21/01/23 23:32:30.22 CAP_USER9.net
『その女、ジルバ(以下ジルバ)』の池脇千鶴がすごいと話題だ。「あんなんなっちゃった!」と。私も、池脇さんが顔から体型から服装から髪型から近所の食堂の奥さんそっくりになってたのですごく驚いた。
しかし池脇千鶴が「すごい」ことになっているのは『ジルバ』の主役、「さえない独身四十女の新(あらた)」を演じるためだ。
『ジルバ』はマンガの原作があって、これがなかなか不思議なマンガなのだ。素朴で稚拙にすら見える今風ではない絵柄。さえない四十女の新が、ふと見つけた高齢熟女バーでバイトをすることになって、何かがちょっとずつ変わって行く&その高齢熟女バーに集まる人びとの人生が描かれる、……と書くとなんか陳腐なほのぼのマンガみたい。実際、悪人は出てこないし、みんなアケスケで苦労人で親切で、どんどん新は魅力的ないい人になっていくし、「こんなうまい世界があるかよ」と文句つけようとすればいくらでもつけられる。とくに私は「いい人たちがつむぐいい話」には拒否反応が強いので。
なのに『ジルバ』は、読んでるうちにそういういちゃもんつける気持ちがユルユルと失せるのだ。なんか「本物のファンタジーとはこういうもの」って気にさせられるんですよ。バーの「くじらママ」なんて、シロナガスクジラが厚化粧でドレス着たようなバアさんで、それが「天使ってほんとはこういう姿をしてるんだ」と思えてしまうというか。よくできたマンガです。
「あの池脇千鶴が!」と言われるほどの変貌
その「くじらママ」がテレビでは草笛光子87歳。草笛光子は驚異の美婆なのでマンガとはぜんぜんちがう。でも「くじらママだ!」と納得してしまう。熟女ホステスに久本雅美がいて「これはウルサイなー、役より先に久本雅美だろう」と思ったら、見ているうちにちゃんと「天使の気のいい手下」になってるし。「マンガ原作実写ドラマ」って、難しいんですよ。なんでもかんでもマンガに似せりゃいいってもんではない。「ぜんぜん違うのにマンガを読んだ時と同じ感動をもたらす」のがドラマ化の真の成功なのである。
で、そんな中の池脇千鶴だ。「あの池脇千鶴が!」と言われるほどの変貌で臨んでいる。でもマンガの新とそっくり似せてるわけではない。じゃあ素晴らしいかというと、ちょっと立ち止まっちゃう部分がある……登場人物の中で池脇千鶴だけやけにリアルで。「新じゃなくて、変貌した池脇千鶴」がグイグイ迫ってくるんだ……。バーで派手なドレスとメイクになった時はそんなに違和感ない、どころかマンガのファンタジー性をばっちり表現してるんだから池脇千鶴が下手なわけじゃない。しかし、変貌池脇は目がくぎづけで飽きないし、良いドラマですので皆さんもご覧ください。
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