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「夢や、おれは夢を見てたんや」
大阪府富田林市の国道で16歳の新聞配達員をはね、約6・6キロも車の下で引きずって
死亡させた大工の市川保被告(41)は当初、そう供述していた。飲酒運転の発覚を免れる
ための身勝手な逃走についても「記憶にない」と強弁をした。犯した罪の大きさから目を
背け続けたが、車や路面の傷、再現実験から次々と浮かび上がる証拠を前に、とうとう
「相手を引きずっていると思った」と殺意につながる供述を始めた。最後は「悔やんでも
悔やみきれない」と反省の態度も示したという。「午前2時を過ぎると検問はない」という
“都市伝説”を信じたのか。市川被告の罪は重い。
「被害者は生きたまま車の下で引きずられていた。それを『覚えていない』などという
ことはありえない」。捜査員の1人は憤りをにじませながらそう話す。
被害者の東川達也さんの死因は長距離の引きずりで後頭部を激しく
損傷したことによる脳挫滅。バイクで新聞配達中に追突されたため、
大きく前方にはねとばされたとみられるが、それ自体は致命傷には
なっていなかった。父親の雅信さん(42)は「救急車を呼んで
逃げてくれていれば…」と言葉を詰まらせるが、市川被告は「飲酒
運転がばれるのが怖かった」と、アクセルを踏み続けていた。
市川被告が東川さんをはねたときには体内に0・15ミリグラム
以上のアルコール分があったと推定されている。事件当日、市川被告は
直前まで、河内長野市内の中華料理店と松原市内のスナックで
ビールやウイスキーを飲んだ。ただ、2軒目のスナック近くの国道
309号は飲酒検問が多い幹線道路。日時によっては市川容疑者も
検問にかかる可能性があったが、周辺では「午前2時を過ぎると
検問はない」という「都市伝説」が流布していた。
根も葉もないうわさを耳にしていたのか、市川被告がスナックを
出たのも午前2時半ごろ。309号と同様に検問が多いといわれる
国道170号を避けるように旧国道を使って帰宅した。雨の中、
未明からまじめに新聞を配っていた東川さんをはねたのは、その迂回
(うかい)路を使った帰宅途中のことだった。
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