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週刊女性2020年11月10日号
2020/10/30
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最近、宇垣美里(29)を見かけなくなった。昨春、TBSを退社したフリーアナだが、現在、テレビでの活動は『あの子は漫画を読まない。』(BS日テレ)くらいしかない。
■見かけなくなった宇垣美里
しかし、去年の今ごろは太川陽介・蛭子能収コンビの『バス旅』にマドンナとして登場したり、P&G『レノアビーズメンズセレクション』のCMが始まったり、ハロウィンイベントでのコスプレが絶賛されたりと、メディアに出まくっていた。
また、TBS時代には伊野尾慧(Hey! Say! JUMP)との熱愛をスクープされたり『サンデージャポン』に起用されたり。そこからの独立ということで“第二の田中みな実”という見方も出ていたほどだ。
もちろん、本人がそれを目指したわけでもないかもしれないが、なり損ねたというイメージはぬぐえない。では宇垣は田中とどこが違うのか。
実は、転機となった“事件”がある。昨年7月『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)に出演したときのことだ。
局アナ時代に伊野尾との一件からレギュラー番組を降板させられた際、担当プロデューサーに対してコーヒーをぶちまけたという報道について「あなたからもらったコーヒーは飲めません」と言って、目の前で捨てたと説明。さらに、内々でのやりとりが「外に出ていることのほうがおかしい」と指摘したうえで、
「出ている時点で『民度が知れるわ』みたいな感じがしたんですけど」
と、古巣を叩いたのである。この暴露はけっこう面白がられたものの、業界内では扱いづらい印象にもつながった。例えば、田中ならこういうトークはしないだろう。
宇垣には、芸能人に不可欠な“媚び”の能力が欠けているのだ。
もっとも、その点は彼女も自覚していて、女性誌のエッセイでこんなことを書いている。
「プライドを捨て愛玩動物として生きればどれほど楽だったか、と思うこともあるだろう。でも、私は知っている。自分の稼いだお金で食べる寿司は何よりも美味しい。私はプライドが捨てられない、そんな無様で不器用で愚かな自分が好きなのだから、これからも進んで苦労をしよう」
このエッセイはネットニュースにもなり、コメントは賛否両論だった。「安っぽい自己満足」とする声もあれば「哲学的」と評価する声も。
筆者は彼女の文才を買っているが、女子アナという肩書なしで通用するかは未知数である。
ちなみに彼女、2年前にも「アナウンサーをやるには、自我が強すぎる」という自己分析をしていた。そこから連想されるのは、田中とは別の元TBSの先輩たちだ。いまやすっかりフェミニストとなった小島慶子だったり、最近テレビで気色ばんだネット批判をしていた小林麻耶だったり。いわば、ちょっとこじらせ系のカテゴリーに彼女も分類されるだろう。
一方、田中のように、プライドと媚びのバランスを保ちつつ、そこそこ楽しそうに活動している人もいる。こちらは一見「愛玩動物」のようでも、いつの間にか飼い主である大衆を飼い慣らしてしまったかのような状況だ。
もちろんそれは、なかなかまねできる芸当ではない。ただ、最低限、芸能人が媚びて可愛がられてナンボという存在であることは知っていたほうがいいだろう。それが芸能人をやるうえでの民度であり、民度がない芸能人は消えていくほかない。
PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。