21/09/04 21:27:45.18 CAP_USER9.net
暴力と差別。スポーツの価値を傷つける二つの問題が一気に吹き出し、プロ野球北海道日本ハムが揺れている。
「道民球団」の理念を掲げながら、なぜファンと向き合って十分な説明をしないのか。北広島市に建設中の新球場への移転まであと２年。次のステップへ正念場を迎える中、道民が抱える疑問や怒りは簡単に消えそうにない。
■「もう応援しない」
「皆さまを失望させてしまった。『ファンサービスファースト』の原点にいま一度立ち返り、活動を見つめ直す」。
日本ハムは８月３１日午後、川村浩二球団社長名の文書をホームページに掲載した。
同僚選手への暴力行為で出場停止処分としていた中田翔選手（３２）を巨人へ無償トレードした際、本人に北海道で記者会見をさせなかったこと。
さらに試合前の「円陣」を紹介する球団公式ツイッターの動画に、コンゴ人の父を持つ万波中正選手（２１）の肌の色をからかう発言が含まれていたこと。文書ではこの２点について謝罪した。
会員制交流サイト（ＳＮＳ）はすぐさま反応。「今からでも球団が会見を開くべきだ」「謝罪が遅すぎる」「もう応援しない」。批判的なコメントであふれかえった。
出張先の東京から札幌に戻った川村社長は同日午後８時ごろ、北海道新聞など報道各社の強い要望を受け取材対応した。
中田選手の暴力行為を発表した８月１１日から９月１日まで、栗山監督や球団社長、そして吉村浩ゼネラルマネジャー（ＧＭ）は、テレビや新聞のカメラが入った「記者会見」を開いていない。
一方、中田選手が公の場で初めて暴力行為を謝罪したのは、移籍後の２０日、巨人の球団事務所（東京）での記者会見だった。
危機管理コンサルタントの河上貴己さん（５６）は「なぜもっと早くファンに説明しなかったのか。謝罪文には原因、背景、今後の対応などを詳しく書いていない。不祥事対応として、最近では珍しいくらいダメな事例」と指摘する。
チームＯＢで野球解説者の岩本勉さん（５０）は「ファンファーストとうたっているチームだからこそ、球団から説明があると思っていた」と指摘。
２００３年まで選手会長を務め、０４年の北海道移転当時はファン獲得に奔走した経験から、「心が離れてしまう。ファンとファイターズが互いに支え合ってきた関係が、崩れてしまう」と嘆く。
■甘い対応 再発懸念も
日本ハムは中田選手の巨人移籍に伴い出場停止処分を解除した。これはルールに反していないが、処分期間はわずか９日間。中田選手は移籍翌日、東京ドームで公式戦デビューし、その後もプレーを続けている。
一般社団法人スポーツ・コンプライアンス教育振興機構（東京）代表理事の武藤芳照さん（７０）は「トレードによって暴力行為をうやむやにし、野球界の信頼を傷つけた。プロ選手はロールモデル（模範）であるべき、という意識が見えない。北海道で会見しなかったことも、ファンに対する敬意が感じられない」。
スポーツ危機管理学が専門の南部さおり日本体育大教授も「子どもたちが憧れるスター選手が、刑事事件になってもおかしくないことを起こし、何事もなかったように短期間で復帰した。あり得ない。ファンは納得しない」と話す。
球団は暴力行為を公表した際、「（中田選手は）同僚選手との会話の中で、突発的に腹を立てて、手を出した」と説明した。
スポーツライターの元永知宏さん（５３）は、学生球界の暴力の実態を取材してきた。「暴力を受けた選手が指導者になると、『殴られたから今の自分がある』と考えてしまうケースが今もある」とした上で、中田選手を巡る動きについて「暴力をなかったことにするような対応だ。プロ野球は『暴力はどんな時代でも許されない』というメッセージを発信しなければならないはずだ」と強調する。
人種差別的発言が含まれる動画は８月中旬、球団が批判を受けて削除。謝罪文で「確認がいたらないまま動画を公開したことは、管理体制が不十分だった」「コンプライアンス研修を実施し管理体制を強化する」と説明した。
社会学が専門の大阪市立大研究員、ケイン樹里安さん（３２）は「問題は発言が表に出たことではなく、発言そのもの」と指摘。
「選手もファンもいろいろなルーツを持つ人がいる。差別は常に身近なところにある。日本ハムは反差別に向けて、継続的に研修を行うなど具体的な手を打ってほしい」と求めている。（横山清貴、花城潤）
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