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今月１５日、ニューヨーク（ＮＹ）にある米大リーグ（ＭＬＢ）、ヤンキースの本拠地ヤンキースタジアムで、米プロサッカーリーグ（ＭＬＳ）に今季から新規参入したＮＹシティーが開幕試合を行った。
映像や写真をご覧になった方も多いだろう。試合は、ＮＹシティーがスペイン代表ＦＷで活躍したビリャの得点などでニューイングランドに２－０で快勝。
ＭＬＳの公式サイトによると４万３５０７人の観客を集めたそうで、チームの歴史的な勝利に大きな盛り上がりを見せたという。
ＮＹシティーはヤンキースや英プレミアリーグの強豪、マンチェスター・シティー（マンＣ）のオーナーであるアラブ首長国連邦（ＵＡＥ）・アブダビの投資会社が共同保有するチーム。
米メディアは出資額をマンＣ側が１億ドル（約１２０億円）、ヤンキースが２５００万ドル（約３０億円）と伝えている。１０月までのホーム戦はヤンキースタジアムで行われる予定だ。
実は、ヤンキースとマンＣはＭＬＢとサッカー界でともにＮｏ．１の年俸実績を誇る。ＥＳＰＮなどによると選手の平均年収はヤンキースが８０３万ドル（約９億６千万円）、
マンＣが８１０万ドル（約９億７千万円）。両者がタッグを組んだＮＹシティーは世界屈指の資金力を誇る球団といえる。
サッカーに関して「不毛の地」という冠がついてまわる米国だが、一方で中産階級には「サッカーマム」という言葉もある。
教育に熱心な家庭の子供たち（米国では女子が多い）が最初にするスポーツがサッカーで、競技人口は昨年のＦＩＦＡ（国際サッカー連盟）の統計で２４５０万人と米国内スポーツで最も多い。
不毛とはつまり、プロスポーツ興行としてはＮＦＬ（米プロフットボール）やＭＬＢ、ＮＢＡ（米プロバスケット）などに及ばないという意味だ。
確かに米経済誌フォーブスの２０１４年調べではリーグ全体の売り上げは５億ドル（６００億円）弱で、ＮＦＬの２０分の１、ＭＬＢの１８分の１ほどに過ぎない。
ただ、近年は確実に人気は上がっている。２０１４年Ｗ杯ブラジル大会では、米国－ポルトガル戦（６月２２日）の全米テレビ視聴者数が同国サッカー番組史上最多となる２４７０万人を記録し、
ＮＢＡ決勝の過去最高（２３９０万人）、１３年ＭＬＢのワールドシリーズの平均を上回った。
さらにこの数字、「ＵＳＡ！」コールには関係ない３週間後の決勝戦、ドイツ－アルゼンチン戦（２６５０万人）であっさり塗り替えられているのだ。
このため米サッカー関係者は強気で、開幕試合直前の１３日にはＣＮＢＣの番組にＮＹシティーの会長が出演。
「アメリカのサッカーは今、一番急激に人気のでているスポーツ」と自賛、テレビの視聴率も倍増した、と豪語している。
投資とは規模ではなく成長にベットする。ＵＡＥ・アブダビの投資会社を所有しているＵＡＥの王族が、成長に限界がある既存の市場（ヨーロッパ）だけでなく、
新たな市場開拓を狙ってサッカー人気が高まりつつある米国に進出するのは当然だ。
一方、受け手側のヤンキースも、ＮＦＬでマーケティングを担当していたマーク・ホルツマン氏をイベント関連のエグゼクティブプロデューサーに招いて以来、
野球以外の興業にも注力。このホルツマン氏が３年前から注目していたのがサッカーで、昨夏、実験的にヤンキースタジアムで初めて主催した２試合も大成功。
これで自信をつけたホルツマン氏がＵＡＥ投資会社の誘いでＮＹでのサッカー新球団設立に傾いたのも自然の流れだった。
全米の野球ファンサイトには「サッカーに金をつぎ込むならもっと補強をしろ！」という非難の声も寄せられている。だが、球団は揺るがない。
ＮＦＬは２０１３年に１００億ドル（１兆２千億円）超えを果たしてから収益で横ばい状態が続く。ＭＬＢは１年遅れて９０億ドル（約１兆８００億円）を達成したが、
ＮＦＬ出身のホルツマン氏は、人気ではＮＦＬに遠く及ばないＭＬＢが今後さらに大きく成長する可能性を見いだせないのかもしれない。
リーグのエクスパンション（拡張路線）と、ＩＴ革命・エネルギー革命で好調な本国経済に乗って、
この２０年で７倍強の成長を遂げたＭＬＢだが、起点となる１９９５年は日本プロ野球の収益規模（約１４００億円）より低かった。
米国プロサッカーの収益は現在、その半分弱。今後どの程度の成長曲線を描くのか、その正否は間違いなくＮＹシティーが握る。
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