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6/29(月) 10:11斉藤博昭 | 映画ジャーナリスト
今この時期、「人種」に絡む問題に、どれだけ人々が敏感になっているか。その状況を端的に示すのが、アメリカでのアニメの「声」に関する問題だ。
人種差別への湧き上がる反発に伴って、アメリカのアニメ作品では、「非白人」のキャラクターの声を「白人」の俳優が担当するという状況を完全に変える。そんな動きが加速している。
Apple TV+の「セントラル・パーク」では、混合人種の役を演じていたクリステン・ベルが降板することをプロデューサーが発表し、「ファミリー・ガイ」の製作と声の出演を担当したマイク・ヘンリーや、あの「シンプソンズ」のプロデューサーたちも、今後は白人が演じている非白人キャラクターの声優(ボイスキャスト)をすべて入れ替えると声明を出した。
これまで実写映画では、たとえば「攻殻機動隊」のハリウッド実写化で、草薙素子にあたるヒロインを、白人のスカーレット・ヨハンソンが演じたときに批判が起こり、「ホワイトウォッシング」なる言葉が広まったし、人種ではなくセクシュアリティという点でも、トランスジェンダーの役は、実生活でもトランスジェンダーの俳優に演じさせるべきだという論議も起こったりしてきた(この時もスカーレットが槍玉に上がり、役を下りた)。
ただ、これが「声の演技」に、それも隅々にまで広がるとは、今回の人種差別問題の根深さを実感する。つまり徹底的にこの問題に向き合い、批判のない、ある意味で健全なあり方を目指しているようでもある。歴史を振り返って何度も巻き起こった人種問題を、今度こそ本気で根本から解決しようとする、ショービジネス界の「意地」を感じられる。
たしかにメジャーな映画作品、たとえばディズニーの長編アニメなどは特に近年、役の人種に合わせたボイスキャストが選ばれている。これがTVなどのアニメシリーズにも波及してきたということだ。
では今後、たとえば海外のアニメをアメリカで英語吹替版を作る際には、どうするのか。『君の名は。』や『天気の子』のアメリカ公開版では、当然のごとく、白人を中心としたキャストが英語の声を担当している。明らかに日本を舞台にした日本人の物語の場合、これからは日系アメリカ人のキャストに声を任せる方向へいくのか。他の海外アニメ作品も含め、そんな想像力もはたらいてしまう。 よりキャラクターに近いボイスキャストということなら、人種だけでなく性別や年齢も問題になる、というのは考えすぎ? 日本のアニメでは、性別や年齢の枠を超えて歴史に残るキャラクターが次々誕生してきた。それも声優の実力でもあると思うのだが……。
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