11/09/15 10:23:05.01 K366cZ62
ある日の事。
シュープラザという靴チェーンの店へ息子の靴を買いに行った。
片田舎の平日の午後という時間帯という事もあり、広い店内には自分ともう一人の客しかいない。
店内をウロウロと物色していると見た目50代の「ふくよか」を通り越した体型のおばさんが入って来た。
3人の店員がすかさず「いらっしゃいませー」と声を上げる。
自分は丁度おばさんが入って来た入り口正面の商品棚越しにいたため、見るつもりは無くともそのふくよかを通り越したおばさんが視界に入って来た。
ちょっと汗ばんだ、整っているとは口が裂けても言えない顔付きのおばさんが店員に話しかける。
「今日ここで壊れたテレビを回収してくれるって広告に入ってたんだけど、ここの店でいいのよね?」
何やら耳を疑う会話が聞こえて来た。
もちろんここはシュープラザという靴屋だ。
一瞬で好奇心を煽られた私は子供が初めて動物園のゴリラを見る様な眼差しで、Photo Shopで修正が必要そうなそのおばさんに釘付けになった。
若い女性店員が受け答える。
「えーと、そういった広告は出していないと思いますが…」
おばさんは少し困惑した様子を見せたが食い下がる。
「えー?でも広告に入ってたからここで引き取ってくれるんでしょ?」
女性店員も困惑した様子で説明する。
「いえ、あの、当店ではテレビの回収はしていませんが……」
おばさんの汗が増す。
「えー?そうなの?んじゃどこに行ったらいいの?」
女性店員「いやーちょっと私どもにはわかりませんが」
おばさん「えーせっかく持って来たのに…ここじゃないの?」
店員「はいぃそうですねぇ」
やりとりの一部始終を商品棚越しに見て「ブッ!」っと思わず吹き出した自分。
すぐそばのレジにいた男性店員を見ると、笑いを堪えた顔を見せない様に顔を伏せていた。
おばさんは納得いかない様子だったが諦めて店を出て、旦那らしき男が車内で待っている、乗って来たと思われる車に乗り込みテレビの廃品回収をしていない靴チェーン店を後にした。
私は息子のゴーカイジャーの靴は買わないまま、おばさんが出て行って数分後に同じく店を後にした。
私は靴屋から割と近くのauショップへまだ触っていないWindows Phone7.5を見たくなり、その足で向かった。
auショップに着くと、早速実機を出してもらい1~2分も経った頃別の客が入って来た。
私は壁側へ向いてそのまま黄色のWindows Phoneを触っている為、入って来た客が男か女か解らない。
「すいません、今日ここでテレビを引き取ってくれるって広告に入ってたんだけど」
女の声で、ついさっき聞いたばかりの聞き覚えのある声とフレーズ。
奇跡が起こった瞬間だった。