24/12/02 00:13:31.23 LEVxW6lG0.net
「例の男が・・・今行きすぎた西洋の夫婦を一寸見て、・・・『どうも西洋人は美しいですね』と言った。
三四郎は別段の答も出ないので只はあと受けて笑っていた。すると髭の男は、
『お互いは憐れだなあ』と云い出した。
『こんな顔をしてこんなに弱っていては、いくら日露戦争に勝って、一等国になってもだめですね。
尤も建物を見ても庭園を見ても、いずれも顔相応の所だが、ーあなたは東京が始めてなら、
まだ富士山を見たことがないでしょう。今に見えるからご覧なさい。あれが日本一の名物だ。
あれより他に自慢するものは何もない。ところがその富士山は天然自然に昔からあったもの
なんだから仕方がない。我々が拵えたものじゃない』と云って又にやにや笑っている。
三四郎は日露戦争以後こんな人間に出会うとは思いもよらなかった。」