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子どもたちが書店を知らず成長「強く懸念」…経産省が書店振興へ現状の課題まとめる
経済産業省が設置した大臣直属の「書店振興プロジェクトチーム」がまとめた書店活性化のための課題の概要が3日、判明した。本の流通の仕組み、図書館による購入方法、ネット書店との競合などを挙げた。
書店を「文化の発信拠点」と位置づけ、「書店減少の趨勢(すうせい)を変えていかなければならない」とした。今後、関係省庁連絡会議を設置し、書店支援の取り組みを強化する。
今回の概要は、スマートフォンやSNSの普及で紙の活字に触れる機会が減り、雑誌や漫画の購入で定期的に書店を訪れる人が減ったと指摘した。
出版物の流通についても、定期的に発行される雑誌と一緒に、書籍は全国に安く配送されてきたが、その雑誌の売り上げが落ち込んだとした。
さらに、ポイント還元や送料無料などで実質的に値引きされるネット書店との競合やクレジットカードなどのキャッシュレス決済の書店の手数料負担の問題に言及。
公共図書館との関係については、過度なベストセラー購入の問題や、地域の書店が大規模事業者に押され、公共図書館へ本を納入しにくい状況があることなどを挙げた。
一般財団法人・出版文化産業振興財団の調査によると、地域に書店が一つもない「無書店自治体」は全体の4分の1にのぼる。子どもたちが出版物を直接手にとって購入できない状況に「書店を知らず、新たな本に遭遇することなく、多様な思考に触れることなく、成長していくことを強く懸念する」としている。同省は4日からパブリックコメント(意見公募)を始める。
書店の減少は国家の競争力を左右
経済産業省の「書店振興プロジェクトチーム」がまとめた課題は、書店の減少は単に店が減るだけの問題ではないと強調したことが特徴だ。
書店を文化の発信拠点とし、本の流通が滞れば、「文化を毀損(きそん)するだけでなく、国家の存立基盤や競争力を左右する懸念」があると大きく捉えた。
一方で、その書店が抱える問題は細かく多岐にわたる。魅力的な店作り、出版流通の改善、図書館との協力、新しい出店者の育成。今回の課題には、キャッシュレス決済の手数料の負担軽減や「絵本専門士」といった有資格者を通じて読書のハードルを下げるなど、具体的な案も示されている。
書店への関心が高まった今こそ、具体的な支援策を打ち出していくときだ。
出版科学研究所によると、今年上半期の出版物の推定販売金額(紙と電子含む)は前年同期比1・5%減の7902億円に落ち込んだ。紙に限ると同5・0%減の5205億円。文化庁の2023年度の調査でも、1か月に本を1冊も「読まない」とした人が6割を超えた。
プロジェクトチームの設置から半年が過ぎた。現在も日々、書店は減り続けている。街の書店で気軽に本を手に取る文化を維持するために残された時間は、それほど多く残っていない。