10/02/08 14:40:21 +IRJik8J0
綺麗に舗装された二車線道路は、緩やかな坂道となっており、訪れるものを山の中腹へと招く。
山の中腹には、周囲１㌔以上はあろうかと思われる丸い池が、その水面を静かに波立たせながら大きな口を開けている。
池の山側は、登り斜面となっており、百数十軒の家が池を見下ろすように建てられている。
まるで、全ての家の視線を池に集中させ、外から来るものを見張っているかのようでもある。
池の岸部は一部が埋め立てられており、そこには○○会館が建てられている。
その○○会館から西に100m程離れたところの岸部も埋め立てられており、
そこには保育園と、5～6棟の平屋ニコイチタイプの市営住宅が建てられている。
保育園に子供の姿が見えないのは、この日が日曜日ということで理解できたものの、
昼下がりというのにこの静けさは不気味である。
この地区の散策を始めてから、二十分ほど経つものの、まだ人の姿を見ていない。
といっても、全く人の気配が無いわけではない。
周囲の家の軒先には、洗濯物が揺れているし、網戸の奥からはテレビの音が聞こえてくる。
騒がしいセミの鳴き声にオーバーラップして感じるこれらの気配は、
まるで息を潜めながら獲物を狙うそれの息遣いにも思えた。
僕が隙を見せるタイミングを見計っているのだろうか。
僕が隙を見せたら一体何が起こるのだろうか。