16/02/08 15:51:14.85 CAP_USER*.net
県内の中学軟式野球部が危機的状況を迎えている。日本中学校体育連盟によると、
加盟部員数は2001年度の3095人から15年度は1860人まで減少。各種全国大会で計5度優勝し、
「軟式王国」とも評された佐賀県だが、関係者は「ここまでになるのは記憶にない。非常事態だ」と頭を抱える。
一体、どこに問題があるのか。【生野貴紀】
1、2年生の新チームが競う昨秋の「全日本少年春季軟式野球大会県予選会」(県軟式野球連盟主催)。
出場したのは、野球部がある82校のうちわずか59チームだった。学校行事による欠場もあったが、
部員が規定の10人に満たず、合同チームで出場するなどしたためだ。同連盟の調査によると、24校が10人に
満たなかった。1年生部員“0”も5校。この中には全国優勝の経験のある学校も含まれていた。
減少は全国的な傾向だ。日本中体連によると、加盟する軟式野球部員数は01年度の約32万人から
15年度は約20万人に減少。13年度にはサッカーに抜かれ2位に転落した。背景には、少子化や、
価値観の多様化で他のスポーツを選ぶ子供が増えた“野球離れ”が指摘されている。
クラブチーム増加、他競技への流出も
■原因(1)
既に、都市部ではボーイズやリトルなどの硬式のクラブチームが勢力を拡大。各リーグは軟式が基本の部活動も
含めて「二重登録」を禁じているため、部員数減に響いている。県内でも近年はチーム設立が相次いでおり、
「中学から硬式でやりたい」と入団する選手が増えているとみられる。
「人数が減ると弱くなる。新入部員はより良い環境を求めてクラブチームを選択する。すると、また人数が減る。
悪循環が起きているのでは」。こう指摘するのは全国優勝経験もある強豪校の監督(36)だ。この学校では3年生11人、
2年生14人に対し、1年生は3人にとどまった。「人数が少ないと、けがをさせられないから練習も抑え気味になる。
結果、弱体化につながる」と頭を抱える。
個人競技の部活に流れているという意見もある。原因の一つに挙がるのは「親の負担」。チームによっては、
試合で選手の送迎や審判を求め、親がグラウンド整備をする学校もある。野球関係者は「以前から親の協力は
不可欠だったが、近年は顧問が減り負担が増した。『理解できない』と思う親も増えた。野球は個人競技と違って
出場人数も限られている。親がやらせないケースもあるかもしれない」と話す。日本中体連の加盟部員数(男子)を
見ると、ソフトテニスは10年度比で9826人増、陸上も1317人増えている。個人競技への流出はデータでも裏付けられている。
指導者不足も
■原因(2)
中学野球関係者によると、中学野球部82校のうち、野球経験者が顧問を務めるのは3割程度。
ただでさえ忙しい教師にとって部活動の顧問は負担。近年は体罰も社会問題化し、敬遠されがちだ。
対策として、県中体連は野球部指導者の講習会を年に1度開いているが、参加率は低い。
「一生懸命指導して送り出しても、中学野球の現状を見ていると歯がゆくなる。中学が一番伸びる時期なのに……。
自信を持って、中学で野球をやれとは言えない」と話すのは県内の小学校の野球クラブでコーチを務める男性(39)。
「本当は小学校と同じメンバーで野球をしてほしいが、暗くなったら終了と言って、すぐ練習が終わると聞いた。
中学の先生も練習したいけれどできない現状があるのでは」と指摘する。
男性は今春、小学校を卒業する息子を硬式のクラブチームに進ませた。「正直、硬式の方がお金がかかるし、
送迎も負担。けれど、子供に思い切り野球をさせたいと思ったらクラブチームしかない。試合に勝たないと、
高校のスカウトの目も留まらない」と胸中を打ち明ける。