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宇都宮弥三郎頼綱が家の子郎党を従えて、済々として武蔵国を通ると、熊谷の入道直実に行き会うた。直実がそれを見て、
「すばらしい威勢だなあ。しかし、いくら家来を大勢連れたからとて、無常の鬼という奴が来れば防ぐことは出来ないで、
お前いつ迄もそうして強者顔をして威張っていたからとて念仏の行者にはかなわないぞ。弥陀如来の本願で念仏するものは悪道に落されず迎えとられるのだ。
念仏をすることは一騎当千の強者になるよりも豪いことだぞ。お前も軍人なんぞは早く止めて念仏をしろ念仏をしろ」
といわれたのが頼綱の胆にそみていた。直実の奴うまく侍を卒業しやがったな。おれも負けるものかという気になって、大番勤仕の為に京都へ上った序に、承元二年十一月八日のことであったが、法然を勝尾の草庵に訪ねて念仏の教えを受け一向専修の行者になってしまった。