09/11/29 22:57:19 QArFtwty0
何の気もなく教場へ入ると、黒板いっぱい位な大きな字で、脱税総理と書いてある。
俺の顔を見てみんなわぁと笑った。俺は馬鹿々々しいから、親から金もらっちゃおかしいかと聞いた。
すると生徒の一人が、然し九億は多過ぎるぞな、もし、と言った。九億もらおうが十数億もらおうが
親の銭を、俺が誤魔化すのに文句があるもんかと、さっさと講義を済まして控所に帰ってきた。
十分経って次の教場にでると一つ懲役四年也。但し笑う可からずと黒板に書いてある。
さっきは別に腹も立たなかったが今度は癪に障った。冗談も度を越せばいたづらだ。
焼餅の黒焦げのようなもので誰も誉め手はない。貧乏人はこの呼吸がわからないから
どこまで押していっても構わないという了見だろう。一時間あるくと見物する町もないような
狭い都に住んで、外に何にも芸がないから、脱税事件を日露戦争のように触れちらかすんだろう。
憐れな奴らだ。
子供の時から、こんな教育されるから、いやにひねっこびた、植木鉢の楓見た様な小人ができるんだ。
無邪気なら一所に笑ってもいいが、こりゃなんだ。貧乏の癖に乙に毒気を持ってる。
こんないたづらが面白いか、卑怯な冗談だ。君らは卑怯という意味を知ってるかと言ったら、
自分がしたことを笑われて怒るのが卑怯ぢゃろうがな、もしと答えた奴がある。
やな奴だ。
わざわざ東京から、こんな奴を教えにきたのかと思ったら情けなくなった。