19/12/11 15:40:00 +XW8javO9.net
手を出すキッカケの1つは「プレッシャー」。また、創作のインスピレーションを得るために薬物の力を借りるアーティストもいる。
興奮、快感など、刺激を常に求める性質は、精神医学の分野では「センセーション・シーキング」と呼ぶが、
創作に携わる人の多くが、その性質を多くもっている/文・岩波 明(昭和大学医学部精神医学講座主任教授)
2019年は、著名人が薬物で逮捕される事件が相次いだ年でもありました。
11月16日、女優の沢尻エリカさん(33)が合成麻薬「MDMA」を所持していたとして麻薬取締法違反容疑で逮捕されたことは記憶に新しいですが、
3月にはミュージシャンで俳優のピエール瀧氏(52)、5月に元KAT-TUNの田口淳之介氏(34)、そして11月には沢尻氏のほか、
元タレントの田代まさし氏(63)、元オリンピック選手でプロスノーボーダーの國母和宏氏(31)が違法薬物関連の容疑で逮捕されています。
過去には元アイドルの酒井法子氏(48)、元プロ野球選手の清原和博氏(52)などの大物も薬物で大きな話題になりました。
彼らは、なぜ薬物に手を出してしまったのでしょうか。薬物依存の蔓延を防ぐには、どのような手立てが有効なのでしょうか。
沢尻さんが所持していたMDMAは、海外では相当流通していますが、日本ではまだ使用者が少ないと思われます。
臨床現場で問題になるほどではありません。これも覚醒剤の類似薬物で、危険ドラッグと同様、心停止を起こす恐れがあります。
9年、悪ぶったキャラで知られた俳優が、若い女性と一緒にMDMAを使用し、女性のほうが心停止で亡くなるという事件がありました。
このように、20代、30代の若く健康な人でもMDMAの乱用で突然死に至った例がいくつも知られています。
芸能人や音楽家に薬物乱用者が多い傾向があることはたしかです。彼らが薬物に手を出すきっかけの1つとして考えられるのは、プレッシャーです。
舞台などを前に「これを飲んで緊張を取り除き最後の馬力を出そう」と、薬物に頼ってしまうのでしょう。
ただし、そういう場合に本当に効くのは、違法薬物ではなく抗不安薬です。
創作のインスピレーションを得るために薬物の力を借りるアーティストも多くいます。
有名な例では、ビートルズです。彼らが使用したのはLSDでした。LSDを使用すると幻覚がもたらされ、視覚や聴覚が鮮やかになると言われています。
名曲『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンズ』は、頭文字をとればLSDとなり、まさにLSD体験を歌った曲とされています。
インスピレーション、興奮、快感など、刺激を常に求める性質は、精神医学の分野では「センセーション・シーキング」と呼ばれます。
芸能人や音楽家など、創作に携わる人々は、この性質を一般の人よりも強く持っていると考えられます。
センセーション・シーキングと関連の強い精神疾患が、発達障害の一種であるADHD(注意欠如多動性障害)です。
主な症状は「不注意」「多動・衝動性」で、小児期に「手足をもじもじさせ、キョロキョロする」「授業中、席から離れる」
「じっとしていられない」などの多動症状で気づかれることがしばしばみられます。
しかし、多動より不注意が優勢なタイプのADHDもあり、障害が気づかれないまま大人になる人も多いです。
人口のおよそ3、4%はADHDだと推測されています。
そんなADHDの傾向がある人には、向いている職業があります。デザイナー、ミュージシャン、作家などの個人プレーに近い職業です。
彼らは次から次へと新しい思考が湧いてくる一方で、一晩集中して一気に作品を仕上げるといった作業を得意とします。
会社員の場合でも、事務仕事よりも、外回りであちこち動き回る方が性に合うようです。
いわゆる芸能人も、ADHDに向いた職業でしょう。変化と刺激が多く、集中力も求められるので、ステージでパフォーマンスをしたり、
ドラマで演技したりするときに爆発的な力を発揮できます。 じつはADHDの患者は、覚醒剤など薬物への依存の比率が高いことが知られています。
アメリカのある調査では、ADHD患者の約15%が薬物・アルコール依存を併存していると報告されています。
沢尻さんがADHDかどうかは、彼女の日常生活や子供時代のエピソードを詳しく調べなければ判断できません。
しかし彼女の近年の発言や行動の衝動性をみると、ADHDと似た特性が感じられます。
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