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「隣人はヴァイオリン奏者」マンション代金返還請求
「騒音トラブルに巻き込まれたくない」。度々、「音」に悩まされてきた夫婦が販売業者の説明を信じて終の棲家として新築マンションを購入したところ、入居後に隣人がバイオリン奏者だと分かったとして、販売業者に対して代金の返還などを求めて裁判を起こしました。
【過去に「音」に悩まされ…】
「これまで転勤のため数年ごとに転居してきましたが、近隣との『音』に関するトラブルには心底悩まされてきました」。
東京地裁で開かれた25日の第1回の裁判で、札幌市に住む会社員の男性(50代)はグレーのスーツに身を包み、緊張した面持ちで振り絞るような声で裁判官に訴えました。
傍聴席には不安げに見守る妻の姿がありました。
訴状などによりますと、転勤族だった男性は妻とともに全国各地で引っ越しを繰り返してきました。そして、転勤先の住居では度々「音」の問題に悩まされたといいます。
上の階や隣の部屋から聞こえる生活音、繁華街の雑音。一方、転々とするうちに安心して生活できる部屋の条件も分かってきました。
男性は妻とともに札幌市を永住の地と決め、マンションの最上階で、かつ隣も静かであれば「音」に悩まされることはないだろうと考え、そうした分譲物件があれば購入することにしました。
【「隣人はどんな人なのか知りたい」】
2019年8月下旬ごろ、男性は札幌市内にある新築マンションの販売業者(本社・東京)の担当者から情報を得て、最上階の角部屋1502号室の購入を検討しはじめます。
男性は担当者に、これまで「音」の問題で悩んできたことを伝え、隣室はどんな人が購入したのか知りたいと質問しました。
男性によりますと、担当者は「個人情報なので答えられない」としながらも「女性1人でお住まいで、とても良い方で、普通のお勤めをされている方」と回答したといいます。
男性が「そのような方であれば音の心配をしなくてよさそうですね」と確認したところ、担当者は「そう考えて頂いて結構です」と答えたということです。
男性は安心して購入を決め、売買契約を締結して代金全額を支払いました。
【隣人はプロのバイオリン奏者】
去年3月、男性は妻とともに1502号室に入居しました。そして翌月、隣の1503号室に入居した女性があいさつに来たところで、女性が交響楽団に所属するバイオリン奏者であり、自宅で練習や生徒のレッスンをする予定だと初めて知ったといいます。
男性はANNの取材に対して「後から分かったのですが、販売の担当者は同じ人物だったのです。
隣人がバイオリン奏者だと知らないはずはなく、もし私がその事実を知れば1502号室を購入しないのではと考え、情報を伏せたのではないでしょうか」「担当者は私に正確な情報を提供しないだけでなく、『音』の心配は必要ないと誤信させたのです」と悔しさをにじませました。
男性は去年7月、不動産売買取引で販売業者が正確な情報を提供して適切に説明すべき業務上の注意義務に反したとして、売買契約を解除して代金の返還などを求める裁判を起こしました。
【「実害が生じていない」】
一方、今月25日の裁判では販売業者側が男性側の請求を退けるよう求めました。そして「『1503号室の購入者がバイオリン奏者』であっても『購入後バイオリンの練習をする予定』であったとしても、説明義務違反などとして問題となるのは実際にバイオリンの音が発せられて男性が実害を被っているか否かである」と主張しました。
【「知っていたら購入しなかった」】
裁判が終わった後、男性の代理人弁護士は販売業者側の主張に対して「バイオリンの音が実際に発せられているかどうかは問題ではありません。そもそも担当者から説明されていれば、男性は売買契約を締結しなかったのです。
隣人の個人情報を伝えられないというのは理解できるが、男性と妻は過去に『音』に悩まされてきたのだから、無用なトラブルを避けるためにも隣人に確認したうえでバイオリン奏者だという情報は伝えるべきだった」と話しました。
男性と妻は現在も1502号室に住んでいますが、隣室からいつバイオリンの音が聞こえてくるのかと、不安で落ち着かない日々を過ごしているといいます。
男性は言葉に力を込めます。「これは誰にでも起こり得ることです。庶民にとってマンションは人生をかけた買い物なのに、販売業者はこんなに無責任な売り方をしていいのでしょうか」。
裁判では11月に販売担当者と男性が法廷でいきさつについて説明する予定です。
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