11/11/15 16:55:22.06 oXYexSVSO
二年前からある同人小説。
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それは確か、なにかのドラマだ。
そう、ドラマだ。
休みの、土曜日の夜にやっていた。
タイトルは、“モナリザの微笑”。
恋人が死んだ瞬間にタイムスリップする男の物語。
いつも決まって、デートにきていた美術館のモナリザの絵の前にタイムスリップする。
何度も何度も、毎回タイムスリップしてたから10回くらいはしてたはずだ。
男は死の運命に立ち向かい、そして最終回、ついに恋人は死なず、二人は幸せに未来を生きていく。そんなオハナシ。
夏休みが始まってすぐの8月12日、Aが交通事故に遭って、死んだ。
夏期講習の休憩時間その知らせを受けて、病院の霊安室で冷たくなったAに縋って泣いた瞬間が最初。
気づいたら、俺は一週間前の8月5日の朝に戻っていた。
何が何だかわからないままもう一度Aが交通事故で死んで、また8月5日に戻って。それで気づいた。
これはモナリザの微笑なんだって。
それから俺は、Aが死なないように何度も一週間を繰り返した。もちろん夏期講習なんかいかなくなったし、ずっとAにそばにいるようにしてる。
でもAは死ぬ。
8月12日が来る前に死ぬときもあるし、例え12日まで持っても、8月13日の朝、俺が起きると、死んでる。会社に行く途中、事故に遭ったり変な輩に襲われたり、死に方は様々だけど、死ぬたびにどんどん悲惨なことになってる気がした。
ついさっきも。ここに戻る前に警察の人が見ない方がいいって言ったAの死体は、もう誰だかわかんないくらい顔がぐちゃぐちゃだったし。
(Aが俺の死を繰り返している事が発覚する)
そう言うAはどこか達観してて、さすが千年生きてきただけのことはあるのかもしれない。俺には出来ない考え方だった。
たぶん今までAは俺を守ろうとして死んでいて、そして俺もAを守ろうとして死んでたんだろう。自分が死んだときの記憶は残るわけないから、今までお互いが気付けなかったのはしょうがない。けど、それにしたって、やっぱりこんなのあんまりだ。
(Aと俺の時間はこれ以上進まないと理解して同時に死ぬ事を決意)
今きっと、俺たちは世界で一番幸せ。
綺麗事だと言いたきゃ言えばいい。笑いたきゃ大声で笑えばいい。
微笑なんて上品なものじゃなく下品にげらげらと好きなだけ嘲笑えよ。
嘲笑って、声がかれて喉が裂けるまで笑い続けて血を吐いて狂って死んじまえ。いくら嘲笑われようが、これは俺たちのハッピーエンド。
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日付はそのカプのお祭りの日。