09/08/15 17:26:05 2EFdm6VB0
「たすけて・・・!」
足元の瓦礫の中から声がした。
幾重にも折り重なったコンクリートの柱に押しつぶされる形で、一人の女性が下敷きになっていた。
女子供の力では到底動かせそうにない圧倒的な重量物を前に、マリは苦い表情を浮かべた。
私は頭をめぐらせた。この女性をどうすれば助けられるのか。助けを呼びに行くべきか。
「一度戻って、助けを呼びに行きましょう。時間が無いわ」と、マリは言った。
バランスの悪いコンクリートの柱郡がいつまで持つか分からない状況だ。
「ユウキ!行くよ!」と弟の手を掴もうとしたが、空を切った。
その刹那、突然ユウキが両の掌を合わせ、女性に覆いかぶさる瓦礫へ押し当てた。
すると、ユウキを中心に円陣を描いて青白い光が現れ、瓦礫の山が眩い光に包まれた。
眩しさから目を細め、再び女性の方へ目をやると、そこには信じられない光景が広がっていた。
コンクリートのアーチ――――
たった今まで瓦礫の山だった場所に、女性を避ける形でアーチが掛かっていた。
何が起こったか理解できず、ただ呆然としている、下敷きになっていたはずの女性。
隣いるマリも、信じられないといった表情でアーチを見つめていた。
私は狼狽する事しかできず、事の発端となったユウキに説明を求めるため、彼に駆け寄ろうとした。
すると、アーチの前に立っているユウキが私達の方を振り向き、言った。
――――自惚れるな、人間。