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トッド・フィリップス監督が手掛けた映画『ジョーカー』。DCコミック「バットマン」の悪役ジョーカーを主役に描き、昨年9月のベネチア国際映画祭で金獅子賞を授賞した。ジョーカー役のホアキン・フェニックスの演技も絶賛され、アカデミー賞、英国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞を始め多くの賞で主演男優賞を授賞している。
一方でこの映画には批判的な意見も。中でも大きなものは殺人を犯す主人公に共感を示している、暴力的な傾向のあるメンタルヘルスの病を持つ人の見方を強調しているというもの。映画監督のデヴィッド・フィンチャーも同じ意見のよう。新聞「テレグラフ」のインタビューで痛烈に批判した。「誰もあの映画を撮っているとき『ダーク・ナイト』もできなかったほどのヒットを記録するとは思わなかっただろう」とコメントしつつ「私はあの映画を見る人はいないと思っていた。あれは『さあ、トラヴィス・ビックルとルパート・パプキンを足して作ったキャラクターを精神的な病という罠に陥れて、10億ドルを稼ごう』と考えて作ったような映画だと思う」。
トラヴィス・ビックルは映画『タクシードライバー』の、ルパート・パプキンは映画『キング・オブ・コメディ』の主役。トッド・フィリップス監督が『ジョーカー』を作るときにインスピレーションを得たキャラクターで、どちらもロバート・デ・ニーロが演じている。ビックルはベトナム戦争のPTSDで不眠症に苦しむ暴力的な人物。パプキンは誇大妄想癖のある人物として描かれている。『ジョーカー』はメンタルヘルスに苦しむ2人を混ぜ合わせ、エンタメのために利用したとフィンチャー監督は示唆している。
ちなみにこれまで、ホアキン・フェニックスはジョーカーの暴力性を美化しているという批判について聞かれると「人は歌詞や本に書かれた文章を誤解する。だから倫理や善悪の区別を教えるのが映画監督の責任だとは思わない」と答えている。今回のフィンチャー監督の批判にフィリップス監督やホアキンは反応していない。改めて『ジョーカー』を巡る議論が起きるのか、見守りたい。
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