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3畳の狭い部屋の壁や床に血痕が残り、ガラスの割れた引き戸には新聞紙が張られている。
壁際に目を移すと、ちゃぶ台に置かれた小だんすの上に茶色い段ボール紙を組み合わせたものが見える。
黒サインペンで4文字「助川英世」。手作りの位牌(いはい)だった。
千葉県九十九里町の無届け無料低額宿泊所で09年11月19日、助川さんが自室で死亡しているのが見つかった。
72歳。暴行の跡があり、30~50代の男の入所者3人が傷害致死罪などで逮捕、起訴された。当時、宿泊所では
助川さんら生活困窮者14人が暮らしていた。位牌が載っているのは残る10人が作った祭壇だった。
浜のそばにある宿泊所は2階建て。各階に5部屋ずつある民家で、持ち主が相続税を
払えず差し押さえられた。1階奥にある助川さんの部屋は雨戸が立てられ、潮風は届かない。
路上生活者に声をかけて生活保護を申請させ、宿泊所に入れて保護費を搾取する--。
そんな“貧困ビジネス”が問題化しているが、ここは様相が異なる。黙っていても自治体が送り込んでくれる。
助川さんもその一人だった。
宿泊所を運営する川崎市のNPO法人「ヤングMACロイハウス」(MAC)はアルコール・薬物依存症者の
更生施設を市内に置いている。07年4月、神奈川県から障害者自立支援法に基づく施設に指定されると、
県内外の自治体から困窮者の受け入れを求められるようになった。自治体は1人につき1日最高6000円を補助する。
入所者の大半は生活保護受給者でもある。MACは保護費(1人当たり月約13万円)から利用料などの名目で
約8万3000円と補助金を得ながら、市内の指定施設の収容能力が低いため、受け入れた入所者を自治体に
無断で九十九里の無届け施設に移し替えていたとみられる。
助川さんの経歴は長年路上で生活していたこと以外不明だ。09年10月、東京都大田区で衰弱しているところを
保護された。区は「個人に関することは答えられない」と言うが、MACの秋元裕久理事によると、区福祉事務所から
「助けてやって」と電話で頼まれ、川崎の施設に受け入れた。食事や入浴の世話をし、間もなく九十九里に移した。
ところが、そこにMACの常駐スタッフはいなかった。逮捕された3人の入所者は「リーダー」と呼ばれ、
他の入所者の生活や金銭の管理を任されていた。MACは毎月、保護費から利用料を差し引き、残金から
生活費として、週1万3000円をリーダーを通じて入所者に渡していた。
事件の発端は、金銭管理を巡るトラブルだった。施設関係者によると、3人は助川さんに金を渡さず、
欲しい物を聞いて買い与えていた。助川さんがこっそり金を抜き取ったとして、3人による暴行が始まった。
鉄製の椅子を助川さんの頭めがけて数度投げつけた。木刀や拳で殴ると「やめてくれ」とうめいた。
翌日、今度は長い角材で50回前後も殴りつけた。死因は外傷性ショックだった。
秋元理事は「おわびのしようもない」と管理責任を認めるが、3人については
「誠心誠意、人助けをやっていた。法廷で証言してもいい」と弁護する。
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ソース(毎日jp):
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