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知的障害者3000人地方の施設へ
東京出身の約3000人の知的障害者が、東北や北関東などの施設で暮らしている。都内の施設不足を
補うため、都が地方に展開している都外施設の入所者だ。大半の人が一生を施設で送る中、故郷の
東京に帰るのを待ち望む障害者がいる。
「皿を洗うときは、水を流しっぱなしにしないように……」。青森県つがる市の都外施設「つがるの里」に
入所する板橋区出身の石垣郁(かおる)さん(18)は流し台で手順を口にして確認しながら食器を洗った。
知的障害の程度は軽いが、興奮すると話し相手の腕を強くつかんだりすることがある。施設に空きがない
都内をあきらめ、今年4月からここで暮らす。
洗濯など身の回りのことをこなし、施設内で使用済み消火器の解体作業をする。週末は外食や買い物。
一般的な暮らしに近い環境で他人とのかかわり方や金銭管理の方法などを学ぶ。「東京に戻りたい。
だから力をつけたい」という。
◎
1995年開設のつがるの里は定員80人のうち72人が東京からの入所者だ。今秀則園長(58)は
「望んで来た人はいない。帰りたい人はできれば帰してあげたい」と言う。施設は2004年以降、
障害者が支援を受けて共同生活するグループホームを探し、8人を都内などに帰した。
その一人で2年前から社会福祉法人「原町成年寮」が運営する江戸川区のホームで暮らす
檜山文男さん(59)は「自分の生まれた土地だから慣れている。東京の方がいい」と笑顔で話した。
放浪癖が強く家族が支えきれず、95年10月、つがるの里に入所した。しかし、東京への思いは
断ち切れず、訓練に励んだ。今は放浪癖もほとんどなくなり、同法人の作業施設に通い、
週末は浅草散策などを楽しむ。
同法人で檜山さんを担当する鹿野均さん(46)は「都内に受け入れる福祉基盤があれば、
遠く離れた施設に入る必要はなかった」と指摘した。
◎
だが、つがるの里のように都内へ帰るための支援をする都外施設はわずかだ。費用負担も施設任せで、
つがるの里はグループホームを探すための出張費などでこれまで計約600万円を支出した。受け入れる
都内の態勢も脆弱(ぜいじゃく)だ。今園長は「都外施設への財政支援の充実と、受け入れ側の養成に
力を入れてほしい」と都に要望している。
障害が重くて帰郷できないケースもある。都社会福祉協議会が07年、都外施設の入所者を対象に
「暮らしたい場所」を尋ねた調査では4割以上が回答をすること自体ができなかった。
世田谷区の会社役員白土一郎さん(66)の長男(39)も、東京に戻りたいかどうか意思表示できない。
当初は帰省のたびに施設に戻るのを嫌がったが、今はその様子はない。白土さんは「東京では
受け入れてもらえないと分かったのかもしれない」と推し量る。
NPO法人「ピープルファースト東京」で知的障害者を支援する安里芳樹さん(52)は、「障害者と
社会を橋渡しする支援」を提案する。障害者が周囲に迷惑をかければ謝り、理解を求め、本人には
自立生活のマイナスになることを丁寧に伝える方法だ。「これを繰り返せば社会の理解も深まり、
都内でも受け入れる機運が広がるはず」。安里さんは、こう話した。(青森支局 安田武晴)
(2009年12月24日 読売新聞)
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