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死亡事故から犯罪まで 広がる迷惑行為の数々
車両を研究する「車両鉄」や鉄道写真を撮る「撮り鉄」、鉄道旅行を愛する「乗り鉄」、鉄道模型を楽しむ「模型鉄」…。
さまざまなジャンルに派生するなど、間口の広い鉄道は、ファンも広がりやすいのかもしれない。
「最近は鉄道に熱中する従来のタイプだけでなく、女性をはじめ、幅広い世代で鉄道に愛着を持ち、親しみをもってくれる人が増えてきていると思う」
ある鉄道会社の関係者は、現在の鉄道ファンの現状についてこう解説する一方、次のように指摘する。
「それにあわせて迷惑行為も増加している」
鉄道各社で頭を抱えている迷惑行為は、ファン同士の撮影場所の取り合い▽鉄道敷地内への無断侵入▽係員のお願いや制止の無視▽
鉄道施設に対する落書き、盗難▽記念撮影をする親子や一般利用客に対する妨害行為や罵声(ばせい)▽チケットやグッズの買い占め-などがあるという。
こうした行為の中には、ただ単に迷惑だけではすまないケースも多い。
平成20年11月には、神奈川県茅ケ崎市のJR東海道線の踏切で、遮断機の横の空き地に三脚を立てて写真の撮影をしていた男性
=当時(47)=が、踏切内に倒れた三脚を直そうとして列車と接触し、死亡するという事故も起きている。男性は近く廃止される列車を
撮影するために踏切を訪れ、カメラには事故直前に通過した列車が写っていたという。
さらには、廃車直前の車両の車号札や、行き先表示板(方向幕)などを記念に持ち帰る「盗(と)り鉄」と呼ばれる不届き者も後を絶たない。
これは、窃盗という完全な犯罪行為だ。ほかにも、正規の運賃を支払わずに不正乗車するキセル行為の方法や、自ら行ったキセル行為の
数々をネット上で喧伝(けんでん)する者も現れているという。
鉄道各社は、対応に苦慮している。
「明らかに違法と思われるものには、しっかりとした対応をさせていただいている」と話すのはJR東日本。
ただ、実際には、そうはうまくいかないようだ。ある鉄道会社の職員が打ち明ける。
「迷惑行為といっても、正規の運賃を払っている以上、乗客であることに違いはない。危険だったり、違法だったりするならともかく、
乗客同士のトラブルではあまり強くモノも言いづらい雰囲気はある。本来なら一般乗客の利便が一番優先されるべきなのだが…」
原因はマナーを学ぶ機会の減少? コミュニケーション能力の低下?
では、なぜ迷惑行為が増えてきているのだろうか。
「マナーを教わる機会が減っている、というのはあると思う」と話すのは、日本の鉄道趣味誌の中で最大の部数を誇る「鉄道ファン」の編集部だ。
同誌では誌面やインターネットのホームページに掲載する鉄道写真を募集しているが、明らかに危険な場所や鉄道敷地内など立ち入り禁止の
場所で撮影したと思われる写真もしばしば送られてくるという。編集部は「以前はグループで写真撮影を撮ったりすることが多く、その中で
さまざまな決まり事を教わることが多かった。しかし、今は“一匹おおかみ”的な人も増え、これまで鉄道愛好家が守ってきたマナーを学ぶ機会が
少なくなってきたのではないか」と指摘する。
「個々人のコミュニケーション能力が低下している。『お客さま』の肩書を乱用し『客だから何をやってもよい』という間違った認識の人が
多くなったのではないか」とするのは鉄道会社の関係者だ。さらに「鉄道ブームに便乗しただけのテレビ番組や出版物も氾濫(はんらん)している。
風変わりな鉄道ファンを追いかける番組や、いいかげんな内容の出版物は、新規ファンの誤解や誤ったブームを形成する土壌になっている」と
昨今の間違ったブームの方向性に警鐘を鳴らす。
次に鉄道ファンが大挙して結集するとみられるのは、3月に行われるJR東日本のダイヤ改正前日だ。この改正では、上野駅発の数少ない
ブルートレインとして知られる寝台特急「北陸」と、懐かしいボンネット型の先頭車を持つ夜行急行「能登」の廃止が決まっており、通勤型車両
「209系」の引退の比ではない“騒動”が予想されている。
JR東日本では、ガードマンや普段デスクワークをしている応援社員を含めて80人近くが、ホームなどでの警備に当たるという。