーーーー!!!!
あっけなさすぎる、ハイネ・・・善戦したのに

19:通常の名無しさんの3倍
09/07/11 00:38:40
キラの擁護がしたいわけじゃないが、きちんとした軍人としての訓練を受けてないから、どっちを撃った方が人を沢山殺せるか分からないんだろうな・・・・
キラもある意味では被害者なのかも
ともあれハイネの冥福をお祈りします

GJでした。

20:通常の名無しさんの3倍
09/07/11 02:55:02
URLリンク(ranobe.com)

21:通常の名無しさんの3倍
09/07/11 09:14:17
GJ
ハイネは勇者だ…

>>19
まぁ所詮はろくな訓練も受けていない(知識面では)素人ニートだしな…

しかしあれだな…アスランとのやりとりやハイネの件といい屁理屈ばかりで責任転嫁ばかりしているのを見て、キラの顔面を思いっきり殴りたくなったのは初めてだ…

22:一尉
09/07/11 15:40:35
同じ所でストライクEは。小話君。

23:通常の名無しさんの3倍
09/07/11 18:49:02
むしろラクシズ関係者全員殴り飛ばしたい

24:通常の名無しさんの3倍
09/07/11 19:37:11
久しぶりに腹の立つキラを見たな。しかし、ファクトリーの総統って誰だろう?
・・・まさか、ソール11遊星主とか?木星の勢力も気になるな。

25:通常の名無しさんの3倍
09/07/12 11:57:26
現時点のラクシズはTVとほぼ同等のムカツキ度に留まってはいるが、
今後原種だの遊星主だのガガガ側のバケモノまでガチに洗脳するくらいの
荒業をやってのけるなら悪のカリスマとしていくらかは感心できるんだが…

26:一尉
09/07/12 14:30:44
スウェン中尉はいつ出ますか。小話君。

27:通常の名無しさんの3倍
09/07/12 21:05:14
この後まとめて光にされるかシン辺りに真っ二つにされるかの2択しかないラクシズにそんな関心いらないっての

28:一尉
09/07/13 19:43:33
やむえん、支援

29:通常の名無しさんの3倍
09/07/13 23:47:03
人間相手にGクラッシャーは使わないだろjk

30:通常の名無しさんの3倍
09/07/14 03:13:20
ここはあえてカンナで削り節にするに一票

31:通常の名無しさんの3倍
09/07/14 06:19:48
ついでに特機(笑)を作り出す、工具を日常的に使ってるジャンク屋も
見た目工具な超兵器でチリにされたほうが平和かも。

32:一尉
09/07/14 19:26:55
ゴルデイで破壊にします。

33:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/18 10:45:43
勇者王ガオガイガー DESTINY
第12話 激突 GとJ 
オーブ軍派遣艦隊の旗艦の空母タケミカズチのなかでユウナ・ロマ・セイランは一通の書簡を受け取っていた。
その書簡を開いて目を通すと、俄かには信じられない内容が記されている。まさか悪ふざけでこんな物を送ってくるとは思えないが真意が掴めない。
なら直接会って確かめるしかない、どうせ何時かは会わねばならない相手だし、自分は軍人ではなく政治家だ。交渉、腹芸、騙しあいが本領発揮の場だ。
そう結論付けるとトダカ一佐を呼び出して、艦を降りる為の準備を始めた。
「人と会う約束が出来てね、艦隊の指揮はトダカに一任するからしっかり頼むよ」
そう言い残してユウナはタケミカズチを降りて、一路イスタンブールへ向かった。

連合の研究施設を調査するミネルバ隊に、ガイア接近の知らせがもたらされた。迎撃に出たシン・アスカのインパルスはロドニア郊外にてガイアと交戦、参戦したアスラン・ザラのセイバーと共にガイアを行動不能にする事に成功した。
破壊されたガイアのコクピットに座っていたのは、かつてディオキアの海で助けた少女ステラ・ルーシェの姿であった。
思わずインパルスを降りて駆け寄るシン、コクピットに到達するとステラは頭に怪我をしており、うなされている。
「なんで、なんで君がこれに乗っているんだ?」
感情が理性に追いつかない。アスランからの何をしているとの呼びかけを無視して、ステラをインパルスのコクピットへ運びミネルバへ向かうシン。
インパルスがミネルバの格納庫へ到達するやいなや、ステラを抱えて医務室へと走り出す。
「大丈夫、君は俺がちゃんと守るから。約束したから」
自分は彼女に守ると約束したのだ、だから絶対助けるから。医務室のドアが開くと同時に叫ぶ。
「先生、この子を早く!」
駆けつけたシンが抱えているのはどうやら連合の女性兵士のようだ。それを見て取ったドクターは怪訝そうな顔で尋ねる。
「いったいなんだね、その子は。それにその軍服、連合の兵士じゃないか」
「でも怪我してるんです、だから」
「敵兵の治療など艦長の許可なしで出来るか、私は何も聞いていないぞ」
「そんなのすぐ取るから」
「俺からも頼む、見てやってくれ」
いつの間にかシンの後ろに立っていた凱も手当てするように頼み込む。それでも難色を示すドクターの態度にシンが怒鳴る。
「死んじゃったら如何するんだよ!」
うなされながらも死ぬとう言葉を聞いて、途端に暴れだしたステラがシンを跳ね除けて、女性メディックに襲い掛かる。
「うわあぁぁっ! 死ぬのダメ! 死ぬの怖い!」
相手構わず暴れだしたステラが、メディックの首を締め上げるのを凱が咄嗟に引き剥がすと、後ろからシンが羽交い絞めにして抑えこむ。
「ゴメン、ステラ。俺が悪かった、大丈夫、君は絶対守るから!」
耳元でシンがステラに言い聞かせると、次第に大人しくなって気を失った。
「彼女はまさか」
その光景を見た凱は誰知らず呟いていた。

34:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/18 10:46:36
シンと凱はミネルバの艦長室に呼び出されていた、当然先程ステラを艦内に運び込んだ件について艦長であるタリア・グラディスから叱責を受けている。
「敵兵の艦内への搬送など誰が許可しましたか。彼方達のやったことは軍法第4条2項に違反、11条6項に抵触。途轍もなく馬鹿げた重大な軍機違反なのよ。これで艦内に重大な被害が出ていたら如何する積もりだったの!」
「「申し訳ありません」」
二人揃ってタリアに謝罪する。ちなみに凱が救助された時もシンは同様の行動を起こしている。勝手に凱をミネルバに運び入れたのだが、この時は所属、正体共に不明な上に大怪我を負っている様に見えたので救助行動と認めてお咎めなしだった。
しかしステラは完全に連合の兵士、しかもガイアのパイロットである。タリアが怒るのもある意味当然だろう。
凱はそれを理解している為に素直に謝罪しているのだが、自分がシンの立場でも助けるだろうなと内心考えていた。
「ふうっ、知っている子だという事だけど、ステラだったかしら? いったい何時何処で知り合ったの」
盛大に溜息をついてからシンを睨みつけ事情を問いただすタリアに対して、ステラと知り合った状況を説明するシン。
「ディオキアの海で溺れているところを助けて、なんか良く分かんない子で自分はその時は戦争の被害にあった子だと」
単にそう思っていた、凱も救助に向かった時に話はしなかったが見た顔だと補足する。その説明に対して事情は分かったと言うタリアが言葉を重ねる。
「でもあれはガイアのパイロットだわ、それに乗っていたんだから分かるでしょ、それにもしかしたら」
連合の兵士は当然ナチュラルが多い、勿論中にはコーディネイターも居るが数は少ないはずだ。だというのにまだ少女と言える年齢であれだけ戦えるならば彼女の正体とは。
そこまで考えて言葉が止まったタリアに凱が、とにかく一度様子を見に行こうと提案した。

医務室に入った凱達一行が見たのは拘束具でベッドに縛り付けられたステラの姿であった、それを見たシンが早速食って掛かる。
「なんでこんなこと、怪我人なんですよ彼女! さっきは興奮して暴れたけど」
言い募るシンに対してドクターは取りあえず落ち着けと言い渡し、一同に説明を始める。
「そういう問題ではない、どうやらこの子はあの連合のエクステンデッドのようなのでね」
それを聞いて吃驚するシン、予想が付いていた凱とタリアは、表面上は落ち着いていたが改めて聞くと複雑な心境だ。
「今は薬で眠らせてありますが、それも正直何処まで効くか分かりません、治療前に行なった簡単な検査だけでも実に驚くような結果ばかり出ましてね。
様々な体内物質の数値がとにかく異常です、また本来なら人が体内に持たない物質も多数検出されています」
流石に凱を調べた時ほどの驚きは無かったが、と軽口を聞くドクター。彼もそんな冗談を言わなければ平静を保てないのだろうと思いながらタリアは先を促す。
「人為的にということね、薬?」
「恐らくは、詳しいことはもっと専門の機関で調べてみないことには分かりませんが、ちらっと見た限りではあの研究所のデータにも似たようなものが有りましたね。
戦闘での外傷もかなりのものがありますが、ともかくそんな状況ですので、治療といってもあまり強い薬は何がどう作用するのか分かりませんし」
一同の話し合いを横で聞きながらシンがステラの様子を見ていると、微かに身じろぎした後で気がつき、辺りをきょろきょろと見回すステラ。
そんなステラの様子に顔を覗き込んで名前を呼び、大丈夫だからと声を掛けるシンに対しての返答はシンを驚愕させた。
「なんだお前は?ここは何処だ」
そう答えて自分が拘束されていることに気が付き、暴れだすステラ。拘束された手首や足首、また力いっぱい握られた手の平から血が滲む。
「落ちついてステラ、大丈夫だよ。僕だよ、分かるだろシンだよ」
「知らない、お前なんか知らない! ネオ! 助けてネオ!」
暴れるステラに覆いかぶさって声をかけるシンだが、当のステラはシンの顔など知らないと言い、仲間であろうネオなる人間に助けを求めて暴れ続ける。
「彼女には脳波にもおかしなパターンがあるんだ、もしかすると意識や記憶も操作されている可能性がある。無駄だよ、やめなさい」
ドクターは淡々と語りながら、睡眠薬を準備し無針注射器をステラの腕に押し当てて注入する。すると薬が効いたのだろうガクリと眠りに落ちるステラ。
その場に居た全員が複雑な表情を浮かべて、その光景を見ていた。

35:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/18 10:47:34
ファントムペイン指揮官ネオ・ロアノークは、無断で出撃して撃墜されたステラの事で頭をなやませていた。しばし考えた後で残された二人の処置を含めて決断を下す。
「ステラは損失扱いにするしかあるまい、それと二人からステラの記憶を消しといてくれ」
これにエクステンデッドのメンテナンス技師は時間がかかりますと答える。
「構わん、下手に憶えていても辛いだけだろう」
そう答えるがネオ自身、ステラの記憶を持っているのと奪われるのでは、果たしてどちらが辛いのかと思うが、憶えていないものに辛いも何も無いなと結論付けた。

凱はミネルバの医務室でドクターと話していた。ステラの状態を出来る限り詳しく教えてほしい。出来れば全てのデータを渡してくれと言うが、流石にそれは出来ないと断られた。
もっとも凱がどうしてもデータが欲しければミネルバ自体をハッキングしてしまえば事はすむのだが、世話になっている人達に対して其処まで強行に事を進めたくは無い。
「わかった、それならフェイスとしてデータの提供を求める」
この言葉にドクターは詰まってしまう、フェイスはザフト内でかなりの権限を認められている上に議長直属の特務隊である、これを断れるはずがない。
「ずるいね、君は」
そう言って全てのデータを纏めたディスクを凱に手渡すドクター。もっとも直ぐに出てくるあたり元々渡す気であったのかもしれない。
「すまない、でもこうでも言わないと渡してくれないだろう?」
「違いない」
データを受け取った凱はミネルバの外に出るとルネから貰った通信機でルネとボルフォッグの二人を呼び出した。

凱が医務室から出て少しの時間が過ぎた頃、今度はシンがやって来た。ドクターはおらずメディック一人が詰めている、軽く会釈してステラが拘束されたベッドの脇にしゃがみこむ。
「くそっなにも覚えてないなんて、君がガイアのパイロットだなんて、あんな所に居た子だなんて」
そう言いながらステラの髪を優しく撫でるシン、僅かな時間そうしているとステラの声が聞こえた。
「シン?」
顔を上げるとステラがシンの顔をみて微かに微笑を浮かべている。
「シン、会いに来た?」
相変わらず、何を言いたいのか良く分からないが、今の落ち着いた状態のステラはディオキアの海で出会った時の彼女のようだ。
「俺のこと分かる?」
恐る恐る尋ねるシンに対して、ゆっくりとコクリと頷くステラにシンの胸は熱くなり、涙が込み上げてきた。

それから数日が過ぎ、ロドニアの研究施設には専門の調査チームが入り、ミネルバはポートタルキウスの町に戻って修理と補給を終えていた。
もっとも艦首のタンホイザーに関しては、ジブラルタルで全交換を行なうまで使用不可能である。
ステラは現在ミネルバに預かりの身である、これは単純に彼女をジブラルタルへ移送する任務にそのままミネルバが指名された為である。
もっともポートタルキウスからジブラルタルへ向かうにはクレタ島沖に展開しているオーブ、連合の合同艦隊を抜かなければならない、その戦力があるのが単純にミネルバだという事だ。
ブリッジでタリアが副長のアーサーと話していると凱がアスランと連れ立ってやって来た。
クレタ沖に展開している艦隊と戦闘になれば、先日同様アークエンジェルが介入してくる可能性が高い、その場合どう対応するのか協議したいということだ。
タリアの話ではマルマラの戦闘の後、ディオキアに現れ基地を襲撃、シャトル1機を強奪、多数の死傷者を出した、その中にはあのハイネも居たという。
此方にこれだけ被害を出された以上は敵として対応するとザフトの上層部は決定を下した、ならばミネルバの対応もそれに倣うものだ。
「その積もりで対応してちょうだい」
その回答にアスランは悔しそうな顔を浮かべていた。

36:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/18 10:50:29
ブリッジを退出した凱は、アスランの様子がおかしい事に気がついた。なにか悩み事があるなら遠慮なく話してくれと声を掛ける。
暫し逡巡したアスランは意を決して話し始める。実はあの戦闘の後アークエンジェルに乗っている友人に会って話をする事が出来た。
その時に馬鹿なことは止めてオーブに帰るように説得したのだが、結局分かってもらえなかった、自分は彼らと遭った時に戦えるか自信が無いと言うことだった。
それを聞いた凱は自分の事を踏まえて語りかける。
「アスラン、君はあのフリーダムのパイロットとは知り合いか?」
「ハイあいつは、キラは俺の親友なんです。あいつ戦いたくないって言ってたのに。帰れって言ったのに。なんでザフトの基地を襲うなんてまねを」
「彼のやっている事を正しいと思うか?」
「いえ、それは思いません。あのやり方では状況を混乱させて被害を増やすだけです」
「親友が間違った道を歩いているのなら、たとえ憎まれてでも止めてやるのが本当の友情じゃないのか。今の君にはそういう気概が足りないように見えるな」
その言葉に声を無くすアスラン、それを見ながら言葉を続ける凱。
「かつて俺にも共に競い、切磋琢磨した友がいた」
鰐淵シュウ、凱の高校の同級生にしてライバルだった男である。勉強、スポーツ等あらゆる分野で凱と競い合いながらも凱に勝つ事が出来なかった彼は、卒業式の日に最後の結着をつけるべく凱に決闘を挑んできた。
しかし凱は宇宙飛行士となっており、初フライトから戻った後に決着を着けようと約束したのだが、その初フライトでEI-01と接触、瀕死の重傷を負ってしまう。
その後Gストーンサイボーグとして生まれ変わった凱は、機械文明ゾンダーと戦う勇者となり決着は流れたと思われていた。
しかしシュウは諦めていなかった。数々の戦いを経てエヴォリュダーとなった凱の前に、対抗するべくバイオネットのメタルサイボーグとなって現れたのだ。
そして数度に渡る戦いを経て、シュウはガオファイガーのファイナルフュージョンに失敗、凱の目の前で砕け散ってしまった。
「苦い記憶の一つだ。俺はこの事件で言葉だけでは伝わらない事もあると、改めて思い知らされたよ」
凱の話を聞いたアスランは、言葉を失っていた。その様子を見た凱は余計なことを言ったかと思い。
「君がどんな道を選ぼうとも、決して後悔だけはしないことを願うよ」
それだけを言ってアスランの肩を叩いて促すと、ブリーフィングルームへと向かった。

ブリーフィングルームで凱はシン達を前にして次の作戦について説明をした。クレタ島沖に展開する連合、オーブの両艦隊を叩くことになる。
基本的なフォーメーションは今までと変更は無い、ただしアークエンジェルが出てきた場合の対応を協議すると話すとシンが勢い込んで言って来た。
「フリーダムの相手は俺にさせて下さい!」
かなりの剣幕で訴えかけてくるシンに、その理由を尋ねるとフリーダムは家族の仇なんですと言い出した。それを聞いて愕然とするアスランを横に凱は如何いうことかとシンに尋ねる。
詳しい話を聞くと2年前の連合軍のオーブ侵攻の時、フリーダムが撃った流れ弾が避難中の家族の命を奪ったとの話だった。
「避難勧告だって、戦闘が始まる当日まで出されなかった。すぐに市外戦になって山まで逃げた所で避難船に乗るように言われて、避難途中に俺の家族は。だからアスハとフリーダムは仇なんです、俺にやらせて下さい」
シンの気持ちは解らないでもない、凱も父である獅子王麗雄をゾンダーとの戦いで失っている。しかし今のシンにはフリーダムの相手は任せられないと判断した凱は却下する。

37:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/18 10:51:37
「駄目だ、シンはレイ達と艦隊戦力に当たれ」
「なんでですか! あいつは俺が!」
さらに言い募るシンに対して、凱は静かに判断した理由を語る。
「いいかシン。怒りも悲しみもお前の中にあるものだ、それを捨てろとか忘れろとは言わない。だが憎しみだけで戦おうとするな、お前は守りたいから戦うんだと俺に言ったな、ならその気持ちを乗り越えて自分の力にしてみせろ」
それが出来ないうちは、自分だけではなく味方も巻き込んで自滅するだけだ、前回の戦いでは危なかっただろうとシンに言い聞かせた。
そこまで言われて、自分が前回暴走してミネルバとルナマリアを危険に晒した事を思い出したシンも渋々にだが引き下がった。
態度から内心納得していないのは見て取れるが、了解した以上は命令に従うだろう。
「アスラン、俺はジェイダーを相手にするから、フリーダムは君に任せる」
Jの相手は凱以外には無理だろう、またJも凱と闘おうと動くはずだ。そうなると自然フリーダムの相手はアスランになる。
Jが居なければ自分が、またシンが感情的になり過ぎないなら任せたい所だが、此処はアークエンジェルに対して複雑な感情を持つアスランが、どういう結論を出すにせよ任せた方が良いだろうと判断する。
「これで決まりだ、アスランもそれで良いな。俺とアスランはアークエンジェル側の対応に向かうから、お前達三人の連携が要だぞ」
最後にアスランが、明日ミネルバはジブラルタルに向けて出港する。と締めて解散となった。

オーブ軍空母タケミカズチのブリッジでユウナより全権を任されたトダカ一佐がネオと次の作戦に関して話し合っていた。ネオは地図の一点を指し示し、概要を説明する。
「明日ミネルバはこのルートでジブラルタルへ向かう、で作戦はいたって単純、網を張って待ち構えると、なにか質問は」
「その情報は確実なのですかな、それと連合の艦艇が貴君の艦一隻しか参加しない理由をお伺いしたい」
「情報に関しては、信用してもらうしか無いですな。それと連合側の艦艇の出撃に関しては申し訳ないとしか言いようがありません。なにしろ戦力の引き上げに関しては私の及ばない話でして」
ファントムペインは連合軍の軍籍は持つものの実体はロゴスの盟主ロード・ジブリールの私兵である。
散々自分の邪魔をしてくれたミネルバを落とすのはジブリールの私怨に近い、確かに大西洋連合に強い影響力を持つジブリールではあったが、正規軍はミネルバ一隻にばかり構っていられる訳ではない。
よって連合軍の艦艇はスエズへ引き上げとなり、ネオ達ファントムペインのみの参戦となった次第であるが、そんな事情を説明する理由など無い。
オーブ軍は完全に貧乏くじを引かされた形だが、そんな事はおくびにも出さずにネオは話を続ける。
「なに、これでザフト最強とも言われるミネルバを討てば、オーブの力を世界に示す事が出来るでしょうし、我々も面目が立ちます。
ああ、それと今度、あの妙な船が出てきても大丈夫でしょうね、ユウナ様は代表と名乗る人物も偽者と仰っていましたし」
ネオの言う妙な船とはアークエンジェルの事である、あの船にカガリを渡したトダカとしては、討ちたくなど無い。しかし正規の命令を受けて此処に居る以上は従うしかない。
「分かっています、アークエンジェルは敵艦として対処するよう代表代行からも言われています」
「なら結構」
苦々しげに答えるトダカをネオは冷めた目で見つめていた。

38:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/18 11:06:03
地中海をジブラルタルに向けて航行中の、ミネルバのブリッジに敵艦発見の声が上がる。
「前方に艦影、空母1護衛艦3、これはオーブ軍です。連合の艦は確認できません」
前回のマルマラ海では、合同で攻めて来た。なら今回も同様のはず、数が少ないのは此方を包囲しようとしていると判断したタリアは前方の艦隊を中央突破して離脱すると決める。
「オーブ軍だけという事は無いはずよ、索敵は厳にして。本艦は包囲される前に前方の艦隊を突破します。コンディションレッド発令、MS隊発進用意」
オーブ艦より出撃したMS隊はまるで道を開けるかの様に左右に別れる、この動きを包囲行動とみたタリアは開いた中央に吶喊するよう指示をだす。
当然、正面突破を図るミネルバに対して、オーブ艦隊から艦砲射撃が加えられるが、それ程の数では無い、余裕を以って迎撃すると破壊した榴弾から散弾状に鍛造弾のシャワーがミネルバに降り注ぐ。
最大船速で航行していたのが幸いして、艦中央部から後部の上面装甲が第二層まで貫通するに留まり、兵装には致命的なダメージは無い。
そこに襲い掛かるオーブ軍のMVF-M11C《ムラサメ》とそれを迎撃に出る凱達。今回はシン達を先行させて凱はミネルバの防御に回る。
先程の艦砲攻撃をもう一度して来られても、ガオセイバーのリフレクトシェードでミネルバを守る為である。
しかしこれではガオセイバーの攻撃力がスポイルされてしまう為に、正面突破を図るには決め手に欠ける。
また敵MSの総数では前回のほうが数は多かったのだが、今度は此方側に味方がいないので、相対的に相手にする数が増えている。
「くそっ、こうも数が多いと」
シン達が撃ち漏らしたムラサメをフェイズシフトマグナムで落としながら毒づく凱。
戦況は一進一退といった所だが、アスランはなんとか武装だけ破壊しようとしている様で、動きに精彩が無い。そこに新たに敵出現の報が入る。
「9時方向よりオーブ護衛艦3、2時方向よりムラサメ9!」
左方向から艦砲射撃を加えてくる艦隊に向いていたガオセイバーの隙を縫って右方向から迫るムラサメ部隊。
粗方は迎撃されたが、最後に残った1機がミネルバのブリッジにビームライフルを突きつけた。このタイミングでは迎撃が間に合わない、とブリッジに恐怖が走った、その瞬間。
「プラズマソード!」
叫びと共に紫電が走り、ムラサメの右腕が破壊される。またシン達が相手取っていた周囲のムラサメも上空より飛来したビームで武装と四肢を破壊されて落ちていく。
全員の視線が上空に移ると、そこに居たのはアークエンジェルとフリーダム、そしてジェイダーであった。
アークエンジェル一行の登場で、戦闘は更に混乱の度合いを増して行く。
アークエンジェルのカタパルトが開くと、ストライクルージュが飛び出し、オーブ連合首長国代表カガリ・ユラ・アスハを名乗り、先日と同様の勧告を繰り返す。
「オーブ軍、直ちに軍を引け、オーブはこんな戦いをしてはいけない。これでは何も守れはしない、連合の言いなりになるな。オーブの理念を思い出せ、それ無くして何の為の軍か!」

39:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/18 11:07:00
戦場において、理念など何の役にも立ちはしない。それに拘り続けるカガリの場違いな演説にシンの不快感が増す。
「なんであんたは、そんな奇麗事をいつまでも!」
既にアークエンジェルに関しては敵として対処すると決まっている以上、空中に止まっているルージュに向けて、ブラストシルエットのGMF39《4連装ミサイルランチャー》を撃つインパルス。
攻撃されるとは思っていなかったのだろう、カガリが迫るミサイルを前に棒立ちで何も出来ずにいると、その前にキラのフリーダムが割って入り、ハイマットフルバーストで迎撃する。
そのままルージュを狙ったインパルスに、ビームサーベルで切りかかるキラ。咄嗟にスラスターの推力をカットして海面に落下して攻撃をかわすシン。
「お前もふざけるなぁ!」
自信を持って繰り出した一撃をかわされて驚くキラに、すかさず下方からMA-M80《デファイアントビームジャベリン》を突き出すが、この攻撃はフリーダムが上空に逃れた為に空振りに終わる。
ブリーフィングでは、フリーダムの相手はアスランがする筈だったが向こうから掛かってくるなら関係ない。
M2000F《ケルベロス》高エネルギー長射程ビーム砲をフリーダムに向ける、其処にアスランのセイバーが飛び込んできた。これで事前の作戦通りの配置になった。
しかしフリーダムは自分が落とすと思い、向きを変えた瞬間にレイのザクが被弾するのが視界の端に映った。
何とか致命傷を避けた様だが、左腕が無くなっている。ルナマリアのザクもシンがルージュやフリーダムを相手にしていた間に攻め込まれていた。
チームを組んでいた二人が、次々と飛来するムラサメに苦戦している状況を見て、シンは凱に言われた事を思い出した。
「くそっ、凱さんに言われただろ。俺の勝手が仲間を危険に晒すって」
頭を振って、今自分のするべき事を自覚すると、窮地にいる仲間を助ける為に向かって行った。

数に勝るオーブ軍はミネルバに攻撃を集中し始めるが、ガオセイバーが陣取っている為に、有効的な攻撃が加えられずにいた。
しかも、現在は何故かジェイダーまでミネルバの防衛に当たっている。雑魚など失せろと言わんばかりにムラサメを破壊して回るジェイダーをみて、オーブ軍のババ一尉は一つの覚悟を決める。
このままではミネルバを落とすのは不可能、これを打破する為には真に命を捨てねば成らぬ、我に続けと吶喊するババの前にルージュが現れて戦闘停止を求めてくる。
「止めろ、ミネルバを討つ理由がオーブの何処にある。討ってはならない、自身の敵では無いものをオーブは討ってはならない」
「そこを退け、これは命令なのだ。今のわが国の指導者ユウナ・ロマ・セイランの、ならばそれが国の意思であり、我らオーブの軍人はそれに従うのが務め。その道如何に違おうとも難くとも、我らそれだけは守らねばならん。お分かりか!」
呼びかけに答えるババの気迫に、何も言えなくなるカガリ。
「お下がり下さい。国を出た時より我ら此処が死に場所と当に覚悟は出来ております。下がらぬというなら力を持って排除させていただく」
動かないルージュの腕を取り、投げ飛ばすババのムラサメ。投げられたカガリは体勢を整えるので精一杯である。ようやく正面を向いた時には、すでに遅かった。
「我らの涙と意地、特とご覧あれ!」
特攻を仕掛けるババ率いるムラサメ部隊9機、凱とJがそれぞれ4機を止めるが最後に残ったババのムラサメがミネルバの中央甲板に到達する。
爆炎と共に砕け散るムラサメと、炎上するミネルバを見たカガリは自分の言葉が通じない不甲斐なさに泣き叫んだ。

40:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/18 11:08:20
フリーダムと対峙したアスランはキラに向かって呼びかける。
「止めろ、キラ!」
「アスラン」
今回はセイバーに乗っているのが、アスランだと分かっている為キラも返事をする。
「こんな事は止めろと、オーブへ戻れと言ったはずだ」
「下がれキラ、お前の力はただ戦場を混乱させるだけだ」
キラに話しかけながら、周囲のムラサメを撃墜するアスランと同様にアスランと会話を続けながらムラサメの戦闘力を奪っていくキラ。
「アスラン、僕たちはただ戦って欲しくないんだ」
「仕掛けてきているのは連合だ、じゃあお前はミネルバに沈めというのか!」
「どうして君は」
「だから戻れと言った、討ちたくないと言いながら、何なんだお前は!」
「解るけど、君の言うことも解るけど。でもカガリは今泣いているんだ。こんな事になるのが嫌で今泣いているんだぞ」
二人の話は平行線を辿るだけだ、しかしカガリが泣いていると言われ動揺を表すアスラン。
「なぜ君はそれが解らない。この戦闘もこの犠牲も仕方が無い事だって、全てオーブとカガリのせいだって、そう言って君は討つのか。今カガリが守ろうとしているものを。なら僕は君を討つ」
キラはここでSEEDを発動させて、セイバーに襲い掛かった。いきなりフリーダムから攻撃されて、四肢と頭を破壊されてしまうセイバー。
「キラァー!」
アスランの叫びもむなしくセイバーは海中へ没し、フリーダムは次の目標へ向かった。

ミネルバが爆発炎上するのを見て、動揺したルナマリアが敵の攻撃を避けられずにSFSを撃墜されてしまう。咄嗟に空中に跳びあがったものの後は自由落下で落ちるだけのザクに攻撃が集中する。
「きゃあああっ!」
この攻撃でルナマリアのザクは頭部から胸部を大破させ、左腕と右足を失ってしまう。
「ルナ!」
落下するザクを見たシンのSEEDが発動し、ザクに攻撃を加えていたムラサメをケルベロスでなぎ払い、ザクを海面ギリギリで回収する。
シンはルナマリアへ呼びかけるが応答は無い。そこにレイから通信が入る。
「シン、一旦引くぞ。このままでは俺達もやられる」
「レイ、ルナを頼む。俺はソードシルエットに換装して、あいつ等全艦叩き斬ってやる!」
シンは近寄ってきたレイのSFSにルナマリアのザクを乗せ、メイリンにソードシルエットを要求した。

その頃、被害著しいオーブ軍の状況を見たタケミカズチのブリッジでは、トダカが前に出るように指示を下した。通常なら空母が前に出るなど常軌を逸した行動だ。
ブリッジにトダカの声が響き渡る。
「総員退艦、ミネルバを落とせという命令は最後まで私が守る、艦及び将兵を失った責任も全て私が、これでオーブの勇猛も世界中に轟くことだろう」
これでブリッジにいる人間全てが、トダカが特攻をするつもりだと気が付いた。アマギが自分も残ると言い出すが、トダカに殴られて諭される。
「だめだ、これまでの責めは私が負う、貴様はこの後だ。すでに無い命と思うのなら思いを同じくする者を集めてアークエンジェルへ行け。それが何時かきっと道を開く、頼む私と今日無念に散った者達の為にも」
この説得でアマギは現在稼動中のムラサメ全機に戦闘停止を命じると、アークエンジェルへ投降せよと発令しタケミカズチを退艦した。
波を切ってミネルバへ進むタケミカズチに、トダカの行動を察したカガリが止めようとするが、最早止まらない。
しかし、ソードシルエットに換装したシンのインパルスがその行く手を遮った。オーブ沖で連合の艦隊を相手にした時と同様に、オーブの護衛艦のブリッジを破壊したシンがタケミカズチの甲板に着地する。
「みんなをやらせるかぁぁー!」
叫びとともにブリッジにMMI-710《エクスカリバー》レーザー対艦刀を叩きつける。この一撃を持ってオーブ艦隊は全滅、クレタ島沖会戦は終結した。

41:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/18 11:09:39
戦場から一歩引いた位置に居るネオ達ファントムペイン。彼らのこの戦闘に対する役割は軍監である為、戦闘には参加していなかった。戦艦の艦橋から戦況を見ていたネオが呟く。
「良くやったと言いたいが、目標を落とせなきゃ話にならんだろ。それにバンザイアタックなんぞ自己満足も良いとこだ」
武人としては玉砕もいいだろうが、軍人としては下だったなとネオは評価を下す。
「これなら、あのお坊ちゃまの方が良い戦いをしたかもな。さてオーブ軍も全滅したし、俺達は引き上げだ」
生き残ったムラサメは何故かザフトでは無く、アークエンジェルに投降した。この事実を使えばオーブから更に戦力を引き出せるかもと思案しながら、甲板上にスタンバイさせていたスティングとアウルを艦内に呼び戻して、戦場を離脱した。

全ての戦闘が一応の終結を見せ、アークエンジェルがこの海域を離脱しようとした頃、ガオセイバーとジェイダーが対峙していた。
そこへキラがやって来てJに離脱するように言うが、ジェイダーは動かない。
「キラか、その話は聞けんな。私は私の為にこの男と戦わねばならん」
その申し出を受けて立つ凱。
「ああ、此処でこの間の決着を付けるぞ。J!」
「望む所だ。凱!」
凱はシンとミネルバに、Jはキラとアークエンジェルに決して手出ししないように告げると遂に激突した。
まず先手を取ったのは凱だ、右拳をジェイダーに向けて撃ち込む。
「フェイズシフト・マグナームゥ!」
「プラズマソードォ!」
これをJは左手のプラズマソードで切り払うと同時に、右のプラズマソードで襲い掛かる。
「なんのおっ!」
この一撃を左手に持っていた、ビームサーベルで受け止めるガオセイバー。動きの止まったジェイダーにすかさず次の攻撃を叩き込む。
「ドリルニー!」
下から突き上げるガオセイバーのドリルニーを紙一重でかわすジェイダー。そのまま距離を取った所で足の砲塔を向けてガオセイバーに砲撃を加える。
「反中間子砲、発射ぁ!」
「リフレクト・シェードォ!」
膝蹴りで体勢が不安定だったところに撃ちこまれた反中間子砲の一撃を、リフレクト・シェードで受け止めて反射するガオセイバー。
だが反射したエネルギーが巨大だった為、あさっての方向に跳んでしまい、巨大な水柱を上げるに留まる。
ここで再び距離を置く、ガオセイバーとジェイダー。
「フ、フフフフ」
「ハ、ハハハハ」
「「ワハハハハハ」」
凱とJ二人の笑い声が天地に木霊する。
「どうやら小手先の攻撃は通用しないようだな」
「ああ、お互いにな」
「ならば」
「我が最強の一撃で」
「「勝負をつける!!」」
互いに次の一撃が今のお互いに出せる最強の一撃である。否応無しに緊張が高まってゆく。その緊張が極限まで高まったとき、両者は同時に動いていた。
ガオセイバーは背中のアムフォルタスに両手をまわす、すると銃床部分にグリップが出現する。
そのグリップを握ってアムフォルタスを引き抜いて前方に突き出すと、砲身が展開し銃身同士の間にプラズマ光球が出現し巨大化していく。
「いくぞぉっ! プゥラズゥマァー、ヘルアンドヘヴン!!」
掛け声ともに吶喊するガオセイバー
対するジェイダーは両手にプラズマソードを生み出して、それを合掌させて一つにすると、体全体を回転させ一本の光の矢となって正面から迎え撃つ。
「応っ! スクリューパルパライザー!!」
中間地点で激突するガオセイバーとジェイダー。
「はああああぁ!」
「ぬううううぅ!」
「「でりゃああああぁ!!」」

42:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/18 11:11:58
己が最高の一撃を叩き込もうと双方ともに気合の声を上げる、しかしてこの勝負に競り勝ったのはジェイダーであった。
「プラズマソード二刀流で攻撃力は2倍! さらに2倍の速度と3倍の回転で我が一撃の威力は通常の12倍だ!」
光の矢と化したジェイダーがガオセイバーのプラズマ光球を粉砕し、そのままアムフォルタスを、両腕を、そして胸から上を破壊する。
「うわあぁぁっ!」
ギリギリでコクピットの上部を通過した為に凱には目立った傷は無い、しかし機体を破壊された時に感じるダメージに悲鳴を上げる。
また同時に剥き出しになったコクピットから空中へ投げ出されてしまった。
「しまったぁっ!」
如何に超人エヴォリュダーといえども空は飛べない、この高さから海に叩きつけられれば凱とて無事ではすまない。
グングンと迫る海面、だが落下する凱を目指して走ってくる一つの影があった。

その決戦をモニターしていたミネルバのブリッジに、オペレーターのメイリンから状況を知らせる声が響き渡る。
「ガオセイバー大破、同時に4時方向からunknown接近! こ、これは?」
接近するunknownの映像を見たメイリンが思わず口を閉ざしてしまう、それにタリアは何事が起こったのか報告するよう怒鳴る。
「す、済みません。unknownはパ、パトカーです。パトカーが海面上を走ってきます!」
そんな馬鹿な話があるものか、そう思うブリッジクルーの目に波をジャンプ台にして海面から大空へ飛び立つパトカーの姿が正面モニターに大写しにされていた。

「システムチェーンジ! ボルフォーッグ」
海上を疾走してきたGBR-4ボルフォッグはジャンプ一番システムチェンジをしてビークルモードからロボット形態へ変形すると、落下中の凱を目掛けて手錠を飛ばす。
「ジェットワッパー!」
ボルフォッグが飛ばしたジェットワッパーに凱が摑まるのを確認すると手元に引き寄せる、引き寄せられた凱はそのまま体勢を立て直し、ボルフォッグの肩に着地して礼を言う。
「よく来てくれた。助かったぜ、ボルフォッグ」
「いえ、隊長もご無事で何よりです」
そこで辺りを見渡すとジェイダーの姿が見当たらない。
「ボルフォッグ、ジェイダーは何処へ行ったかわかるか?」
「ハイ、ここから南西に向かった小島に着地したようです」
ならば其処へ向かってくれという凱に対して、ボルフォッグは
「いえ、あそこには彼女が向かいました。お任せしたほうがよろしいかと」
その返答に凱はそういえば、あいつの姿が見えないのはそういう理由かと得心しミネルバに降ろしてくれるように改めて頼んだ。

43:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/18 11:13:53
そのころジェイダーは近くの小島に着地していた。なんとか競り勝ったがジェイダー自体勝利の為にかなりの無茶をした。
その証拠に両腕はひび割れ動かない、更にかなりのエネルギーを消耗した為ジェイダーの起動にも事欠く有様だ。
このままでの戦闘継続は困難と見たJはフュージョンを解除し地面へ降りる、フュージョンを解除した事で疲労が体に襲い掛かり、方膝を付き荒い息を吐くJ。
そこへ前の茂みから赤い髪にピンクのコートを着た女が現れてJに声を掛かる。
「ようやく見つけたよJ」
自分の名前を呼ぶという事は知り合いなのかも知れないが、今のJには覚えが無い。
「何者だ女?」
誰何するJの声には何も答えなかったが、明らかにこめかみに青筋が立っているのが判る。
「はあっ、凱から聞いていたけど、本当に忘れてるのね。いいわ、その鳥頭打ん殴って思い出させてあげる」
盛大に溜息を吐くとJを睨みつける赤毛の女、その眼差しは何処か先程戦った好敵手を思い起こさせる。
「イクイーップ!」
掛け声とともに着ていたコートが放射状に広がり鼻に架けていた丸メガネがモノクル状のゴーグルに変化する。
それだけではない、明らかに雰囲気が変わった。先程までは雌鹿のような躍動感を持っていたが現在は獲物を前にした雌獅子のそれだ。
「ハイパーモードォ!」
更に声を上げて尋常ならざる速度で突っ込んでくる女を前にしてJは反応が遅れた、常ならば如何に速い動きであってもJを捉えることは困難だったろう。
しかし、凱と戦った直後で疲労し、また見知らぬ女という不確定要素がいきなりハイパーモードで襲い掛かってくるという事態に驚愕したJは僅かな隙を見せてしまう。
この隙を見逃すようなルネではない、右腕に宿るGストーンを輝かせJの頭に全体重を乗せたチョッピングライトを叩き込む。
「はああああぁーっ!」
頭を覆うバイザーが砕け散り後ろへと吹き飛ぶJだが、流石に生粋の戦士である。すぐさま態勢を立て直して両足で着地する。
「もう一発ゥ!」
そこへ勢いのまま再び右拳を振りかぶったルネが繰り出した右ストレートを左掌で受け止め、握りこむJ。
「くっ」
痛みに声を上げるルネにJが声を掛ける。
「もう少しましな方法は思いつかなかったのか? ルネ」
この言葉を聞いたルネは不敵に笑って答える。
「あんたが惚けてるのが悪いのよ」
握り締められたルネの右腕のGストーンと握っているJのJジュエルが共に輝きを放っていた。

君達に最新情報を公開しよう
クレタ島沖会戦に辛うじて生き残ったミネルバ隊
そして凱とルネによって、遂に記憶を取り戻したJ
その喜びも束の間に、世界は新たな流れを迎えようとしていた
次回 勇者王ガオガイガー DESTINY
第13話 新たなる潮流 にFINAL FUSION承認
これが勝利の鍵だ 《大河幸太郎》

44:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/18 11:23:55
ども小話です
キン○マンのパクリじゃなくてリスペクトなんだ
良し、言い訳完了
ネタが無い時に小ネタに走るのは勘弁して下さい
次はまったり進行ですかね
ではまた

45:通常の名無しさんの3倍
09/07/18 13:04:15
GJ!
ネタが無いときではなく、ちょいちょい小ネタに走っておいて、尚且つやりすぎなければ
文句も出ないんじゃないかなーと。

46:通常の名無しさんの3倍
09/07/18 15:42:42
GJ!
勇者なら勢いだけの肉論理も実践できると信じる
シンもアズランも凱の影響を受けて親しみがもてます
後は……ステラに救いを……

47:通常の名無しさんの3倍
09/07/18 16:11:20
GJ!
勇者なら勢いだけの肉論理も実践できると信じる
シンもアズランも凱の影響を受けて親しみがもてます
後は……ステラに救いを……

48:一尉
09/07/18 16:32:43
良くやったな、凱旦那、うれしいよ。パトカーが海面に走っているとは面白いよ。小話君。

49:通常の名無しさんの3倍
09/07/18 22:27:00
ルネーー! よっしゃーー!

50:通常の名無しさんの3倍
09/07/18 23:30:31
おかしいな…どうしちゃったのかな。
頑張ってるのはわかるけど、ここは原作をなぞるスレじゃないんだよ?
最初の時だけ、勇者が介入するフリだけして、ただ原作なぞってるだけなら…クロスする意味、ないじゃない。
ちゃんとさ、クロスSS読ませてよ。

私の言ってること…私の感想…そんなに間違ってる?

51:通常の名無しさんの3倍
09/07/18 23:58:19
原作と乖離してなおかつ面白いssを書ける人なんて中々いないぜ
大半が原作を変えられる力を持っているのになぜか原作どおりに進むテンプレssと乖離はしたのはいいけどつまらないssだけだ
まだ完結すらしてないわけだしこれからだよ、これから

52:通常の名無しさんの3倍
09/07/19 01:39:00
>>50
「J記憶回復⇒ラクシズ離反フラグにムカツク」
まで読んだ。

そう間違ってないだろ?

53:通常の名無しさんの3倍
09/07/19 01:41:22
まぁイケダ(イケヤだっけ?・ゴウ・ニシザワ
のどれか1人くらい死んでてもいいとは思うがな

54:50
09/07/19 06:27:29
>>52
なんでそうなるんだw
おかしなフィルタ付いてるぞあんたの目

55:通常の名無しさんの3倍
09/07/19 09:06:12
まあ、さっさと全人類を襲う脅威が出てこないかなーと思ってる
人間同士のつまらない小競り合いよりも、化物相手に全力で戦う展開が待ち遠しい

56:一尉
09/07/19 11:58:41
海面を走るパトカーは面白い発展ならいいです。

57:通常の名無しさんの3倍
09/07/21 21:49:47
警告:いつもの屑が暴れています

58:一尉
09/07/22 17:39:59
トダカ一佐を助ける。

59:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/23 20:54:39
勇者王ガオガイガー DESTINY
第13話 新たなる潮流
クレタ島沖会戦が集結し、一息吐いたミネルバ艦長タリア・グラディスの下に凱から着艦許可を求める通信が入った。モニターに目を移すと見慣れない紫色のMSらしき機体の肩に乗った凱の姿が映っていた。
許可を出して無事な左舷デッキに誘導、着艦を確認する。ガオセイバーは大破したようだが、凱本人は無事のようだ。
デッキに降り立った凱とボルフォッグは、ミネルバの惨状に目を覆う。
「だいぶやられたな」
「救援が遅くなって、申し訳ありません」
凱の感想にボルフォッグが答えるが、勇者ロボ達はロボット三原則によって人間(ギムレットに代表されるような重犯罪者に対する例外はある)を攻撃出来ない。
それが分かっているので気にするなと伝え、ルネに連絡を取るとJと合流できたと言うのでソードシルエットからフォースシルエットに換装し直して、上空で警戒しているシンに向かって迎えに行ってくれるように頼んだ。
「シン、あっちの小島に俺の仲間が二人居る。行ってジェイダーと一緒に回収してきてくれ」
「え、でもあそこに居るのはさっき凱さんと戦った奴ですよね?」
シンの疑問に対して、話がついたから大丈夫だと答えた。

Jはルネと共に小島にいた。ルネが凱と連絡を取っているのを待っていると、そこへキラのフリーダムがやって来る。Jと隣に立つ見知らぬ女性を発見したキラは声を掛ける。
「Jさん、無事ですか?」
「キラか、私は無事だ。お前はアークエンジェルへ戻れ、それと今まで世話になったと皆に伝えてくれ」
Jから別れを言い出されたキラが戸惑うが、Jは記憶が戻った事と隣にいるのは自分の知り合いだという事を告げ、彼女と行動を共にする旨を伝える。
「なら、僕と一緒にアークエンジェルへ行きましょう。そちらの女の人も歓迎します」
キラはそう言うが、ルネはやる事があるので合流する気は無いと告げ、Jもルネと共に行くので此処で別れる事にすると言う。
突然の別れに戸惑うキラに対して、Jは自分が感じていた違和感に対してキラへ忠告を送る。
「キラ、友人として一つ忠告をしておこう。お前達の自由と平和への思いは正しい、だが自分達だけが正しいと思うな」
Jの言葉にキラは怪訝な表情を浮かべ、どういう意味なのか尋ねようとするが、此方にインパルスが向かって来ているのを確認すると、Jの言葉に従って離脱した。

小島の上空に居たフリーダムは、インパルスが近寄ると急速離脱していった。
シンとしては追いかけたい所だが、自分のやるべき事を自覚すると膝を着いているジェイダーの脇に着地する。
モニター越しに外をみれば、尖がり頭で鎧を着た男とピンクのコートの赤い髪の女の二人が居る。
「凱さんの仲間の方ですか? 迎えに来ました」
外部スピーカーで話しかけると女の方が手を振ってきたので、コクピットを開けて話しかける。
「済みません、コクピットが狭いんで男性の方、手に乗ってもらって良いですか」
「それには及ばん。ルネは私が連れて行くから、ジェイダーを運んでくれればいい」
男の方がそう言うと、ルネと呼ばれた女の脇に手を回すと襟巻がウイング状に変形し、空高く飛び上がり、海上のミネルバへ向かって飛んでいった。
「…嘘」
しばし呆然とするシンだが、凱の仲間なら空ぐらい飛ぶなと考え直して、ジェイダーの回収を始めた。

60:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/23 20:55:43
ミネルバの甲板で凱が待っていると、Jがルネを脇に抱えて飛んできた。危なげ無く着地して凱と向き合うJ。
「記憶は戻ったようだな」
「おかげさまでな」
その言葉にちらりとルネを見る凱とJだが、当のルネは涼しい顔だ。
「まず、この船の艦長に会ってくれ、その後は今迄の事とこれからの事を話そう」
「良いだろう、今はジェイダーも動けんしな」
「ボルフォッグ、お前はこれから如何する」
「私は先程、新たな任務を受けましたので、そちらへ向かいます」
これはボルフォッグだ、詳細は明かせないと言うので任務に関しては聞かない事にする。
「では私はこれで、システムチェンジ。ウルテクエンジン全開!」
そう言い残して、ボルフォッグはロボットからパトカーに姿を変えると南西に向かって海上を走っていった。

展望ブリッジが戦闘で破壊された為、戦闘用のブリッジに居たタリアに凱から会ってもらいたい人間がいる、ついては艦内に入れても構わないかと通信があった。
流石にブリッジには入れられないので、会議室に入れて良いと許可を出し、後事を副長のアーサー・トラインに任せてタリアはその場へと向かった。
会議室に着いたタリアを待っていたのは凱の他に鎧を着た男と赤い髪の女が居た。この二人が、凱が会って欲しいといった人物であるらしい。女の方はともかく、男の格好はかなり胡散臭い。
「紹介したい人が居るという事だけど、この二人の事ね。どういった関係?」
尋ねるタリアに対して、ルネが進み出る。
「初めまして、私はフランス対特殊犯罪組織「シャッセール」所属のエージェントで名前はルネ・カーディフ・獅子王です」
獅子王という名前に凱を見ると、彼女は従兄弟に当たると説明してくれた。その後もう一人男の方も名乗りを上げる。
「私の名はソルダートJ。赤の星の戦士だ」
それだけを言い、後はだんまりである。
ルネとJを紹介されたタリアは、凱に説明を求める。ルネとはディオキアで再会したとの事で一時ミネルバを離れて議長に会いに行ったのはそれが理由の一つだと説明された。
また、Jは先程凱と戦ったジェイダーのパイロットだそうだ。何故仲間で戦う事になったのか尋ねると何でも記憶を失くしていたらしい。
お互いに今迄の事を大雑把に説明し、説明されたあとで、これから如何するのかとタリアが尋ねる。
「ミネルバはナポリに寄港して応急処置を施した後、ジブラルタルへ向かいます。あなた方は如何されますか」
「あたしとJは、ジェイダーの自己修復が終われば、宇宙に上がるわ」
ジェイダーが直れば単独で大気圏を離脱出来る。ただ、今の状態では動けないので、それまでミネルバに乗せてほしいと凱が言う。
Jはこの件に関しては何も言わない、完全に凱とルネに丸投げである。
Jに対しては色々と複雑な感情があるが、凱の仲間だそうだし行動に制限を掛けて良いならと許可を出す。
「俺も一旦GGGに戻ろうと思う。構わないか?」
凱も二人と一緒に宇宙に上がると言い出すとは思っていなかったタリアが驚くが、凱は元々イレギュラーである上にフェイスの資格も有する以上、行動を制限する理由にはならない。
これでジェイダーの修復が完了すれば、凱とこの二人がミネルバを離れる事になった。

61:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/23 20:58:04
帰艦したシンは怪我をしているルナマリアの所にレイとメイリンを連れ立って見舞いに訪れた。
「お疲れー、ホント今回は大変だったわね」
ベッドから起き上がり、挨拶をするルナマリアは右腕を吊っており、頭に包帯を巻いている痛々しい姿だ。
「怪我は大丈夫なのか、ルナマリア」
レイがルナマリアの体を労わるが、熱が出たけどもう大丈夫だと言う事だ。
「お姉ちゃんが落とされたって聞いて、すごく心配したんだよ」
「その割に今まで来なかったじゃない」
心配するメイリンに対して意地の悪い事を言うが、顔は笑っている。メイリンも色々と忙しいのは解っているので他愛無いじゃれあいだ。
喋っているルナと二人の会話が途切れた時、シンが声を出した。
「ゴメン、俺がもっとしっかりしてればこんな事に成らなかったのに」
謝るシンに対して、ルナマリアは平手で答える。
「頭冷えた? 確かにあんたが暴走したのは頭に来たけど、怪我したのを人にせいになんかしないわよ」
自分も戦場に出ている以上、不測の事態は常にあるし、当然覚悟はある。今回の怪我は自分の未熟が招いた結果だ。
「だからシンが責任を感じる必要は無いし、お互い生き残ったのを喜ぼうよ」
ルナマリアの態度に、シンは一寸困った顔をした後でレイとメイリンの顔を見ると、二人は無言で頷いた。
「じゃあ、ありがとう」
行き成り、礼を言い出したシンに他の三人は顔を見合わせて、なんで礼を言い出すのかと笑い出した。

イスタンブールにある、マルマライスタンブールホテルの一室でユウナ・ロマ・セイランは人を待っていた。
もっとも呼び出したのは向こうの方だが、場所と時間を指定したのはユウナである。
ルームサービスでノンアルコールのシャンパンを頼み、その人物の到着を待つ。
程無くして、ドアがノックされ、来客が告げられた。直ぐに扉が開き、二人の人物が部屋へ入ってくる。
一人はユウナを呼び出した人物、もう一人は知らない顔だが、あの書簡に書かれていた事に関係する人物だろうと当たりをつける。ならDSSD関連の人間かもしれない。
「ようこそ、いらっしゃいました。こんな機会を設けて頂いて感謝しています。プラント最高評議会議長ギルバート・ディランダル殿」
人当たりの良い笑顔を浮かべて、歓迎を表すユウナに対して入室してきた人物のデュランダル議長も右手を差し出す。
「此方こそ、突然の会談要求を受諾していただいて感謝しております。オーブ連合首長国代表ユウナ・ロマ・セイラン殿」
握手を交わした後、議長は脇に立っている人物をユウナに紹介する。紹介された人物は金の髪を逆立てた大柄な男性である。
同じように右手を差し出し深いバリトンの声で挨拶をする。
「只今、ご紹介に預かりました。ガッツィー・ギャラクシー・ガード(Gutsy Galaxy Guard)の長官を務めております、大河幸太郎と申します。ユウナ代表にお会いできて光栄です」
こうして三者会談が秘密裏に開催された。

62:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/23 21:00:08
まずはオーブ、プラントの戦闘状態を如何にするかの問題が話し合われた、この事項に関しては大河に口を出す権利は無い。
ただ合意が成されれば、第三者としてそれを見届ける事になるし、結果次第では大河が二人に持ってきた事案に対してアプローチを変えねば成らない。
「我々としてはプラントと事を構えたくは無い、しかし今現在大西洋連合と同盟関係にあるオーブとしては、勝手に終戦という訳にも行きません」
ユウナの先制に、デュランダルは慌てることも無い。
「それは当然でしょう、しかしオーブは立派な主権国家です。なら我らプラントとも同盟を結ぶ事も可能なのではありませんか」
「確かに可能です、しかしそれでは連合が納得しません」
ユウナとしてはオーブが生き残るには、こうして対立する両国家に対して、積極的中立の立場を取る事でオーブの価値を高めてゆく事が必要だと考えていた。
そのためにも軽々に承諾する訳には行かない。
「無論、それも理解しているつもりです。しかしこう言っては何ですが、オーブはクレタ沖で艦隊を失っている。充分に連合に対する義理は果されたのではないですか」
「なるほど、確かにその通りです。ですが艦隊の犠牲を持って、プラントと講和をしたとあっては、今度は国民が納得しません。なぜなら」
「そうですね、その艦隊を撃破したのが、他ならぬ我がザフトのミネルバですからね」
実際のところオーブは連合首長国の名が示すとおり、代表首長が国家運営を担っている為国民には選挙権すらない完全な独裁国家だ。
ユウナが言う国民云々は方便に過ぎず、議長もそれは承知している。
「では、プラントから停戦に向けての賠償として、採掘用の資源衛星1基を譲渡致しましょう」
オーブは資源採掘コロニーのヘリオポリスを前の大戦で失っている為、これは破格の条件だ。
「大判振る舞いですね、そうまでして終戦を急がれるとは、プラントも危ないという事ですかな」
であれば、このまま連合と一緒にプラントを潰す方が得策かと、勘定を巡らせるユウナに対して、横に居た大河が声を掛ける。
「失礼ながら代表、もはやそんな場合では無いのです。両国の関係を進める為にも、一先ず私の話を聞いていただきたい」
ユウナは確かに政治家の家に生まれて育ってきた。幼い頃からの教育と接してきた大人達からある程度の胆力は備えている。
それでも本物の修羅場を潜ってきた大河の静かな迫力に思わず、居住まいを正していた。

話は遡る。それは三重連太陽系より大河達が脱出して、この世界の木星軌道上で気が付いた時であった。全員の無事を確認するが、凱とJの反応が見つからない。
「どうする、長官?」
GGG参謀火麻激が長官である大河に、これからの方針を尋ねる。少し悩んで、大河は雷牙博士に尋ねる。
「博士、凱達が何処にいるか見当が付きますか?」
尋ねられた獅子王雷牙博士は首を振る。
「皆目見当も付かん。ブラックホールもホワイトホールも解析が終っとる訳では無いしの」
ただ、あのタイミングなら確実に脱出は出来ているはずだと続ける。見つかるまで捜索を続けたいが、Jアークはともかくや脱出艇のクシナダは燃料と空気が持たない。
「ギリギリまで捜索を続けてくれたまえ、その後探知を続けながら地球へと帰路を取る」
そう決定したGGGは木星周辺の探索を続けるが、そこで猿頭寺耕助がある反応を見つけた。
反応発見に沸く一同だが、次に出た言葉に顔色を失くす。
「違います、ガオガイガーでもジェイダーでも有りません。この反応は間違い無く!…」
「間違いないのだね、猿頭寺君」
何かの間違いであって欲しい、しかしその願いは叶えられない。
「はい、木星重力圏の奥深くで確認されました。生きています」
その報告に大河は決断を下した。

63:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/23 21:01:11
「諸君、今の我々の状態ではヤツに勝つことは出来ない。ここは最大速を以って地球に帰還し、迎撃態勢を整える」
凱とJの捜索は如何するのかと牛山一男が問いただすが、二人は勇者だ、だから彼らは無事だと信じると語るに留まる。
噛み締められた唇の端から血が滲んでいるのをみて、全員が大河長官の決意に従った。
その後火星まで来た一行はマーシャンと接触、ここが自分達の知らない世界である事を知らされるが、やるべき事に変わりは無い、
マーシャンの協力を取り付けてDSSDに接触、外宇宙探査用のMSに積載する超AI技術の提供と協力の変わりに、廃棄された資源衛星基地を譲渡してもらった。
ジャンク部品を利用して小数のカーペンターズを作成、この世界での活動拠点を作り上げて、同時に情報収集の為、いち早く修復を終えたボルフォッグとルネを地球に送り込んだ。
そして先日、ルネからの情報を受け取った凱が、GGGと木星の事をディランダルに話した事で、デュランダルからGGGへ会談要請が出され、極秘に会談を行い、プラント(議長)の協力を取り付ける事に成功し現在に至る。

ユウナは渡された資料と映像を見て、顔を青くしていた。この後、二人は親ザフトの国を回り同様に話をする予定だと言う。
これが本当ならば地球での小競り合いなど無意味だ。しかしこんな馬鹿げた話を信用しろと言うのか。仮にこれが真実であった場合、対抗など出来るのか。そんな考えが頭の中を回る。
「これに対抗しようと言うのか、彼方方は」
「その為のGGGであり、彼方の協力が必要です」
「しかし、これを倒せる者など何処に」
在ると言いかけて、一つの事に思い当たる。そうだあのユニウス7を破壊した機体ならば、顔を上げたユウナに対して無言で頷く大河とデュランダル。
なるほど希望はある、ならば自分のすることは何も変わらない。
「分かりました、オーブは全面的にGGGに協力しましょう。またプラントとも単独講和の準備を進めます。ただし」
後をデュランダルが次ぐ。
「理解しています、資源衛星の譲渡と技術交流ですね。しかしGGGの技術は私の管轄ではないので」
そこで大河の方に目線を向ける、デュランダルとユウナ。男二人に見つめられた大河は咳払いをする。
「我々の技術は無制限に拡散させる訳には行きません。しかし防衛行動には期待して頂きたい。またDSSDに譲渡した技術に関してはオーブにも公開しましょう」
ここまで来れば、細かい条項と発表日程などの調整は事務方の仕事である。こうして三者会談は終了した。

ナポリに寄港したミネルバの被害報告がタリアの下に上がってくる。実に散々な有様だ。
今回の戦闘前から使用不可能だった艦首陽電子砲QZX-1《タンホイザー》に加え、艦中央の42cm実体弾砲《イゾルデ》が使用不能。中央甲板及び右舷MSデッキ大破、各種弾頭の7割を消耗。
またMS部隊に関しても、撃墜されたルナマリアが右腕骨折、肋骨にヒビが入ったが幸いパイロットに欠員は居ないものの、
凱のガオセイバーを始めとして、アスランのセイバー、ルナマリアのザクウォーリアが大破、レイのザクファントムが中破、無事なのはシンのインパルスのみという有様である。
「参ったわね」
ナポリの基地にMSの補充を頼んでみたが、回って来たのは旧式のZGMF-1017《ジン》が2機とTMF/A-802《バクゥ》1機であった。後はロドニアで回収したガイアがあるが修理に必要なパーツが無い。
「この先、何事も無くジブラルタルまで行ければ良いけど、無理でしょうね」
嘆息して、スケジュールの調整を始めたところで、そう言えば回収したガイアのパイロットの事で話があるとドクターが言っていたのを思い出した。
碌な話ではないだろうが、一寸行って聞いてこようと席を立った。

64:通常の名無しさんの3倍
09/07/23 21:02:14
支援する!

65:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/23 21:02:46
シンは、報告書の提出を終えた足でステラを見舞う為に、医務室へ向かっていた。ドアの前に着くと中から苦しんでいるステラの声と、ドクターと話すタリアの声が聞こえてきた。
「ジブラルタルまで持ちそう?」
「厳しいですね。それより下手に処置を施すと、後でデータに齟齬が出る可能性があります」
「出来れば、生きたまま引き渡したいのだけど」
そんな会話がシンの耳に飛び込んできた。内容に愕然とするシンだが、一息ついて今の会話は聞かなかった振りをして、来室を告げてから医務室の中へ入ると、ベッドの上で荒い息を吐き憔悴した様子のステラの横へ行く。
昨日、見舞った時には落ち着いていたのに、なぜこんな事態に成っているのか問いただすシンにドクターは処置を施しながら答える。
「どうもこうも私にだって解らんよ、薬で様々な影響を受けていて、まるで解らん体だと言っただろう、一定期間内になにか特殊な措置を施さないと身体機能を維持できないようでもある、それが何なのか、何故急にこうなるのか現状ではまるで解らんさ」
コーディネイターは遺伝子レベルで病気に強い処置を施される。その為に風邪位しか病気に罹らないので、こういった薬の研究に関してはナチュラルの方が遥かに進んでいる。
苦しみ続けるステラの手を握ると、シンに向かって弱々しく訴えかけて来た。
「シン、怖い。助けてネオ」
そんな様子のステラにシンは、大丈夫だとおれが守ると、気休めだと思う言葉しか掛けられない自分が情けなかった。
ドクターに医務室を追い出されたシンは、自分に何が出来るだろうかと考えながらミネルバの廊下を歩いていた。そこへ丁度通りがかった凱が声を掛けるが、その声には気が付かずに行ってしまった。
凱は何か思いつめた様子のシンのその姿を見て、微かな不安を感じた。

その日の深夜シンは一人、人目を忍んで医務室へ向かっていた。今日のタリアとドクターの会話からすると、ステラの事は検体としてしか考えていない様だ。
確かにステラと自分の接点など、無いに等しい。でも仮にも彼女に守ると約束したのだ、このまま黙って見殺しになど出来ない。
シンは悩んだ結果、現状ではステラを連合に帰す事が、彼女の命を救う唯一の方法だと結論を出した。
医務室の中には当直のメディックが一人詰めているが、トイレに立った隙にステラを連れ出し、インパルスの格納庫へと急ぐ。
途中でレイに見つかったが、ステラを見ると事情を察したのか、何も聞かずに手伝うと言ってくれたので、そのまま甘える事にした。
「此処まで来れば、もう大丈夫だな」
「ハッチは俺が開ける、シンは早く彼女を連れて乗り込め」
インパルスの格納庫に到達した二人であったが、其処に制止の声が掛かる。
「そこまでだ」
慌てて振り向いた二人の前には凱が立っていた。
「彼女を連れ出して何処へ行く積もりだった?」
誰何の声を上げる凱に対して、無言のシン。強い語調で答えるように促すと話し出した。
「昼間、艦長とドクターがステラをまるでモルモットみたいに話していたんです。しかもこのままでは彼女は死んでしまう。だから考えた末に連合に帰すのが、彼女の命を助ける唯一の方法だって、お願いします。行かせて下さい!」
シンの告白に対して、凱は黙って聞いていた。聞き終わった後で逆に問いかける。
「それは本当に彼女の為になるのか、仮に今連合に帰したとして、境遇を考えれば再び戦場に送り込まれるだろう。それは如何する」
「約束してもらいます。もうステラを二度と戦わせないって、平和で優しい場所に帰すって」
少年らしい純粋さで訴えるが、凱はそう甘いものでは無い事は分かっている。それにシンの言い分と行動には違和感がある。
「シン、本当にそんな事が出来ると考えているのか。それともただ苦しむ彼女を見たくないから、そう思い込もうとしているのか」

66:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/23 21:03:45
凱に言われ、言葉を失くすシンに、更に追い討ちをかけるような言葉を続ける。
「お前は彼女を守ると約束したんだろう。それなのに自分の手の届かない所へ送り帰すことで本当に守れると思っているのか」
「それは、でも今、ステラの命を助けるには、これしか無いじゃないですか!」
「確かにな、今の俺達に彼女を救う術は無い。だが本当にもう俺達が出来ることは何も無いのか?」
凱は既にGGGにステラのデータを送って解析を依頼している。だが例えGGG科学班といえども、彼女を救えると決まった訳では無いので、それを口に出すような事はしない。
「無いからステラは苦しんでいるんです。だから!」
言い募るシンに対して凱は諭すような口調で会話を続ける
「だとしても俺は連合に彼女を帰すのが正しいとは思えない。分かったら戻れ、今なら何も見なかった事に出来る」
「凱さんの言う事は分かります。それでも、それでも俺は!」
「そうか、なら此処を通りたければ、自分が正しいと思うなら、俺を倒してから行け!」
仁王立ちする凱に対して、シンは怯む。普通に考えれば自分が凱に勝てるとは思えない。それに、凱に言われる間でも無く自分の行為が正しいなんて思っていない。
それでも今ステラを助けるにはこれしかないと一歩を踏み出た、その横にレイも進み出るが、これはシンが静止する。
「レイは下がっててくれ。これは俺の我が儘なんだ」
「気にするな、お前のフォローはアカデミー時代から俺の役目だ」
「済まない、ありがとう。でも、それでも頼む」
こう言われてはレイも引き下がらざるを得ない。
「いいのか、俺は二人掛かりでも構わないぞ」
徴発する凱に対して雄叫びを上げて突っ込むシン。
「舐めるなぁー!」
シンはザフトのアカデミーでは格闘、ナイフ戦でトップの成績を取っていた。凱がいかに超人エヴォリュダーといえども人間であることに変わりは無い。
ならやりかたによっては勝機があると、突っ込んだ勢いのままに攻めるシンだが、凱は見るからに余裕を持って対応している。
無論、エヴォリュダーの超身体能力もあるが、なにより戦闘経験による洞察力の差が歴然としている、シンの攻撃は悉く受けられ、逆に的確に攻撃を当ててくる。
それに対して、シンも凱の攻撃を受けた所から間接技に移行しようとしても逆に決められ投げられる。
「如何したシン、お前の力はそんなものかぁ!」
「くそっ」
致命的な一撃を与えてこない凱に対して苛立つが、それでも諦める訳にはいかない。それだけを支えにして、もう何度目か分からなくなったが震える足で立ち上がるシン。
「シン、お前にも分かっているはずだ。人は生まれを選べやしない。それでも人は自分の意思で自分の生き方を決める事が出来る。だがステラを連合に帰せば、お前の言うとおり今は助かっても、自分の意思とは関係無く戦いを強要される事になる」
凱が語りかける言葉をかみ締めるシン。
「それでもステラは、今苦しんでいるんだ!」
叫ぶシンに対して凱は静かに続ける。
「そして再び俺たちの前にステラが現れたら、お前は如何するつもりだ」
「そ、それは…」
二人の動きが止まった時、寝ていると思っていたステラが声を上げた。
「止めて、シン。大丈夫、わたし大丈夫だから」
力を振り絞った声だったのだろう、その声は其処にいた人間の耳に小さいがハッキリと聞こえた。
「シンが私の事守るって言ってくれたから、だから大丈夫」
弱々しくも毅然とした口調で、シンに話しかけるステラ。その声で緊張の糸が切れたのか膝から崩れ落ちるシンを抱きとめるとレイに託して、凱はステラを連れて医務室へと向かう。
凱が格納庫を出た所にルネとJが壁を背にして立っていた。
「お疲れさん」
「見てたのか、趣味が悪いな」
からかってくるルネに対して、軽口を叩くとベッドを押しながら歩き出す。
「その子も連れて行く? そうすれば治療も何とかなるかも」
凱としてもそれは考えたのだが、幾つか問題がある。基本的にステラはザフト、ミネルバの捕虜であり、いかにフェイスといえども凱に如何こうする権利は無い。
まあいざとなれば考慮に入れるが、一番の問題が残る。それはJの口から発せられた。
「無理だな、普通の状態ならいざ知らず。いまの状態では大気圏突破のGに耐えられまい」
凱達が宇宙にいるGGGへ行く為に使用するのはジェイダーだ、当然医療用の設備など無い。
結局のところ、ステラの容態がもう少し安定しなければ、如何ともしがたいという事だ。

67:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/23 21:04:42
格納庫に残されたシンは、床に寝転がり腕で顔を覆っていた。その脇にはレイが壁を背にして座っている。しばし無言の時間が過ぎ去りシンが重い口を開いた。
「分かってたんだ、凱さんに言われるまでも無く、ステラを連合に帰せば如何なるか。でも俺は彼女を助けたかった、だから無理な幻想に縋って」
じんわりと涙が浮かんでくる。そうだ分かっていた、それでも自分に出来る事はこれしかなかった。あの連合軍のオーブ侵攻の時、自分に力が無いから家族を失った。
だから必死になって力を得た。それなのに今また、自分にステラを助ける力が無いのが悔しかった。だから無謀な賭けに出ようとしたのだろうか。
自問するシンの耳にレイの言葉が届いた。
「シン、凱さんがさっき人は生まれを選ぶ事が出来ない、その代りに生き方を選ぶと言っていたな。それは自分で運命を切り開くという事だ」
シンはレイの言葉に静かに耳を傾ける。
「ならば、自分の生き方を選べない人間はどうすればいいんだろうか、ただある目的の為に生み出され、命をすり減らすだけの存在はどう生きていけばいい」
レイが言うのはステラのようなエクステンデッドの事だろうか、それにしては何か実感が篭っているように感じる。
「俺も良く分かんないけどさ、きっと凱さんが言った事は、もし生き方を選べないんだとしても諦めないで、その中で自分のやれる事をやれって事なんだと思う」
そう答えたあと、シンはむっくりと起き上がる。顔も腫れているし、体中痛そうに顔を顰めるが、表情は晴れやかだ。
「俺やっぱり、ステラを助けたい」
「では、如何する。やはり連れ出すか」
レイの言葉に首を振るシン。
「そうじゃない、自分の出来る事をする。確かに連合に連れ出せば、今は助かるかもしれない。けどそれは本当にステラを助ける事にはならないだろう」
誰かに任せきりにしない、自分でも色々と調べる。専門家が気づかない事も素人なら気づくかも知れない。もちろん間に合わない可能性のほうが高い、でも諦めない限り希望は残っている。
「そうか、なら俺も手伝おう。お前一人では気がつく事も気がつかないからな」
「なんだよそれ、酷いな」
「気にするな、俺は気にしない」
何かが解決したわけではない、しかしシンの表情は先程ステラを連れ出そうとした時に見せたような、悲壮感は消えていた。

凱はステラを医務室へ戻すと、艦長とドクターを呼び出した、ステラの処遇について問い質す為である。
事の顛末を聞かされた二人はばつの悪い表情を浮かべる、あのときの会話をシンに聞かれていたとは思わなかった。それにステラを連れ出そうとしていたとは、実際そんな事をされれば懲罰ものだ。
呆れるタリアだが、凱が言いたいのは違う。彼女を検体扱いしていた事こそが問題だと話す、それには素直に謝罪する二人。
「ごめんなさい。言い訳になるけど、そんな積もりでは無かったのよ」
「私も申し訳無かった、医師として人命こそ守るべきであるのを忘れていたようだ」
ステラに対してもキチンと調べたうえで治療する事を約束した。

数日が過ぎ、ジェイダーの自己修復が終了した。凱もルネ、Jと共に宇宙へと上がる、見送りに来たシンは、凱の前に進み出る。
「俺、諦めません。自分に出来ること探して、それでステラを助けます」
シンの言葉に凱は笑顔を返して口を開く。
「GGG憲章第5条125項、GGG隊員はいかに困難な状況にあろうとも、決して諦めてはならない!」
大音声で告げる凱に、シンも負けずに大声で返す。
「ハイ!」
シンの返事を聞いた凱は、背を向けて右手を上げるとGGGの仲間が待つ宇宙へと飛び立った。
それから一週間がたった。格納庫での騒動があった日から自分なりにレイにも手伝って貰って調べていたシンの下に、宇宙にいる凱からある薬の処方箋がもたらされた。
この薬はステラの体を治せるものでは無かったが、容態を安定させる事は出来た。一先ず安心するシンだった。

68:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/23 21:05:33
ラクス・クラインとアンドリュー・バルドフェルドは《ファクトリー》に到着していた、シャトルを降りてクライン派の党首たる総統の下へ向かっている途中である。
ファクトリーとは通常は資源採掘衛星の管理、運営を行う中継基地として存在している小惑星を改造した衛星基地である。
しかし、実態はクライン派が秘密裏に所有する大規模工廠であり、中に作られた工場ではMS、艦艇の修理、改造は勿論のこと新型機の開発、その他様々な施設と機能が併設された一大軍事基地である。
現在はクライン派の独自戦力としてプラントの次期主力MSの座をZGMF-2000《グフイグナイテッド》と争ったZGMF-XX09T《ドムトルーパー》の生産に入っていた。
その光景を横に見ながらラクスとバルドフェルドは奥へと進む、だいぶ奥まった部屋に到達した二人は身形を整えて入室する。
「総統、アンドリュー・バルドフェルド帰還いたしました」
そう声を掛けられた人物が腰掛けていた椅子ごと此方に振り向く、金の髪に美髯を蓄えた壮年の男性である。
「お帰りラクス、我が娘よ」
「ただいま帰りましたわ、お父様」
それは2年前にパトリック・ザラによって殺されたはずのシーゲル・クラインであった。
久方ぶりに対面する親子は軽く抱擁を交わすと、この2年間の事を話し始める。
クライン邸の襲撃はターミナルの情報網から筒抜けであり、襲われたときにはすでに影武者に入れ替わっていた。
その後シーゲルはファクトリーに居を移し、自分は表舞台に立つことなくクラインの地球圏支配の為に、また娘であるラクスを地球の女王とするべく準備を整えていたのだ。
「まったくパトリックの奴がトチ狂った時はどうなるかと思ったが、ヤキンの時は良くやってくれた。ジェネシスなど撃たれては私の農場も駄目になる所だったからな」
農場とは地球にシーゲルが作った隠れ里である、此処にはコーディネイターとナチュラルが共に生活しており、融和を謳っている為にコーディネイターとナチュラルの結婚を奨励している。
それはハーフコーディネイターが生まれる事を意味する、シーゲルはこのハーフコーディネイターを使ってコーディネイターの出産率を改善出来ないかを模索していた。
「あんな出来損ない共でも実験の役には立つ、また一から作り直すのは手間が掛かる。それに地球はいずれ我等が支配するのだ、悪戯に傷を付けては詰まらんからな」
本当に良くやってくれた、と続けて今度はラクスの話を聞く。
ラクスも2年間遊んでいた訳では無い。オーブにてキラ達との生活を続けながら、地球に浸透しているターミナルの情報を統括し、ファクトリーに送っていたのである。
「ユウナさんが私達を亡き者にしようと画策していると判った時には助かりましたわ」
いち早くその情報を手に入れたラクスは襲撃の人選に此方の息の掛かった人間を手配した、そのおかげで、何の被害も出さずにキラを戦場へ戻す口実が出来た。
本来ならサトー達ザラ派のテロを契機に戻る積もりだったが、ユニウス7の地球落下などという大事件を惹き起こすとは思わなかった。
ちなみに彼らへの支援はパトリック・ザラの息子であるアスランの名前を使っている、ザラの名前を使うことで相対的にクラインの名前を高めようという魂胆である。
すなわち強硬派のザラ、穏健派のクラインである。
「アプリリウスにちょっとした混乱を惹き起こしてくれれば良かったものを、やはりパトリックのシンパは駄目だな。ナチュラル憎しで過激な事しかせん」
地球に住む人間達もまた新人類たる我等が支配するべき者だというのに、もっともあまり詰まらん人間が多いのも考え物だ、その為にNJを使って間引きを行なったのだ。
談笑を続けるラクスとシーゲルだが、ふと会話が止まった時にシーゲルが何かを思い出した。
「そうだラクス、面白い物を見せよう」
そう言って向かった先は生体研究施設があるブロックであった、部屋にあるのは2つのシリンダーであり、その中に浮かんでいるのは12歳位の二人の男の子であった。
「この二人は半年程前に見つけたのだ、なんと宇宙に漂っていたミサイルの中に入っていたんだよ」
しかも研究の結果二人とも地球人では無いと判明した、超能力も持っていると続ける。
「彼らの力を我らコーディネイターが手に入れれば、更に超人に近づけよう。一番の候補はやはりお前と最高のコーディネイターであるキラ君との子供がよかろうな」
「まあお父様、それはとても良い考えですわ。今からキラとの子供を生むのが楽しみです」
「おいおい気が早いな、その処置にはもう少し実験をして安全性と確実性を高めてからだ」
話を続ける二人はシリンダーの中に浮かぶ天海護と戒道幾巳の目が薄っすらと開いた事に気が付かなかった。

69:通常の名無しさんの3倍
09/07/23 21:09:12
支援

70:小話 ◆9NrLsQ6LEU
09/07/23 21:10:24
戦艦の自室でネオ・ロアノークはロード・ジブリールからの通信を受け取っていた。
「今回もミネルバを沈められなかったようだな」
「申し訳ありません、ですが」
「言い訳はいい、私とて戦場が生き物である事ぐらい理解している。しかしこうも失態続きでは、厳しくもなろうというものだ」
確かにミネルバに係わってからケチが着いている。確たる戦果を出せていない現状では何も言えない。
「まあいい、そちらに新型を送った。それを使って次の作戦は必ず完遂してくれ」
通信にて送られてきた命令書に目をとおすネオが言葉を失う。
「何事も見せしめは必要なのだよ。ククククク」
画面の中で笑うジブリールの顔は醜く歪んでいた。

休憩室でコーヒーを飲んでいたアウル・ニーダが、難しい顔をしてスティング・オークレーに話しかける。
「なあ、何か忘れてる様な気がすんだけど」
「あー、何だそりゃ。何かって何だよ」
ソファーに横になって雑誌を読んでいたスティングが顔を上げて返事をする。
「判んねえけど、何か大事な事、忘れてるような気がすんだよな」
「判んねえなら、大した事でも無いんだろ。気にすんな」
アウルはスティングの言い分に首を傾げながら、お前如何思うと話を振ろうと横を向いた、当然そこには誰も居ない。当たり前だ、自分達は始めから二人だったじゃないか。
「なーんか、連敗続きで疲れてんのかな」
微かな違和感を、無理矢理納得させてアウルはコーヒーを啜った。
そこにネオがやって来て次の作戦を告げる。
「喜べお前ら、新しいおもちゃが届くぞ」

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