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丹羽のり子2016年6月3日15時19分
「夢のよう」と受賞を喜ぶ井上宮さん
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じわじわと日常を侵食する異物への恐怖と黒い笑い。愛知県岩倉市の主婦、井上宮(きゅう)さん(55)が書いた短編ホラー「ぞぞのむこ」が第10回小説宝石新人賞を受賞した。
家事・育児の合間に小説を書き続け約30年、「作家のスタート地点に立てた。これからが大変」と新たなステップへ意欲を燃やしている。
「とにかく話をつくるのが好きで、ノートに物語を書き付けていた」という小学生時代。愛知教育大の美術科に進んだころは少女漫画をかいて出版社に持ち込んでいたと言う。結婚・出産後、名古屋で発行されていたミニコミ誌「暮らすメイト」と出会い、投稿や編集、仲間たちとの議論を通して「書く原点」を見つけた。
「一石を投じて広がる波紋のように、作品を通じて仲間と話が盛り上がる。書くことは人をつなげ、世界を広げると実感した」
「世間に問う姿勢でいたい」と文学賞へ30回以上応募したが、落選続き。学び直そうと朝日カルチャーセンターの小説講座を受講し始めて10年目での快挙になった。「仲間に読ませる文章から一般読者を意識して書くようになりました」。受賞の報には「妄想が過ぎて、とうとう白昼夢を見るようになったのかと思った」と笑う。