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2020年11月26日
スクウェア・エニックス(スクエニ)の人気ゲーム「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」をノベライズした小説の主人公の名前をめぐり、争いが起きている。
ゲームを元にした映画で同じ名前を勝手に使われたとして、小説家が映画を製作した会社などに損害賠償を求めた。名前は誰のものなのか。
「ドラクエV」は1992年にスーパーファミコン用ソフトとして発売された。親子三代にわたる壮大なシナリオやモンスターを仲間にできるシステムが好評を博した。
作家の久美沙織さん=長野県軽井沢町=はゲームを元に小説を書き、スクエニから93年に出版した。ゲームでは主人公の名はプレーヤーが決めるが、久美さんは「リュカ」と名付け、「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」という称号も付けた。「グランバニア」はゲーム内で主人公の故郷とされている地名だが、それ以外は自ら考えたという。
一方、スクエニや東宝などはドラクエVを元にした映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」を製作し、昨年8月に公開した。映画の主人公の名は「リュカ」で、久美さん考案の称号と似た「リュカ・エル・ケル・グランバニア」という呼称も出てくるという。
だが久美さんによると、事前にこのことは知らされず、映画の出演者がテレビ番組で映画について語るのを聞いた際、「リュカ」の名を使っていることを初めて知った。スクエニ側に説明や協議を求めたが、同社側は「リュカは非常に短く、ありふれた名称で、創作性は否定される。著作物として保護されるものではない」と協議に応じなかったという。
久美さんは今月24日、スクエニや東宝などを相手取り、200万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴訟を長野地裁佐久支部に起こした。訴訟費用はクラウドファンディングで集めた。
久美さんは朝日新聞の取材に「繊細で優しいけれども勇敢な大人に成長していく主人公にふさわしい名前を考えた。響きや字面なども意識した。『リュカは小説を元にした』と認め、広く世に伝えてほしい」と話す。スクエニの広報担当は「訴状が届いておらず確認できないためコメントは差し控えます」としている。東宝の担当者も「訴状が届いておらず連絡などもないため、コメントは控えさせていただきます」としている。