10/06/06 18:49:07 utHQfSjE0
特段の事情があるので悪意の受益者ではないとの被告の主張は失当である。
1 「特段の事情」については最高裁判所第二小法廷平成19.7.13判決の中で具体的に示されている。
「貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるというためには,
平成11年判決以後,上記認識に一致する解釈を示す裁判例が相当数あったとか,
上記認識に一致する解釈を示す学説が有力であったというような合理的な根拠があって上記認識を有するに至ったことが必要であり,
上記認識に一致する見解があったというだけで上記特段の事情があると解することはできない。」
2 被告は貸金業の登録業者として,原告と包括的消費貸借契約を締結するに際し,
原告から弁済を受ける利息,損害金が利息制限法の法定利率を超えていることを認識し,
かつその後なされた取引も取引履歴のとおり貸付けと弁済が行われたことを把握している。
かかる認識からすれば,被告は原告が借入と返済を繰り返すうちにいずれ過払の状態になることを認識していたことは明白である。
つまり,貸金業規制法43条の要件事実を充足するような適法な要件を具備した書面を原告に交付し,その書面の写しを保管し,
訴訟において証明できるほどに整えていない限り,善意と言えない。
一般に,不当利得者が,その利得にかかる法律上の原因の不存在を基礎づける事実につき,
これを認識している場合には,当然に「悪意の受益者」となるのであって,法令の存在を知らなかったり,
誤った法解釈に基づいて法律上の原因があるものと誤解していたりしたとしても,そのことは結論に影響を及ぼさない(「法の不知はこれを許さず」)。
以上のことから,原告とトラブルなく良好な関係であったので,弁済は任意であったと認識していたと被告は主張した。
これは上記判例の合理的根拠とは到底いえない。よってやむを得ない特段の事情があるとした被告の主張は失当であり,被告は悪意の受益者と推定される。