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読売ジャイアンツのターンアラウンド
～球界盟主であることの桎梏～
千葉ロッテ・マリーンズ、大分トリニータ、コンサドーレ札幌、横浜ベイスターズ、東北楽天ゴー
ルデンイーグルスと、当コラムではプロ野球やＪリーグの各チームについて書いてきましたが、「と
ころでジャイアンツのターンアラウンド（事業再生）についても考えてくれよ」と知人たちから言わ
れることが増えてきました。今回から３回にわたり読売ジャイアンツのターンアラウンド・マネジメ
ントを採り上げます。
昨年のシーズンでセ・リーグ優勝を決め、巨人ナインに胴上げされる原辰徳監督（中央上）（2008/1
0/10 神宮球場）【時事通信社】
プロ野球の球団改革について論じるメディア記事は数多く存在するものの、ジャイアンツの球団改
革について正面から述べたものをほとんど見たことがありません。最近発刊されたブルータス7月15
日号は「全国民に捧げる読売巨人軍特集。」ですが、ＯＮをはじめとするノスタルジー中心の記事で
あり、全１６６ページのうちで経営に関する記述は、ジャイアンツの経済効果について語った４ペー
ジ分と渡辺恒雄読売巨人軍取締役会長のインタビューぐらいのものです。渡辺会長の記事においても
、先日たまたま学会で聞くことのできた別の最高経営幹部の講演においても、球団改革についての具
体的で、ビックピクチャーを描くような内容は見られませんでした。
筆者の考えるところ、ジャイアンツのターンアラウンドは、「すごく簡単」であり、それゆえに「
すごく困難」である代物です。
「すごく簡単」と言う意味は、球界平均の軽く２倍以上ある２００億円を超える売上高、全国に広
がる絶対多数のファンという「持てる球団」だけにターンアラウンドの選択肢は限りなく広く、その
方策もマリーンズ改革で筆者たちが行ったようなゼロから立ち上げるような困難に満ちたものではな
く、既に存在する経営資源を有効に活用すればそれほど難しいものではない、ということです。なに
せ日本のプロスポーツ業界における「業界第一位」のリーディングカンパニーなのですから・・・。
全国波での放映権収入が過去のような１試合１億円と言われる値段に戻るのは当面不可能でしょう
し、全国のファンがプロ野球＝ジャイアンツと信じて疑わなかった時代に戻ることはありえないと言
ってよいでしょう。しかしながら、豊富な資金力で集めた名選手を核として１９６５年からＶ９を実
現したように、資金面での優位性を効果的に使えば競技面での絶対的な優位性を今後も維持し続ける
ことは可能なはずです。
また、利益の水準も、これまでの減少により現在数十億円と言われていますが、使えない高年俸外
人選手を沢山抱えるといった選手費用における冗費的な支出の見直しや効率化を少し真面目に行った
だけで数十億円程度なら上乗せが可能となるはずです。
ところが、ところがです。今シーズン前半戦のようなぶっちぎりの首位街道ばく進が、もし今後何
年間も続いたとしたら一体どういうことが起こるのでしょう？筆者の見るところ、恐らくベイスター
ズ、スワローズは（彼らが今の経営の方法を大きく変えない限り）何年か後に経営的に立ち行かなく
なるでしょう。中日、広島についても優勝の可能性が大きく遠のくことによって経営的な打撃は大き
くなるものと思われます。つまり、今シーズン前半のような本来ジャイアンツに求められている強さ
が実際に達成されてしまうことはジャイアンツ単独では良いことのように見えるのですが、リーグ全
体では存亡の危機に結びついてしまうかもしれないのです。ジャイアンツのターンアラウンドは「す
ごく困難」と指摘した由縁です。>>NEXT
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