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【中日新聞・テーマを読み解く】日韓関係(中)~流浪する人々[05/16]
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テーマを読み解く 日韓関係(中)
流浪する人々 李 鐘元
高崎宗司著『朝鮮の土となった日本人―浅川巧の生涯』ほか
「帝国」とは、人々の移動をも意味する。日本の支配が拡大するにつれ、多くの人が国境を越えて、
「大東亜共栄圏」に散らばっていった。日本人と朝鮮人をともに巻き込んだ奔流は、帝国の支配と戦争
という構造の中で渦巻きとなり、「加害」と「被害」が錯綜(さくそう)する歴史の残骸(ざんがい)
を残した。
高崎宗司『植民地朝鮮の日本人』(岩波新書)が詳細に伝えるように、日本の朝鮮統治は
「草の根の植民地支配」によって支えられた。一九一〇年の併合時に約十五万人であった在朝日本人は、
四五年の敗戦時には約七十五万人に膨れ上がった。官吏、憲兵、警察官、教員、駅員など統治機構の
要員だけでなく「小商人から雑貨屋や質屋」にいたるまで、日本社会の周辺部から数多くの「庶民」が
朝鮮に渡り、植民地社会における「民族差別と階級差別」のハイアラーキーを構成した。
植民地支配の壁を乗り越えようとした人もいた。朝鮮の林業と美術工芸研究に尽力した浅川巧も
その一人だが、高崎の『朝鮮の土となった日本人―浅川巧の生涯』(草風館)は、支配構造の下での
「美談」のもつ限界を指摘しつつも、一個人の生きざまが人々に語り継がれ、戦後、
日韓をつなぐ架け橋になっていく過程に光を当てる。
多くの朝鮮人が兵士や労働者として戦争に動員され「南方」にまで展開された。
その中には、日本の戦争責任を問われて、戦犯として裁かれ、処刑された人もいた。
内海愛子は『キムはなぜ裁かれたのか―朝鮮BC級戦犯の軌跡』(朝日新聞出版)など一連の著作で、
捕虜収容所という大東亜戦争の現場に立たされ、国家と歴史に翻弄(ほんろう)された朝鮮人軍属たちの
運命を鮮烈に描き出した。内海の著作は「戦犯」となった彼らが韓国社会で「犠牲者」として
「復権」される契機にもなった。