15/01/01 23:32:59.01 E/ieywU70
どこで狂ったんだろう。半分手にしていたはずの遺産だった。
事が大きく回り出し何もかもが自分から遠ざかる。
あざみは何度も思い返しては怒りに歯噛みした。高名な作家に献身的な女として本してもらい
テレビからオファーを受け、コメンテイターとして活躍し、という歪な夢は瓦解しまった。
それが自分の肥大した自己顕示欲や杜撰な愚かさだとはついぞ気づかない。それがあざみという女だった。
ジジイの世話をしたのも、禿の作家と寝たのもすべてが意味がなくなると焦燥感にかられ
手当たり次第に電話しては訴える、裁判すると騒ぎたてたが思い通りにいかず、いっそイタリアに
逃げようかと考えたが捨てるには惜しい金だった。
すでに瓦解は始まっていたが、分別をなくしたあざみに危機感を持った人間は泥船から逃げ出し
沈み行く中しがみついているのはあざみと作家だけになっていた。
もちろん世間の空気も変わり連日この事件を報道している。
そしてその日がきた。朝のワイドショーを見ながら画面に悪態をついていたあざみのマンションのインターフォンが鳴る。
またマスコミかと勢い込み出たあざみに画面の向こうの厳めしい男が「大阪府警のものです」と応答した。
あざみは自問する。なんなん、どうしてこなったん。
取調室の窓から入る冬の光に映えるきれいに磨き上げたネイルを見つめながら思った。
黒い報告書「後妻業の夢に破れた「育ちのいい」女」(実際の事件を元にした創作です)
最後はこうなることを希望します。