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産経新聞2022/6/1 08:00
平岡 康彦
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新型コロナウイルス禍で娯楽関連業界の多くがダメージを受ける中、競輪や競馬といった「公営ギャンブル」が活況だ。競輪場や競馬場に赴かなくても車券や馬券が買える「インターネット投票」の普及が理由。京都府が管理する京都向日町競輪場(向日市)では売り上げが急増し、かつて「廃止もやむなし」としていた府も存続を含めて再検討することに。コロナ禍の3密回避などでパチンコが下火となる一方、感染症対策の担保を前提にギャンブラーたちの熱は冷めることはないようだ。
赤字から復活
京都向日町競輪場は昭和25年に府が開設。平成2年度をピークに売り上げ、入場者数とも減少に転じ、10年度の収支は赤字となった。23年には有識者で構成する府の検討委員会が廃止もやむを得ないと提言。山田啓二知事(当時)は「赤字を税金で穴埋めする状況も予想され、事業存続は非常に難しい」としていた。
ところが、23年度に約7千万円の黒字を計上して以降、業績が改善。単年度収支の黒字額は29年度には2億4千万円にのぼった。コロナ禍が深刻となってからも、単年度収支の黒字額は令和2年度の3億1千万円から、3年度見込みは9億5千万円へと急成長。府の予算への繰り出しが十分可能な「優良児」に。今春、府の包括外部監査人が存続を含めた再検討を求める監査結果を公表した。
京都向日町競輪場を強力に推進したのはネットで車券を購入し、テレビかネット中継で観戦するネット投票の普及だ。同競輪場は電話投票に次いで民間サイトでのネット投票を平成23年度に導入。令和2年度の車券売上高124億円のうち、競輪場での売り上げは2・1%に当たる2億6千万円に過ぎない。平成22年度で10万人台だった入場者数も、令和3年度推計は2万4千~2万5千人にとどまり、もはや競輪場に足を運ぶ時代ではなくなったことを示している。
パチンコからくら替え
こうした中で指摘されるのが、パチンコの衰退とパチンコファンの公営ギャンブルへのくら替えだ。府の監査人は、店内にいなければできないパチンコはコロナ禍では敬遠されるとし、「ギャンブルに魅力を感じる客層の一定数が、競輪へ移行した可能性は否定できない」と指摘する。
パチンコ人口の減少をめぐっては、規制強化などさまざまな要因が指摘されているものの、パチンコの衰退と公営ギャンブルの成長は、経済産業省が公表しているサービス業や娯楽などの「第3次産業活動指数」でも明らかだ。特に令和元年度と、コロナ禍に見舞われた2年度の比較では、公営ギャンブルの指数が118・6から136に上昇したのに対し、パチンコは79・1から55・1へと急降下した。
積極PR、依存症対策も
さらに公営ギャンブルではネット投票だけでなく、PRに向けた取り組みが功を奏している。競輪では近年、夜から深夜にかけて無観客で競技を行う「ミッドナイト競輪」が盛んで、京都向日町競輪場でも3年度にスタート。動画配信サイトのユーチューブ、衛星放送の専用チャンネルで競技を放送し、仕事などから帰った後に楽しむことができる。
こうした工夫に加え、元Jリーガーや元バレーボールインターハイ選手といった多彩な経歴の選手たちを積極的にアピール。
競艇では成長する選手のドラマ仕立てのCM「アイアムアボートレーサー」を配信し、若者へのアプローチを図るほか、競輪、競馬、競艇とも女性選手が活躍しており、話題を呼んでいる。
経産省担当者は「PRがスマートで、ギャンブルの悪いイメージを持つ人が少なくなっているのではないか」と分析している。
一方、気になるのがギャンブル依存症対策。京都向日町競輪場では平成30年度から、本人や家族の申告で電話やネットでの投票の利用を停止する措置を講じ、場内に依存症相談窓口を設置して必要があれば専門医や公的な相談機関を紹介している。府は同競輪場の予想外の成長を喜びつつ、「のめりこまず、適度に楽しみましょう」と利用客に呼びかけている。(平岡康彦)