19/12/31 13:06:51 wsW38+oW9.net
『攻殻機動隊』シリーズのバトー役や、『機動戦士ガンダム0083』のアナベル・ガトー役など、多くの代表作を持つベテラン声優の大塚明夫氏が語る「声優論」。第1回では、「多くの声優が仕事にあぶれてしまう理由」について解説します。
「声優ブーム」と言われるようになって大分たちました。今がいったい第何次ブームなのかよく知りませんが、声優に憧れる人は相変わらず大変多いようです。現場ですれ違う新人の数も、この10年ほどで把握しきれないほどに増えました。少し前までは、「今の“新人枠”に入るのはあいつやこいつ……」となんとなく顔くらいは浮かんだものなのですが。
声優志望者や若手声優と話していて不思議なのは、「声優になる」ことを、まるで就職でもするかのような感覚で捉えている人が多いことです。
■声優志望者の甘すぎる未来予想図
話を聞くと、彼らは極めて無邪気に、こんな青地図を思い浮かべているのですね。
まず声優学校に入り、養成所に進んで、いい声の出し方や演技の仕方を教えてもらおう。そして大手の声優プロダクションに所属し、マネージャーがとってくる端役の仕事をこなしながら“出世”のチャンスをうかがおう。
最初のうちは安い仕事しかないだろうから、アルバイトと半々くらいで声優の仕事をしよう。そのうち大きな役がもらえるようにもなるだろうし、そうすれば後はだんだん軌道にのって、いつかは食えるようにもなるはずだ。
私などからすると、さていったいどこから突っ込んだらいいものやら……と煙草の1本でも吸いたくなってしまう内容なのですが、これを“ベーシック”なルートだと思っている若者は後を絶ちません。
「声優になりたい」。そう思うことは自由です。しかし、「声優になる」ことを「職業の選択」のようには思わないほうがいい。この道を選ぶということは、「医者になる」「パティシエになる」「バンダイの社員になる」なんて道とは根本的に違います。少なくとも、私はそう考えています。
よく考えてみてください。この世界には、「声優」という身分を保証するものは何もありません。資格やら免許があるわけでもない。人様に言えるのはせいぜい、「□□という声優プロダクションに所属しています」「××という作品の○○というキャラクターの声を担当しました」くらい。それだって、誰にでも通じる自己紹介にはなりえません。社会的に見れば極めて頼りない、むしろ存在しないに等しい肩書きなのです。
そもそも、人は何をもって「声優になった」と言えるのでしょう。声優プロダクションに所属できたら? 「いらっしゃいませ」の一言の台詞でも、作品の中で発することができたら立派に「声優」なのでしょうか。
このくらいは皆さんもご承知だと思いますが、「声優になった」からといって、声の仕事が自動的に、毎月のお給料のように舞い込んでくるわけではありません。
1件1件の仕事を、いわゆる「人気声優」たちとも対等に取り合っていかねばならない。その競争は、皆さんが想像する以上に激しいものです。コンテンツの制作サイドからすれば、欲しいのは「ギャラが予算内に収まり、かつ良い芝居ができる人間」であることがほとんどですから、テレビや舞台の俳優を声優として使うことだって自由です。
「声優という肩書きの人間のほうがいい芝居ができる」なんて思い込んでいるのは一部のオタクだけです。
■肩書だけでは仕事は得られない
つまり、声優という肩書自体に、「声の仕事を得る」ための効力はないのです。「声の仕事をしている役者のことを声優と呼んでいる」だけなのですから当然です。
この順番を取り違えている新人声優がよく、「声優になったのに仕事がない、おかしい……」と悩んだりするのですが、そこで「なんで僕に仕事がこないんだろう」と真剣に考えられる人ならばまだマシなほう。「就職」気分が抜けない人にはそれが難しいらしく、「仕事がこないのはおかしい」という考えから抜け出せないまま、大小さまざまな失望を抱いてこの業界を去っていくことになります。
(以下略、続きはソースでご確認下さい)
12/30(月) 15:30配信 東洋経済オンライン
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