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「この高校、本番で四十点必要? 無理…」
「おまえ、投げやりになるな。これやってみろよ」
中学生はため息をつきつつ計算問題を解いていく。
「できるじゃん。計算問題だけでも全部できれば四十六点取れる。あきらめちゃだめだよ」
東京都江戸川区で週二回、高校受験を控えた生活保護世帯の中学生に無償で勉強を教える「江戸川中3勉強会」。
二十畳ほどの和室に十五人の中学生、十人の“先生”。その一人として同会を率いる徳沢健(39)は区職員だ。
ほかの先生は学生、社会人などで、年間二十万円の運営費は区職員のカンパでまかなっている。
九九ができない子、アルファベットが書けない子もいて、徳沢は根気よく面倒を見続ける。勉強会のあとスタッフは子どもの家庭環境、悩みなどを情報交換。
自宅を訪ね、高校説明会にも付き添い、応援する気持ちを行動で示し続ける。ある卒業生は徳沢を「あんなに僕の将来を考えてくれた人はいない」と慕う。
一方、徳沢は「『望みを捨ててはいけない』と子どもたちから教えられてきた」と話す。
不在がちな親に代わり幼い妹弟の面倒を見ている子、心痛から自傷行為に走る子も。徳沢は、逆境からけなげに立ち上がる姿に力づけられてきた。
最初に面倒を見た父子家庭のA夫は不登校で内申点はオール1。「勉強教えて」と意欲的に取り組んだが全日制に合格できず納得して定時制に。
母子家庭のB子も不登校で担任から「高校は無理」と言われても努力し全日制普通科に合格、上位の成績で卒業した。
毎年ほぼ100%の高校進学実績をつくってきた勉強会は、中学校との連携を望む。
「連携でもっと子どもたちの力になれる」と徳沢。「公的な機関がケアできなかった子は公的に面倒をみるのが本来の姿。
不登校高校進学希望者や、高校中退者の進学を助ける公立フリースクールがたくさんあるといいのだが」
一昨年秋のリーマン・ショック以降、私立より学費の安い公立高校の受験倍率は急上昇。最後の受け皿だった定時制も入りにくくなった。
徳沢は「高校進学にこだわるのは、自分の人生を考える第一歩だから」。勉強を通じて絆(きずな)を育て「応援してくれる人は必ずいることを伝えたい」。
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