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重ねた忖度が生んだ「不自由社会」 芸術が消され、次は
あいちトリエンナーレの企画展「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれた。過去に文化施設などで展示できなくなった作品を見せる企画から、新たな「不自由」が生まれてしまった。
誰が、美術館から作品が消える社会をつくったのか。次に消えるのは、何か。
慰安婦を表現した少女像の傍らで頭をなでる人。ベビーカーを寄せて一緒に撮影する人。企画展の実行委員会の一員である永田浩三・武蔵大教授は、中止までの3日間にそんな風景を目にした。
「像が結果的に政治性を帯びていることは事実だけれど、向きあったり隣に座ったりすることで、政治的な道具として語られる手前のところで、感情を喚起される。芸術ってそういうものだと思う」
恐れから自らの首しめた
永田さんらが、美術館や公民館から発表を断られるなどした作品を集めて「表現の不自由展」を都内ギャラリーで開いたのは2015年。当時も抗議の電話は来たが中止を考える規模ではなかった。
しかし続編となる今回は、脅迫や抗議が殺到した。SNSで急速に情報が広まり、何人もの政治家が「市民の血税でこれをやるのはいかん」(河村たかし・名古屋市長)など大っぴらな批判をする。
日本政治思想史が専門の中島岳志・東京工業大教授は、今回の抗議は、プロの政治団体ではなく、ネット上で知らない人たちが結びついて方法を共有し、「拡散アメーバ状」に仕掛けたものだとみる。
「それぞれの人の動機付けは複雑だが、時代の閉塞(へいそく)感、不遇感、不安定、そういう問題が絡んでいるのは事実だと思う」
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