09/09/04 11:38:29 0 BE:285373038-S★(500003)
>>1の続き
自民党はよく「中道右派」な政党だと呼ばれる。しかしそれは単純すぎる、いい加減なくくり方だ。
確かに自民党は防衛や教育、そして一部の社会政策について本能的に保守的な感覚をもってはいる。
しかしほかの民主国家の多くで同じことをやったならば「中道左派」と呼ばれるような、
富の再配分的な政策を追求してきたことも事実だ。自民党にとって何よりも重要な政治課題は
「権力」そのものだった。そして自民党の存在意義は、当選したいがためにその旗印の下に
集まる人々のパトロンになることだった。しかし今となっては、自民党が何のためにあるのか
よく分からなくなってしまった。
長年にわたり日本政治を見つめてきたコロンビア大学のジェリー・カーティス教授は、
自民党について「分裂するとは思わない。これから党としてどうするのか、野に下り考える時間は、
4年間もあるのだし」と言う。しかし常に潤沢な資金で潤っていたからこそ動いていた
自民党の政治システムについては、「自民党は新しい党として再生しなくてはならない」とも指摘する。
「ばらまき政策をばらまき続けることで政権復帰しようとしたら、自民党は二度と復帰できないだろう」と。
ゆえに今後の展望について、こういう展開もありえる(その可能性は確かに低いが)。
つまり自民党はこのまま衰退して消えてなくなり、民主党はただ同じような政権与党として
自民党の後釜に座るだけという展開だ。現時点で早くもすでに、来年の参院選で議席が危うい
自民党議員たちが必死になって民主党に次々とくら替えするのではないかと、
そういう話しも出ているほどなので。
そのほかにもう一つ、ありえそうなシナリオもある。利権誘導型の政治から解放された日本の有権者は、
あっちの政党こっちの政党へと激しく行ったり来たりするかもしれない。なんといっても今回、
野党に地滑り勝利を与えた日本の有権者は、わずか4年前、小泉純一郎氏率いる自民党を
大々的に信任したのだから。与野党が激しく入れ替わる政治というのも、ある種の二大政党制なのだろうが、
それは実に頼りない不安定な体制だ。
あるいはこうして書いてきたいずれも、日本では実現しないのかもしれない。政情は安定し、
米英的な二大政党制が徐々に形成されていくのかもしれない。民主党はやがて社会民主主義的な
政党として浮上するかもしれないし、自民党はそれに対する選択肢になりえる保守政党になるのかもしれない。
しかし日本の有権者がこれまで疑いようもなくはっきりと示したことはただ一つ、
「日本人も半世紀に一度は気が変わることもある」ということだけだ。
こういう事態になっても尚、自分たちには選択肢が本当にあるのかどうか、有権者は確信できずにいる。
世論調査を見ても、個々の日本人に話を聞いてみても、日本の有権者は民主党の政策に心から同調して
投票したというよりも、自民党に対して反乱を起こしたのだ。しかしそれでも日本人は、
自分たちが本当の意味で主権を行使した、あるいは影響力を発揮したのかどうか、確信できずにいる。
その証拠に30日の夜、こんなことがあった。あるイタリアのテレビ・プロデューサーが
「民主主義の歴史的勝利をあちこちで祝っている日本人の画像をとってこい」と、
カメラマンを外に送り出したのだが、そんな光景はどこにもなかったのだという。
「何も録画できなかったんだ」とこのプロデューサーは嘆いていた。