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大橋巨泉
オーストラリアに来て2週間が経ったが、一番不思議なのが、WBC(ワールド・
ベースボール・クラシック)に関する記事が、ただの一行も見られないことだ。勿論
この国では、ラグビーとクリケットが二大スポーツだが、野球だって無い訳じゃない。
メジャー・リーガーだって何人も居るし、シドニーでもアテネ五輪でも日本が苦杯を
なめた程の力はあるのだ。にもかかわらず、新聞、テレビ、ラジオ、インターネット
等々、メディアにはWBCのWの字すら出て来ない。
そういえば、ボクのパソコンに入っている、USATODAYやNYタイムズなど
アメリカやカナダのメディアにも一向に登場して来ないのだ。原辰徳監督に決まる
までのスッタモンダに見る如く、大騒ぎしてるのは、わが日本国だけのようである。
アメリカではまだ監督も決まってないし、現役監督の起用など考えられまい。
ところが日本では、NHKをはじめ、いろいろな番組で、アナウンサーが「野球の
世界一を決めるWBC」などと世迷い言を述べている。WBCに勝てば世界一
なのか、誰もそう思っていない。ワールド・シリーズを制したフィラデルフィア・
フィリーズが(今年の)世界一のチームだと考える人が、ほとんどである。
(28年前の'80年にフィリーズが世界一になったシリーズをボクは見ている!)。
たしかに、王ジャパンが第1回を制したことは、それなりの意義がある。
特にイチロー、福留をはじめとする大リーガー達にとっては、ひとつの「勲章」
だろう。しかし肝心の日本のプロ野球のレベルは?と考えると、心は暗くなる。
ラミレス(MVPだそうだ)、カブレラ、ローズら、毎年ホームランや打点の
タイトルを取る外国人は、みなメジャーのレギュラーにはなれない選手なのだ。
これはメジャーで現役の5番バッターだった、ウォーレン・クロマティーが
巨人でも5番を打っていた時代から見ても、後退こそすれ前進はしていない。
そもそもWBCは、世界一など決めるものではなく、アメリカのプロ野球機構
のプロモーション(宣伝)であり、将来への投資として始めたイベントなのである。
理由はハッキリしている。グローバル化の進みつつある世界で、野球は余りにも
ローカル・スポーツだからである。極言すれば、北米、中米と北東アジアでしか
通用しないスポーツだ。もうひとつのアメフトに至っては、北米だけと言っても
過言ではない。今や政治や経済の面でも、唯一のスーパーパワーの地位が
危うくなっているアメリカの、世界戦略の変化なのだ。
解り易い例をあげる。アメリカのメガ・スポーツ企業であるナイキの'80年代の
顔は、マイケル・ジョーダンであった。バスケットボールは世界中で行われている
スポーツで、エア・ジョーダンというシューズは世界的ベストセラーとなった。