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多趣閑言：生きることの意味 ／静岡
「命の大切さについて話してほしい」。藤枝市の藤枝江崎新聞店の依頼を受けて、２３日に市立大洲中学で中学生を相手に講演した。
重いテーマなので何を話すか悩んだが、取材に基づく体験が具体的でいいと考え、６年前の集団自殺未遂事件を取り上げた。
富士山の樹海近くで２０代の男女４人が車内で練炭をたき自殺を図ったが、１人が苦しさからドアをけり開けたため、全員救助された事件だ。
見ず知らずの関係だった４人はインターネットを通じて集まっていた。身元を割り出し、２カ月にわたり手紙や電話、メールで接触を試みた。
その結果、ドアを開けた男性に会え、別の男性がメールに応じてくれたため、事件を再現して検証。
０３年８月末から「見えない網・追跡ネット自殺」のタイトルで社会面に６回連載した。
講演では、事件の概要を話し、１５歳の時に自殺未遂をした精神科研修医の２５歳男性からの連載に寄せられた反響と、ドアを開けた男性のメッセージを紹介した。
反響は「１０年前、今の自分を想像できなかった。今、苦しんでいる人たちに、生きろとも希望を持てとも強要しない。
ただ、自分で想像できるのは小さな世界でしかなく、与えられる現実は、想像をはるかに超えたものだ」との内容だ。
私自身、若いころに想像していた自分と１０年、２０年後の自分は大分異なるなと実感していたこともあり、この言葉を中学生に贈った。
ドアを開けた男性は今、金融関係の会社に勤務し、元気に暮らす。今回連絡を取ると、３０歳になる男性は「とにかく挑戦してほしい」とのメッセージを私に託した。
消極的な生き方をして自殺を図った自身の反省から出た言葉だ。二つの言葉は、若者に生きることの意味を教えてくれていると思い、講演のまとめで紹介した。
挑戦して生きていく先に自分の想像を超えた人生がある。そう思う。【静岡支局長・照山哲史】
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