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読売新聞2023/12/12 13:58
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埼玉県の知事や市町村長、企業経営者らがバンドの生演奏で歌声を披露する、テレビ埼玉の「埼玉政財界人 チャリティ歌謡祭」が、来年１月１日午後７時から放送される。これが３２回目。ＳＮＳでは「埼玉の奇祭」とも呼ばれる名物番組だ。その収録現場をのぞいてみた。（伊賀幸太、岡田実優）
収録は今月２日午後、大宮ソニックシティ大ホール（さいたま市大宮区）で行われた。今回は政財界の１６人が出演する。会場はその支援者や企業の社員ら約２５００人でほぼ満員。歌に合わせ、観客がうちわやペンライトを振るのが毎年の光景だ。
「明けましておめでとうございます」。ドラムロールが鳴り響き、埼玉出身のフリーアナウンサー・堀尾正明さんのかけ声で開幕した。ＮＨＫ紅白歌合戦の司会も務めたベテランが進行役だ。冒頭から大みそかと元日が入り交じり、頭が少し混乱する。
一方、出演者は真剣だ。自分で歌を選び、衣装や演出にも趣向を凝らす。
３人目にステージに上がった埼玉りそな銀行の福岡聡社長（５８）は「利用者のそばにいる」という決意を伝えようと、「虹」（菅田将暉）を独唱した。ドラえもんの映画に使われた曲の歌詞には「一生そばにいるから」とある。福岡社長は青いダウンジャケット姿で、首には鈴をつけて登場した。
桶川市の小野克典市長（５５）は６回目の出場。「川の流れのように」を熱唱した常連は、美空ひばりを意識したメイクと豪華な服装で会場を沸かせた。
昨年初当選した女性市長２人は、ともに初出場。蓮田市の山口京子市長（６６）はウグイス嬢２人と昭和のヒット曲「恋のバカンス」（ザ・ピーナッツ）を披露した。キレのあるダンスや衣装替えにも挑戦し、「市議会での答弁よりも緊張した」。草加市の山川百合子市長（５４）は、ジブリ映画「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」（木村弓）を声を震わせながら歌いきった。亡き夫との思い出の曲だという。
トリを飾ったのは、大野元裕知事（６０）だ。「埼玉県民に夢を追い求めてほしいから」との思いを込め、「未来へ」（Ｋｉｒｏｒｏ）を選曲。「埼玉県人」と書かれたネクタイを着け、地元・川口市の企業経営者らと美声を響かせた。
ステージ上の緊張は客席にも（おそらくはテレビの前にも）伝わるが、懸命に歌うその姿からは勇気をもらえる。ゲストとして招かれた春日部市出身のお笑いタレント・はなわさんは、「紅白と同じくらい、両親が出演を喜んでくれた」と語った。いまは「奇祭」と呼ばれようが、いずれは年始めの定番として浸透していくかもしれない。
◆埼玉政財界人 チャリティ歌謡祭＝歌で埼玉を元気にしようと、１９９２年にテレビ埼玉と政財界人が共同で始めた番組。２０１５年頃からは、元日のＸ（旧ツイッター）で番組名がトレンド入りするようになった。