一番奇抜なガンダムってどるだ?2 復刻版at SHAR
一番奇抜なガンダムってどるだ?2 復刻版 - 暇つぶし2ch437:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-102
10/06/27 23:15:28
 アーミー・モロンたちはMOSタイプMSに群がるコーディネイターたちを片すと、コマンダー・モロンの号令で散開した。
「でっでっでっでっ」の掛け声に合わせた足拍子で進んで行った。銃剣の切っ先とベルト下部の突起の尖端とは、進行方向に向けられてあった。
喚起に沸き立つ顔面とズボンが窮屈そうなのさえ見なければ、威風堂々たる雄姿である。
 この成り行きを離れて見ていたコーディネイターが、何やら喚いて駆け出した。日頃スポーツで慣らした甲斐も無く、腕を滅茶苦茶に振り回して、徒競走に適しない駆け方であった。
一体のアーミー・モロンが「デストローイ!」と叫んで引き金を絞った。三発の弾丸がひと息に発射された。三発とも命中した。
背中に二発、後頭部に一発である。コーディネイターは着弾の瞬間に身を震わせるとうつ伏せに倒れ込んだ。
赤い雫が芝生に散った。頭の穴から流れ出るものが地面に染みて行った。開け放しの口に押し入る芝草は、多かれ少なかれ塩気付いている。
「でっでっでっでっでっでいぅ……」
 別のアーミー・モロンが、ベンチの裏にへたり込んでいる女性コーディネイターを発見した。
アーミー・モロンの眼差しに射竦められて、彼女はひぃと声を上げた。子供の大泣きする直前に出す空気漏れのような声が出掛かると、
「デストローイ!」とアーミー・モロンの銃剣がお腹に突き刺さった。彼女の目が海老みたいに飛び出した。
「デストローイ! デストローイ! デストローイ! でででデストローイ!」
 アーミー・モロンは三度銃剣を抜き差しし、四度目で彼女のお腹をかき回した。

438:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-103
10/06/27 23:17:19
 MOSタイプMSもアーミー・モロンの活躍を黙って見ていたわけではない。
武装は対MS用のため使用を控えねばなるまいが、その巨躯自体は如何様にも有効活用できるのである。
逃げ惑う人々を、キャタピラシューズを穿いたMOS-Hヒューブリスが追いかけた。
コーディネイターがMS運転免許取得の際、絶対にしちゃいけませんと教えられる行為である。
近付いて来るきゅるきゅるという音から人々は必死になって逃れようとするが、如何にヒューブリスの動作が鈍重に見えるとはいえ、MSの大きさは人間の十倍もある。
躓きかけたと思えば下半身がぺしゃんこになっている。振向けばキャタピラが眼前に見えたきり真っ暗になる。
ヒューブリスは片足の下にコーディネイターを敷いたまま、もう片足のキャタピラだけを動かして旋回を繰り返し、改めて走り出した。
無残に踏みしだかれた芝生の跡には染みが出来、次に追いかけた人々の衣服にもその最中、キャタピラから散った汚物が似たような染みを作った。
 MOS-Bビアーの仕方はもすこし手短であった。幾人か一緒に逃げているのを見つけると跳躍してその上に着地し、激しく足踏みをするだけである。
こんな大雑把な仕方ではとり逃がしが懸念されるが、実際に逃げおおせるのは十人に一人あるかないかであった。
殆どのコーディネイターは、腰を抜かして動けなくなってしまうのである。
 中には手向かう者もいた。黒子モロンである。
彼らはコーディネイターの目が機能しなくなるや否やアーミー・モロンとコーディネイターの残骸とを片しにかかった。
彼らの目には兵隊も兵器も粗大ゴミ以外の何ものでもない。自然公園をこんなに汚されてしまっては、たまったものではないのである。
「デスデストローイ!」と両手に二挺の小銃を持ち、それをコーディネイターに向けて乱射しているアーミー・モロンに、一体の黒子モロンが背後から忍び寄り、背伸びしてその首根っこを掴んだ。
そして森の中に引き摺って行こうとすると、そのアーミー・モロンが小銃から手を放し、「ででっでいぅ!」と腰のナイフを抜いて背後の黒子モロンのわき腹を突き刺した。
握力の弱まったのを見計らい拘束を振り払うと、「ででんっでっででん、ででんっでっでデストローイ!」と黒子モロンの体を滅多刺しにした。

439:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-104
10/06/27 23:18:41
「デストローイ!」のスローガンと共に、所属不明のアーミー・モロンとMOSタイプMSの部隊は、
地上に蠢くものらを撃って動けなくしたり、鋤を使うように人体をかき回したり、人間の部品を地面に擦り込んだり、それを踏み固めたりした。
彼らは一致団結して、味も素気も無い自然公園の土壌を血によって肥沃なものにした。
大規模な凶作ないし不況の折に選ばれる伝統的農地改良法である。
 アーミー・モロンたちの男性が主張しているのを見て、
〈いよいよ事態がややこしくなってきた〉とポストは思った。彼らがDモードと呼ばれる原則で行動しているのは明らかである。
〈リグ・ヴェーダは、このような沙汰を望むまでになっているということか〉
 ポストたち人間でなくては出来ない所業である。コンピュータならば、もっと効率のよいやり方をする。
人間性を引き出さない限り、アーミー・モロンだってそうである。

440:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-105
10/06/27 23:21:00
 性交渉と人殺しとに密接な繋がりがあることは、古くから云われている―ところでこの点に関しては、
化粧した猿と揶揄される近代的種族のように一つの形式を恥じることなく自由に論じて他の形式のものについて沈黙するという態度でいてはなるまい。
文明開化せられた人民の間では、所謂アミ・コションが広く行われている。
つまり、それは公共的コミュニケーション手段なのであり、侵すべからざる権利なのであり、むしろ義務であるとも云い得るのである―
運か金かコネが足りなくば殺人犯となる不幸な人々は、相手が異性でこちらにこれといった目的の無い場合、相手を安楽にする前に激しい性欲的嫌がらせをするのが常である。
人間社会に無くてはならぬものとされているビジネスチャンスの領域に目を向ければ、その関連はいっそうわかりやすくなる。
兵隊さんは囚人と同じくある方面の語彙が豊富である。彼らの隠語の一つ一つは機知に富んでいる。凄いのになると実践の経験が豊富なのもいる。
誰かが凱旋式に乱入して、生きている兵隊さんと死んでいる兵隊さんとを侮辱する歌謡を晴れやかな良心でもって流すこともあるけれども、
彼らとてその社会的革命的合法的闘争の際には、所有否定を名目に交易自由化の運動を繁殖衝動の方面に向けることもなくはない。
通俗心理学の本には刃物や銃器はXY染色体の象徴であり、その攻撃目標も催情的な粘膜部位に喩えられると書いてある。
棒状の物、例えばペンなどもそれで書かれるものの影響を踏まえればこの隠喩に当てはまる。ペンは剣よりも強し、剣は目の前の人間を殺すに過ぎない。
ついでに述べておくと、行為の折に暴力的な器具を用いたり、叩いたり引っかいたり絞めたり切りつけたりすることで官能の増大を図るというのは、
健全を標榜するコーディネイターを除けば、一般的に行われ、市民権を得ている嗜好であるらしい。

441:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-106
10/06/27 23:22:35
 これら暴力と性欲的衝動との関連には、様々な心理的・哲学学的・神秘的解釈が為されている。
一元論的にはあらゆる衝動が、自己保存の本能に帰していたり、粘膜作用に還元出来なくもなかったり、
盲目的な権力感情で説明することも出来たり、高次の義務感情の暴発であったり、
人格完成上の欠くべからざる形式として高められた社会感情に伴う陶酔であったり、神のお気にめす肉体の結合であったり、
そもそも人間なるものは具体化された性欲であったりと、いずれも理性的に納得の行く解釈であるが、技術利用だけを目的とするならば何であろうと変わりない。
生き物が何であるかを知らなくたって、使ったり殺したりするに支障はないのである。
 モロン生産技術において、去勢や生殖機能の弱化乃至調整は重要な要素である。
コーディネイターの立場で云うと、犬羊狗馬の類の催す姿を見るのは不快なことであるし、それにつき合わされるのはもっと不快なことである。
例えば清掃モロンなどはコーディネイターと接する機会が多いので、雄雌ともに外科的措置で性的不能にされている。
初めから中性に作らないのは、その衝動で足し引き勘定が成り立たないためである。
彼らは総じて大人しい。飯を食えと誰かに命じられなければ、餓死してしまうくらいに大人しい。
同じくコーディネイターに身近な小間使いモロンのほうは、繁殖能力を無くした以外は手付かずである。
これには正常なコーディネイターにとって卑しむべき事柄が関連しているが、ともあれ小間使いモロンにはある程度の万能が求められているのである。
コーディネイターとあまり接しない工業モロンに於いては、割礼と呼ばれる宗教的行事を想像すればよい。
コーディネイターやナチュラルから見れば禁欲の強制としか思われない措置である。
彼ら工業モロンにも性欲的快楽に類するものが残されていて、それらは労働の際微かに刺激されるよう仕組まれてある。
極言すれば、彼らは皆ドン・キホーテ的愛を日常としているのである。生殖器を直接に用いる必要の無いモロンについては以上である。

442:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-107
10/06/27 23:24:06
 こうなると当然、モロンにも性欲的欲求解消の措置が必要となってくる。人は口腹のみにて生くるものにあらず、愛の口より出ずる快楽によりて生く。
しかし決して自由な交合を認めてはいけないのは、ナチュラルのする異性交遊を鑑みれば分かることである。
体液交換どころか分泌液ないし汚物の崇拝をも可能にするほどに熾烈な感激、望みが達せられぬことを悟ったときの傷心と屈辱、
もろもろの執着が原因で生じるおびただしい理不尽、人間がいつか死ぬのと同じくらいの確率で訪れる幻滅、結婚、
英雄色を好むとあるのに女傑尻が軽いと云われない不平等に向ける抗議の声、意外に事例の多い婚前同棲解消後の手切れ金支払い、
意図して減少せしめられた避妊成功率と破産後に知る堕胎費用の相場、異父兄弟の双子、
多額の横領の発覚した折に叫ばれる「女を探せ!」の声、十代の若者の「好きだ……」と言うときの愚劣きわまる顔つき、
トムが金策の不振で沈んでいるとナンシーがきまってする「トムは恋をしているのよ!」という断言、
「怒ってんの?」「別に怒ってないわよ」「いや、怒ってんじゃん」「怒ってないって言ってるでしょ!」というやり取り、結婚、
ひっきりなしに届けられる差出人不明の長文メール、町を歩くと感じる誰かの視線、
回収車はまだ来ていないのに消えている自分の捨てたゴミ袋、アパートのドアノブにぶら下げてあるやたら長い手編みのマフラー、
一人暮らしをしていたはずなのに支度されている夕食、錆びた味のするケチャップと整頓された自室、
減っている寝台下の書物となぜか増えている洗面所の歯ブラシ、ひとまず落ち着こうと飲み物を口にした途端に薄らいでいく意識、
知らぬ間に裸になっていてその隣ですうすう寝息を立てるどこかで見たような人、過失であるか責任であるか強姦であるかとこちらに有利なところの無い問答、
そして結婚、と、このように多大な心理的・経済的負担は偉大なる事業への推進剤とならなくもないが、モロンに求められているのは凡庸さである。

443:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-107
10/06/27 23:31:02
ごめんなさい投下ミスです。
>>441
>>443
>>442
の順でお願いします。

 セミ・モロンやイェニチェリー・モロンは特殊なのでここでは説明を省くが、
食肉用や搾乳用の食用モロン、コマーシャル・モロン、アナウンス・モロン、そしてアーミー・モロンなどは、肉体より情操のほうに重きを置いて欲求を調整されている。
食用モロンをある程度自然のままに育てたほうがいいのは、畜産家の手法から察せられる。
コマーシャル・モロンやアナウンス・モロンはというと、コーディネイターほどでないが端麗な容姿や声を保たねばならない。
子宮を摘出してしまっては髭が生えたり声変わりしたりするし、没薬の袋なるものを引きちぎってしまうと少年コーディネイターのように女々しくなる。
アーミー・モロンについては、暴力を事とする以上性欲の減退は致命的である。



444:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-109
10/06/27 23:38:41
 ここで有効活用されるのが、芸術である。
賃借対照的人生観を適用すれば、モロンの人生の内容なるものはまず願望と希望、次に努力と競争、第三は不思議なことに失望と苦痛であり、
それら三つの状態が、肉体の燐に還元せられるか食肉と化すかまで延々と繰り返されるに過ぎず、結局のところ長生きするほど割に合わぬということになる。
工業の人道化以来労苦という語は労働という語にすり替わったが、
翼はないが魂のあるらしい動物に労働の本来的に内包する喜びという新興概念を確信させるには、その手を漂白してやるか、さもなくばパンに対するサーカスを与えねばなるまい。
サーカスを見ながら食べるパンほど真実においしいものはないし、パンを食べながら見るサーカスほど真実におもしろいものはない。
モロンは社会動物である。アーミー・モロンはその最たるものである。
これらにとり芸術は、ナチュラルやコーディネイターのように一時の気晴らしや世界肯定乃至世界否定の手段乃至目的であってはならない。
ここは芸術をして社会という機械全体のきちんとした一つの構成部分たらしめ、
モロンを団結させ、モロンを啓発し、モロンが一心同体となってコーディネイターに奉仕するのを助けさせるより他はない。この目的に合致する最も安易な芸術は映画である。
一つの施設で一度に多数のモロンになるべく一様な影響を与えるに、映像芸術ほど優れたものはない。
ある方面で洗練された類の映画には、言語力も想像力も要せず、ただ見るだけで心を楽しませることが可能である。性欲的欲求の昇華にもうってつけである。
 モロン慰安映画には様々な作品があり、そこには所謂ブルーフィルムもかなりの割合で含まれている。
そしてめいめい無軌道な自己愛によって自己の濫費を果たせるよう、映画館の座席には性別ごとに専用の器具が設けられている。
上映の終わった後、監督のモロンが座席を一つ一つ調べて回り、然るべき手順で使用した痕跡が見当たらなければ、その器具を使用していたモロンは再教育施設に送られる。
 モロンはその同胞やコーディネイターに対して性欲的感心を抱いてはならないので、映画の内容にも細心の注意を払わねばならない。
芸術作品で情欲を喚起させながらも、日常で禁欲者の如く振舞わせる。
これは一見矛盾しているかに思われるが、芸術の本質から云えば可能なことである。

445:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-110
10/06/27 23:40:24
 太古のIT革命時代、ある種のディレッタンティズムが勃興した。それは黎明期にOTAKU文化とも、HENTAI文化とも呼ばれた。その系譜のみを見て分類するなら、宗教の分類に含んでも差し支えない。
その信者たち―便宜上、OTAKU、HENTAIと決め付けられた人々をそう呼称する―は、歴史上に現れた奇矯な哲学の信奉者や宗教家と同様、大声疾呼の権威により迫害された。
彼ら信者たちもやはり、哲学者や宗教家と同じく現世的なものを軽蔑していた。初代信者たちの思想がどのようなものであったかは、この時代では知る由も無い。
世間の批難するに足る理由があったということも、完全に間違いであるとはいえなかったろう。
宗教は時代ごとに装いを変える。啓蒙時代は云わば衣替えである。禁欲による超脱は薬物による夢遊と化し、隣人愛の神は功利主義者と解釈される。
今わかっているのは、信者たちはその当時に生まれた漫画やアニメーション、ビデオゲームといった娯楽媒体を神聖かつ不可侵な存在、
この世において永遠な神的なものというふうに―以下の解釈は極端に過ぎ、真実と異なっている可能性が極めて大きいが、
自分たちに近親関係のない歴史的物証を延べるに当たっての大げさな解釈は広く実践されている―定義し、それを崇拝したということである。

446:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-111
10/06/27 23:42:19
彼らは虚構性の高い世界観を抱いていた。プラトンがイデアについて語るように、彼らはアニメーションの登場人物の美を讃えた。
狂えるソクラテスの役目は、漫画のステッカーを貼った自動車を乗り回す人々などが果たした。
パウロは無数にあった。地下礼拝者は更にあった。彼らは同胞を見つけると安心して、互いに饒舌になった。
踏み絵も行われた。それは主に趣味を持たない人々によって行われた。
殉教者もあった。私財を投げ打って崇拝対象に奉仕した者は、ある意味で敬愛の的となった。
結婚のため改宗せねばならなかった者もあったが、その結婚生活が原因で、哲学者になるが如く信仰生活にどっぷりつかることになった者もあった。
ビデオゲームに半生を費やした者は神学の衒学者のように、それをしない人間からは蔑まれ、それをする人間からは妬まれるか敬われるかした。
彼らの信仰は宗教上の道徳的教説に従うことと同様に、若年のうちはそれなりに褒められたが、成人したとなれば侮られた。
無論、勿体ぶって理解を示して見せる輩はたくさんあった。
そしてまた、ごく一部の―と思いたい―信徒たちは暗がりに潜んで、あちこち這い回りながら互いに悪態を付き合っていた。

447:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-112
10/06/27 23:49:56
 モロンの映画の内容は普遍妥当的なブルーフィルムのものであるが、その形式は今述べた信者たちが歴史の中で培ってきたものを踏襲している。
眼球は顔面の三分の一を占めるまでに肥大化し、鼻はもはやくの字に過ぎず、鼻筋や皺といった猿との血縁を裏付ける特徴は排除され、顎は鋭く研ぎ澄まされ、笑うときには目を瞑る。
こうした写実的でない人々が登場するのである。
このアニメーション映画は、主題を官能や流血に限って感傷的な面に立ち入らなければ、現実の人間に対する感心を薄れさせることも出来る。
 ところで、人に人を殺させるのは難しい。たとえうまくやりおおせたとしても、当人がめげるか味を占めるかして使い物にならなくなる可能性が高い。
理想的な仕方はというと、銃を持たせ、目隠しと耳栓をし、相手を前に立たせ、まっすぐ撃てと命じ、死体を片付け、代わりに潰れたトマトを置き、目隠しと耳栓を外してやることである。
アーミー・モロンに施される表象結合教育はこの理想を実現した。彼らはトマトに向けて銃を撃つ。
そのトマトに足が生えていても、顔があっても魂があっても、たとえ殺傷能力があっても彼らは黙々とトマトを潰し続ける。
軍事はお金のかかるものである。トマトの一つや二つ、千ダースですら勿体無くは思われない。
ただ問題なのは、その作業に対して充分な意欲を喚起せしめられないことである。

448:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-113
10/06/27 23:53:27
 意欲は教えられない、という原則は、浅ましからざる隣人愛についてはともかくも、他方では必ずしも当てはまらない。
奪われた人は同情されるが、儲け損ねた人は嘲弄される。
無事故無違反の報奨がろくすっぽ値打ちの無い紙切れにあらず違反切符と同額の金子であったなら、人は己の不注意を心底から恥じるようになる。徳行が官能で報いられれば昼の間は君子である。
信仰の法に勝るのはこの点であるとも云われる。法は鞭で脅すが、信仰は天国を約束する。
利己か利他かは問題にならない。わらしべよろしく無私が富をごくごく稀に産むことがあり、それと逆さまに利己が利他に帰結せられることもある。
こうした道義的解釈のおかげで、自称最高等生物は調教を受け付ける度合いにおいても卓越する。
その行為自体に限れば、利己心に助けられることによっていっそう少ない手数で調教され得るのである。
自己の内部に在ると仮定せられる反発感情が実際の行為になることは稀である。
枯葉は言う。「俺は決して、決して他に仕様がなくてひらひらするんじゃない。俺は重力にそそられる。空気抵抗にビンビンくる。
地面にシゴかれる瞬間は最高だ。カサッと来た途端にイッちまうんだ。つまり俺は俺の意志で、俺自身望んで落ちて行くのさ。
誰にも文句はいわせないし、いわれたって悔しくなんかない。だってそうだろ? これは俺の葉生で、俺には俺の決めた葉生を生きる権利がある。
好きなときに、自由に落ちるってのは一つの生き方だ。要するに、葉っぱ的態度なんだ」以上の教説が、モロンなる利他動物を基礎付けている。

449:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-113.5
10/06/27 23:54:48
 アーミー・モロンはトマトを潰す。ただ潰す。単調である。退屈である。ここは何か、ちょっとしたご褒美でも欲しいところである。
そこで内なる声がささやく。「仕方あるまい。お前さんがトマトを潰せば、潰す毎に、お前さん好みの幻覚を見せてやろう」事実その通りになる。
アーミー・モロンの眼前で、走り書きの女体が描写される。これがDモードと呼ばれるものの正体である。
 Dモードのアーミー・モロンは己の本能に背くことなく、己の理性で認識し、己の意志で武器を使う。
 トマトが逃げて、アーミー・モロンはそれを撃つ。すると彼らのベアトリーチェがしどけない恰好で微笑む。
トマトの果汁が銃剣に絡みつくと、彼らのドゥルネーシアが声を裏返らせて苦しげな顔をする。
トマトの果肉が飛び散ると、彼らのグレーチヒェンが背中を引っ掻いて来る。アーミー・モロンの局部に痒痛が走る。

450:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-114
10/06/27 23:55:59
 こういうトマト狩りが楽しくない筈はない。
アーミー・モロンたちは現実のトマトを駄目にすると同時に、白昼夢の女性をさんざん酷い目にあわせようと試みた。
彼らにとって逃惑うトマトは、ソロモンの云う水に飽くことを知らぬ地であった。
けれども驢馬が人参を追いかけるように、達しそうで達せないという理性動物を盲目的衝動に従わせる状態がいつまでも続くのである。
実地の行為で生理的に静めない限り満たされないままであるが、
コーディネイターの雌なんかは奥行きというどうしようもない欠陥―いわばゼノンの難問における彫刻と絵画との相違である。
現実の皮膚に向けられた拡大鏡は脂ぎった山脈を眼前に躍動せしめ、対するにアニメーションの人物は無限にきめ細かい肌を持つ―があるので、
彼らの空想の女性には敵わない。アラン・イディットなる少年に対し、ソクラテス的と名づけられる愛を抱く余地もない。
どのみちトマトはトマトである。





451:機動新世界ガンダムDoll-DA 1-115
10/06/27 23:58:03
 アランは情けない声を上げた。走っていてもう何度上げたかも分からない。
「デストローイ!」
の声が響くたびに「ひゃあっ」とか「ひぇっ」とか「ごめんなさいっ」といった涙声で反応するのである。
 首なしMSが自然公園に着陸したとき、アランもその場に居合わせた。
この首なしの奇妙なMSをハスハに見せれば、彼女に機嫌を直してはもらえまいが、ご機嫌伺いの意思を示すことは出来るであろう。
ついでに謝っておけば、疚しいことは何も無くなる。アランはふとそんなことを思い立って、元来た道を引き返した。
それで首なしMSから距離をとったことが、一時にせよアランの命を救った。自分はハスハが居なければ死んでいた。〈それは違う〉とアランは思った。
そもそもハスハが歩いて帰ろうなんて言い出さなければ、こんな目に遭うこともなかった。
「デストローイ!」
 耳の横を何かが掠めた。ぶうんっ、とはっきり聞き取れてしまった。
「銃、あれは銃という物なのか」
 全力で走っているというのに、頭の中に次々と言葉が浮かんでくる。
〈銃とは弾丸を発射する火器。大昔、主に戦争と呼ばれる競技で人間を殺すのに用いられた。初期のそれは―って〉
「喧しいよ!」
 学習装置が記憶の深層に刻み込んだ情報が、勝手に引き出されているのである。
自然に頭がぼうっとして、駆けるのも遅くなる。今の状況で学力は障害以外の何ものでもない。
「デスト―」
 また弾丸の掠める音が聞こえた気がし、
「―ローイ!」
 アランの前方を走る人の頭がはじけた。急なことで止まれなかった。
アランはその人を押し倒すような形で転びかけ、咄嗟にくるんと前廻りの受身を取って駆け続けた。
「今何か付いた! 何か付いたよ!」
 頬に生暖かいものが垂れている。拭うのが怖い。振向くのはもっと怖い。


452:通常の名無しさんの3倍
10/06/27 23:59:28
以上です。

453:通常の名無しさんの3倍
10/06/28 19:54:15
投下乙。
なんかもう、俺には天地がひっくり返っても真似できない文章だ……
OTAKUたちの遺産がこんな形で活きるとは。

454:通常の名無しさんの3倍
10/07/01 06:19:51
GJ!
SS職人が充実してきたのでもっと絵師も欲しいところだ

URLリンク(pig.oekakist.com)
【型式番号】BL-Z18/G810
【機体名称】マーライダー
【武装】股間部ハイメガキャノン
    股間部バルカン×2
    脛部バルカン×2
【備考】・腕の中にワイヤーが仕込んであり、最大10mまで伸ばすことが可能。
    これで敵を捕獲すればゼロ距離で股間部ハイメガキャノンを発射出来る。
    ・股間部ハイメガキャノンは普段は短くて垂れ下っているが、使用する際に
    雄々しく高らかに上を向き、砲身も長くなる。サイドの球体はエネルギーを
    変換するとても重要な装置であり、これが破損するとハイメガキャノンは発射できない。
    何よりこの機体はハイメガキャノン頼りなので、破損すると同時にパイロットの心も折れてしまう場合もある。
    ・この機体に初めて搭乗するパイロットはハイメガキャノンの恐るべき破壊力に冷静さを失って例外なく連射してしまう。
    ハイメガキャノンは圧倒的なパワーを持つが、その分エネルギーの使用も激しいので、連射すると当然パワー切れになり
    動けないまま戦場では的になってしまう。その時のパイロットは例外なく全てを失ったような顔をしている。

455:通常の名無しさんの3倍
10/07/01 21:04:44 CWsdCRpJ
マーライダー股間部ハイメガキャノン使用時
URLリンク(www8.atwiki.jp)

456:通常の名無しさんの3倍
10/07/02 17:42:52
>>454-455
ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃないか!
完成度たけーなオイ

457:通常の名無しさんの3倍
10/07/04 20:11:21
>>455
まさかのアニメ。
完成度たけぇなおい。


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