09/11/18 06:35:53 XVyOhsZJ
沖縄の米軍基地は、軍備を増強する中国と核開発を続ける北朝鮮をにらむ米国の
アジア戦略の要だ。普天間問題も中国や北朝鮮との関係も踏まえた日本のアジア政策
全体から考える必要がある。沖縄での米軍のプレゼンス(影響力の存在)を下げるという
選択肢が現実的には考えにくい以上、県外移設は外交政策としては選択すべきではない
だろう。本欄で、普天間問題への対応は外交問題以上に政権交代の象徴だから、結論を
急がず「沖縄の民意」検証をと訴えた政治部・上野央絵(なかえ)記者(10月14日)、
沖縄の民意は明らかだからあくまで県外移設へ努力をと求めた那覇支局・三森(みもり)
輝久記者(11月10日)と、私は意見を異にする。
沖縄県内の米軍嘉手納(かでな)基地への統合案もあるが、嘉手納はアジア最大の
米空軍基地で、中国の海空軍と向き合う。日本のアジア政策と安全保障に深く絡む
同基地が、統合によって米側が主張するように機能低下するならば、日本政府も容認
できないはずだ。
対米追従から脱却し、アジア政策を自ら考えるということは、日本の安全保障上必要と
判断すればそのツケを過度に米国に回さないことも含まれる。鳩山氏は衆院選で県外
移設を訴えたが、国内事情だけで問題をゆがませるべきではない。批判は甘受して前言を
撤回すべきだと考える。
日本は自国の安全保障を日米2国間の課題としてしか考えない傾向が強く、東アジア
地域全体の安全保障に主体的にかかわることは避けてきた。日米同盟至上主義の
結果、日本はまだ本当にはアジアの一員として受け入れられていないというのが現実だ。
北朝鮮船舶の貨物検査特別措置法案で、政府は自衛隊の関与を外した。だが、北朝鮮の
大量破壊兵器拡散を防止するため今後、自衛隊も必要になるという課題を突きつけられる
可能性は残る。自衛隊の活用を政府がためらうのは、日本とアジアの関係にいまも奥歯に
物が挟まったような感覚がつきまとっているからだろう。首相は15日にシンガポールで
行ったアジア政策演説で「60年以上がたった今もなお、真の和解が達成されたとは
必ずしも考えられていない」と自らに言い聞かせた。
首相は日米首脳会談で、大統領に広島訪問を要請した。しかし、それを阻む「日本の
侵略戦争を終わらせた良い原爆」という歴史認識は、米国民だけでなく東アジアの
諸国民にも根強い。米国が「アジアの要」と位置づける日米同盟の「進化」を目指すなら、
まずアジアで受け入れられなければいけない。歴史問題とも向き合いながら、地域に
責任を持つ一員として行動し、信頼を得ることが、「対等な日米関係」の第一歩だ。